旭化成に日本郵船…原油価格急落の恩恵で、業績大回復に期待がかかる日本株5選【専門家が指南】
原油安メリット関連株を見直すべき局面が訪れつつある。原油安メリット関連株とは、原油価格の下落によって原材料費や燃料コストが低下し、業績が上向きやすい企業(株式)を指す。代表的なところでは、原油を基礎原料とする化学メーカーや、燃料を大量に消費する運送・エネルギー産業が該当する。
2月末の中東情勢の緊迫化以降、株式市場の選好は明確に二分した。燃料費や原料費への影響が懸念される業種は敬遠され、業績への直撃が相対的に小さいAI・半導体関連株に投資マネーが集中した。その結果、航空・化学・電力・海運などのセクターは日経平均株価が上昇した4月以降も、開戦前の2月末比で1割から2割ほど安い水準に放置された。まさに「AI・半導体関連か、それ以外か」、「値嵩(高株価)株か、それ以外か」である。
ただ、こうした局面も転換期を迎えようとしている。米国とイランの停戦協議の進展を受けて原油価格は急落し、WTI(米国産原油の先物価格の指標)は1バレル80ドルを割り込んできた。原油価格の落ち着きは、コスト構造において燃料・石油由来原料の比率が高いセクターの業績期待を押し上げる。これまでAI・半導体一色だった投資家の関心は、足元で業績対比の出遅れ感が強まっていた“それ以外の株”、とりわけ原油安メリット株へ移り変わる土壌が整いつつある。
中東リスクの懸念後退に伴い、今後は保守的な会社計画の上振れや株主還元の強化が期待される段階も迎えている。正式な戦闘終結までには未だ紆余曲折が想定されるが、原油価格は開戦前の水準である60ドル台に向けて徐々に軟化していく展開も期待される。出遅れ感が強い銘柄への再評価の余地は大きいとみられ、アンテナの感度を高めておきたいところだ。
旭化成〈3407〉
6月20日終値1792円 配当利回り(予)2.45%
「ヘルスケア」「住宅」「マテリアル」の3事業を束ねる総合化学・素材大手。石油由来の原料(ナフサ=石油を精製する際に生じる液体で、化学品の原料になる)を大量に使うことから、原油安は直接的なコスト削減につながる。
2026年3月期の通期決算では経常利益が前期比19.1%増の2304億円と過去最高を更新した。半導体絶縁材料などAI・電子機器向けの素材が業績を牽引している。これに原油安によるナフサコストの低下が加われば、2027年3月期の会社予想経常利益2475億円(前期比7.4%増)に対する上振れの条件が整おう。年間配当も42円から44円へと増配方針が示されている。
今後の業績安定度はさらに高まる期待がある。ポートフォリオ(事業構成)戦略の核心として、国内石油化学事業の再編と基礎化学品の縮小を通じた業績変動度の抑制に舵を切ったからだ。市況に左右されやすい汎用石化品の比率を下げる構造改革を並行して進めるとともに、安定した住宅事業のキャッシュフロー(現金収支)をヘルスケアやエレクトロニクスなど競争優位なニッチ(隙間)領域へ集中投下し、先行者利潤を長期的に獲得するモデルを構築中だ。
日本郵船〈9101〉
6月20日終値5152円 配当利回り(予)3.88%
コンテナ船、自動車船、ばら積み船、エネルギー輸送と多面的な海運事業を持つ日本最大の総合海運会社。巨大な船舶を動かすためには1日数十トンの燃料を大量消費する。コストの安いC重油とはいえ、燃料費は収益構造を大きく左右することは言うまでもない。会社側の通期決算説明資料によれば、2027年3月期の前提燃料単価を1トンあたり741ドルと設定しており、原油安が進めばこのコスト前提に上方修正の余地が生まれる。
地政学的リスクの緩和によりホルムズ海峡の通航が正常化へと向かった場合、原油安による運航コストの抑制だけが利益押し上げ要因となるわけではない。エネルギー関連の運賃市況そのものは高止まりする可能性が高く、コスト減少と単価維持の双方が機能する期待は大きい。2027年3月期の業績会社予想(経常利益1850億円)を上振れさせる条件が整おう。
2028年3月期からスタートする次期中期経営計画では、コンテナ船以外の非定期船事業での利益成長や株主資本利益率(ROE)の向上に一段と注力する方針を示している。コスト負担軽減と堅調な運賃市況に支えられた収益確度の向上が確認できれば、株価純資産倍率(PBR)1倍程度を意識した評価の見直しが進みやすいと考える。
