台湾で、馬英九総統が大陸と新たな経済協定の実現を強引に進めようとしたことがきっかけで本格化した反政権運動が、さらに緊迫した局面を迎えつつある。李登輝元総統(91歳)は28日、関連する問題をテーマとする講演会に出演した際に、「学生らがかわいそうすぎる」と涙を流しつつ、学生らや民衆の声を聞かない現政権を批判した。日本でも30日午後に台湾人のよる抗議デモが予定されるなど、運動は海外在住の台湾人の間でも広がりつつある。

■目立つ李登輝元総統と馬英九総統の「落差」

 李登輝元総統は、総統代行だった1990年、改革を求めて多くの学生が抗議運動を行った際、運動が本格化しはじめたかなり早い時期に学生代表を総統府に招き対話を行い、民主化への具体的取り組みを盛り込んだ「共同認識」を発表した。

 「認識」には、学生側が李元総統の約束を無条件に信じていたわけではないことを示す部分もあったが、李元総統はその後、各方面における民主化を断行した。李総統は大きな危険をおかしてまでも、強硬な保守派も存在する国民党を大きく動かし、民主化を断行した。台湾は中華系社会として初めて、本格的な民主制度を獲得することになった。

 李元総統は28日、「政府のトップは学生がなぜ、このような行動を起こしたか理解せねばならない。自らの措置にどんな過ちがあったか、反省せねばならない。反省しないようでは、政府とは言えない。庶民の声を聞いてこそ、正しい政府だ。国事会議を招集して(大陸との)サービス貿易協定の問題を討論することが好ましい」などと述べた。

■李元総統、国民に向き合おうとしない馬政権を厳しく批判

 李元総統は、馬政権がサービス貿易協定について、国民に十分な情報を与えず、不明瞭な説明を繰り返しつつ実現を強行しようとしていることを厳しく批判した。

 協定反対派の主張は「協定により台湾が中国経済に飲み込まれる。経済だけでなく、台湾社会そのものが危機的状況になる恐れがある」に要約できる。反対派の中には、「協定は全く認められない」という強硬派から、「危険を防止するため、監視・監督のためのメカニズムを設けるべきだ」などと、同協定を台湾にとって、より有利にすべきだとの具体的主張を示す人もいる。馬政権が、大陸側との合意内容をすべてそのまま通そうとしたことで、問題が大きくなった。

 協定賛成派は、監視・監督のためのメカニズムについて「すでに盛り込んでいる」と主張。李元総統は「どこにある? どの条文だ? 説明して示してみよ。そのようなたわごとを言ってはならない」と、賛成派を厳しく批判した。

■李元総統が、台湾の「第2次民主改革」を主張

 李元総統は、自らが手がけた台湾におけるこれまでの民主化を「第1次民主改革」と表現し、「第1次民主改革はすでに限界に達した。台湾にとって第2次民主改革が、喫緊の課題」と主張。「第2次民主改革」の方向として、過度に集中している中央への権力の分散、台湾各地がすべて発展するメカニズムの構築、資源の公平な分配、各地の民衆が同レベルの基本的福祉を受けられるようにすることなどを挙げ、「権力を民衆に返還せねばならない。政策が本当の意味で民衆の願いにより決定されるようにせねばならない」と強く語った。

 李元総統は、馬政権がサービス貿易協定の内容を人々に知らせないままで実現しようとしたことで、大きな問題になったと指摘。「(政権側が協定に自信があるなら)民衆に参加させ、話を聞き、協定について正しく理解するよう啓発に努め、民衆を協定について監督する立場に置くべきで、こんな圧政をすべきでない」と述べた。

 自らが説く「第2次民主改革」については、「もし不明な部分があれば、李登輝基金に問い合わせていただきたい。詳細に説明します」と述べた。