良い医者かダメな医者か、受診前に判断することは可能なのか。医師の武井智昭さんは「医者ガチャで失敗しないためには、クリニックのホームページに掲載されている医者の経歴をチェックするといい」という――。

※本稿は、武井智昭『寿命格差という罠』(日東書院本社)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/78image
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/78image

■医師国家試験でも問われた医者ガチャ問題

これから受診しようとする病院が、良い病院なのか、悪い病院なのか、どんな医者が診てくれるのかも分からない。医者選びが運任せになってしまう現状を、私は「医者ガチャ」と呼んでいます。

同じ患者さんという立場でありながら、受けられる医療に格差が生じてしまう状況自体を是正していく必要がありますが、病気は待ってはくれません。

まずは、患者のあなたや、あなたのご家族が「ハズレ」の医者を回避することが最優先です。納得のいく医療が受けられるよう、まずは、医療の現状をしっかり把握しておくことが重要になるのです。

「医者ガチャ」問題は、医療界でも深刻に受け止められています。

医者を目指す人が受験する「医師国家試験」でも出題されるほどになっているのです。

■「専門用語が多くて説明がわからなかった」

2025年に実施された試験問題の中に、ある疾患で入院した50代の男性の、自分が入院した際の気持ちや医者に対する感想が紹介され、事例から読み取れる医療の質の問題を問うていました。

2025年の医師国家試験に出題された問題

以下は,50歳の男性が,ある疾患で入院し,退院後に語った内容である.
「先日,ある病気になって入院したんです.2週間くらいだるさが続いたので,かかりつけの診療所を受診したら総合病院に紹介してくれました.総合病院を受診したら,すぐに入院するよう言われて.ちょっと風邪が長引いているのかな,くらいの軽い気持ちで受診したので,気が動転してしまって,何がなんだかわからないまま入院になりました.入院後は,血液や尿の検査,CTなどの検査を受けて,診断がついて,点滴で治療を受けて良くなりました.適切な診断と治療をしてくださった医師や入院生活を支えてくださった医療スタッフの皆さんには感謝しています.
ただ,少し不満もあって,総合病院を受診したときに,医師の話がよく理解できなくて,状況がのみ込めずに不安でした.入院という言葉で気が動転してしまった上に,医師が専門用語をたくさん使うので,頭が混乱してしまいました.医師には患者の心理状態や理解力にも気を配って欲しいと思いました.
あと,入院したことで仕事への心配もありました.総合病院では,まず病気を治すことが最優先だと言われ,仕事に関する相談にもあまり応じてもらえませんでした.適切に治療してくださって,今は元気になったので,贅沢な悩みかもしれませんが……」

この事例で,問題があった医療の質の要素はどれか.
a 安全性
b 公平性
c 適時性
d 有効性
e 患者中心性
出典:厚生労働省『第119回医師国家試験問題及び正答について』(B問題34番)

■同業者でも診てもらいたくない医者がいる

患者さんの接遇について国家試験にも出るようになったのだなと少し驚きましたが、こうした医療サービスが重視されるのは喜ばしいことだと思っています。ただ一方で、患者さんへの対応も「言われなければ分からない」医者が多いということも実感させられました。

写真=iStock.com/visualspace
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/visualspace

私自身、25年医者として働いてきた中で、残念ながら「この医者には診てもらいたくない」と思う同業者に何度も遭遇してきました。医師免許を持っている以上、どの医者も同じレベルだと思われがちですが、現実は大きく異なります。

医者の技術や人格には、想像以上の格差があるのです。

この格差を見抜けずに「ハズレ」の医者にかかってしまうと、適切な治療を受けられないどころか、病気が悪化したり、不要な苦痛を味わったりする可能性があります。

■危険度の高い“でもしか”開業医

まずは開業医についてです。医者になるには、まず医大に受からなければなりません。そして医大に進学してからも、「医師国家試験」に合格し、研修医として経験を積まなければ、医者として働くことはできません。医者を目指す動機は様々ですが、いずれにしても、かなりの努力をしなければ医師免許は手に入れられません。

最初は強いモチベーションで医者になったはずなのですが、開業医はどこかのタイミングで二つのタイプに分かれていきます。

一つは「でもしか開業」、もう一つは「理念開業」です。

「でもしか開業」医とは、勤務医として病院で働く自信がない、病院での人間関係がうまくいかない、もしくは、病院で勤務するよりクリニックを開業するほうがお金が儲かるしラク、といった理由で開業する医者のことです。

「大学の勤務医は大変そうだし、自分でクリニック“でも”やるか」
「当直やオンコールは疲れる。日中の定時で“しか”働きたくない」
「自分は◯◯科“しか”診たくない」

こういった消極的な発想で開業に踏み切る医者たちです。

こうした医者の特徴は、医学的知識や技術が不十分であることが多く、患者への責任感も薄い傾向があります。また、経営のことばかり考えて、必要のない薬を出したり、不要な検査を勧めたりするケースが見られます。

■チェックすべきは「開業までの経歴」

もう一つのタイプは、「理念開業」医で、しっかりとした信念のもとで開業する医者のことです。

地域医療への貢献や、患者により良い医療を提供したいという強い思いを持っています。こうした医者は、十分な臨床経験とキャリアを積み、専門的な知識と技術を身につけている人が多く、同時にスタッフの接遇、社会保険、経営などもきちんとしています。

受診するとしたら、どちらの医者が良いか、答えは一つでしょう。

しかし、病院やクリニックの看板には、「でもしか医院」とか「理念クリニック」などとは書かれていません。パッと見ただけでは判断はつきにくいものです。

そこで、「でもしか」か「理念」かを見分けるポイントを一つお伝えします。

ひと言で言うと、「開業までの経歴」を確認するのです。大学病院や基幹病院で10年以上の経験を積んでいるかをチェックしてみてください。そして、各学会の専門医の資格を取得してから開業している医者のほうが、信頼できる可能性が高いと思います。

■10年未満で開業している医者は要注意

学会専門医資格を取得するには、通常、医者になってから6年程度かかります。

しかし6年ではまだ「よちよち歩き」の状態です。例えば、外科では6年目ではまだ一人で手術などはできません。

武井智昭『寿命格差という罠』(日東書院本社)

一人前の医者になるには、その後にしっかり臨床経験を積み、最低でも10年はかかります。この10年間で、様々な症例を経験し、診断能力や治療技術、そして患者対応のスキルや他のスタッフと協調して患者さんを診ていくこと、患者さんの生活に思いを馳(は)せるなどの、医学以外の生活面への配慮などが身につくのです。

逆に、10年未満の経験で開業している医者には注意が必要です。十分な臨床経験がないまま開業している可能性があり、複雑な症例や急変時の対応、患者さんの接遇やクリニックのマネジメントにも不安が残ります。

医者もキャリアが重要であり、そのキャリアの延長線として今のクリニックの院長という立場がふさわしいのかどうかを見極める必要があります。研修医時代から形成外科一辺倒だった医者が、いきなりプライマリケア(総合診療)のクリニックを開業するというのは、無理があります。同じ医者でも、カバーする範囲が違いすぎるのです。

病院やクリニックのホームページを見ると、たいていは医者のプロフィールが紹介されています。事前にチェックして、医者を見分ける目安にしてください。

■不安を感じたら投げかけるべき質問

経歴が分からずに受診した場合も、次のような医者には気をつけてください。

【「でもしか」開業した医者の判断ポイント】
・自由診療を積極的に勧めてくる
・たくさんの検査や薬を使おうとする
・患者さんの経済状況を気にせずに治療を提案する
・質問しても答えられない
・会話もそこそこに、早く診療を終えたがる

もし、医者と会話ができるなら、「先生は、なぜクリニックを開業されたのですか?」「最近、GLP−1という糖尿病の治療法が発表されたそうですね」などと話を振ってみるのも一つの方法です。

開業理由は、信念を持って開業したかどうかを見分けるのに効果的ですし、最新の治療法を知っているかどうかで医療への姿勢が判断できます。

質問にあやふやな回答しかできない医者は、多忙を理由に学会や研修会に参加することもなく、医学論文や専門書を読んで知識を更新することもないでしょう。

----------
武井 智昭(たけい・ともあき)
高座渋谷つばさクリニック院長
2002年、慶應義塾大学医学部卒業。さまざまな病院・クリニックで小児科医・内科医としての経験を積み、現職。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とする。『チコちゃんに叱られる!』(NHK)、『めざましテレビ』(フジテレビ)、『林修の今知りたいでしょ!』『ガリベンチャーV』(共にテレビ朝日)ほか、メディア出演多数。
----------

(高座渋谷つばさクリニック院長 武井 智昭)