花王〈4452〉
・6月20日終値6201円 配当利回り(予)2.52%
シャンプーや洗剤など家庭向け日用品に加え、工業用界面活性剤(物質の表面の性質を変える化学品)やOA向け材料を手がけるケミカル事業を持つ複合消費財企業。原料の相当部分が石油由来の化学物質で構成されており、原油安は製造コストの低下に直結する。
足元の2026年12月期第1四半期では売上高が前年同期比6.0%増の4132億円、営業利益が同45.3%増と大幅増益を達成した。ただしケミカル事業では原料価格上昇への価格転嫁のタイムラグが一時的に影響した。これが解消に向かい原料コストそのものが低下する局面に突入すれば、2026年12月期通期の営業利益1820億円(前期比11.3%増)の会社予想が保守的に映る展開が期待できる。
長らく低迷した中国の化粧品事業や米州のヘルス&ビューティ事業でも構造改革の成果が現れ始めており、ブランド力を背景とした値上げが原材料高をはね返す収益基盤を形成しつつある。積極的な値上げと原油安によるマージン(利ざや)改善が同時に進めば業績の上振れが視野に入る。中期経営計画「K27」では年間2000億円超の営業キャッシュフロー創出を掲げており、継続的な自己株式取得(自社株買い)への期待とあわせ、株価の水準修正が進みやすい局面となろう。
九州電力〈9508〉
・6月20日終値1637円 配当利回り(予)3.05%
火力発電の燃料費が収益を左右する電力会社にとって、原油・LNG(液化天然ガス)価格の動向は業績に直接影響する。原子力発電構成比が高く、原油価格上昇によるマイナス影響が相対的に小さい同社にとっても、原油安の直接的なコスト削減メリットは大きい。
2026年3月期は燃料費の減少が寄与し、売上高は前期比4.7%減ながら経常利益は同6.4%増の2070億円と増益を確保した。九州電力エリアの電力需要は拡大局面を迎えている。半導体工場やデータセンターの立ち上げがやや後ろ倒しになったとはいえ、中長期的には構造的な拡大基調が継くだろう。
2027年3月期は燃料費調整の期ずれ影響(燃料費が変動した際に電力料金に反映されるまでのタイムラグの損益効果)が差損に転じる見込みで、会社側による経常利益見通しは1800億円と減益を予想している。ただしこれは足元の市況を前提とした保守的な算定だ。原油安が本格化してLNG価格も低下すれば、燃料費調整の期ずれが差益方向に転じる可能性がある。年間配当50円の維持方針が示されており、燃料費低下が想定以上に進んだ場合には増配余地が生じよう。
エフピコ〈7947〉
・6月20日終値2600円 配当利回り(予)2.81%
スーパーマーケットやコンビニエンスストアで目にする食品トレー容器で国内最大手の包装材メーカー。石油由来のプラスチック樹脂が主要原料であり、原油価格の動向が業績のカギを握る。他社の追随を許さない製品開発力と全国を網羅する自社物流網を強みとしており、食品流通インフラ(基盤)としての確固たる地位を確立している。
2026年3月期は価格改定の浸透と下期の販売数量回復が功を奏し、売上高2405億円・経常利益218億円と全指標で過去最高を更新した。16期連続の増収という実績は安定した競争力の証(あかし)だ。2027年3月期の業績予想は原料価格高騰と供給不安を理由に「未定」とされた。原油市況に対する会社側の神経質な姿勢が窺えるものの、一方で「原油が60ドル台から80ドル台で安定すれば業績予想を開示できる」としており、むしろここが投資妙味となるだろう。株価再評価のトリガーになる可能性がある。
独自のリサイクル原料活用と新素材「FORTENA(OPPを積層した高機能プレート製品)」の商業化など、原料高への耐性を高める体質強化も着実に進んでいる。中東リスクの後退とともに業績予想が開示される局面では市場の関心が一気に高まるシナリオが描けてこよう。
中東リスクの波高き時代を経て、市場の関心は再び企業のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)へと回帰している。原油高によるコストインフレに耐え抜いた日本の優良企業群にとって、足元の原油価格の落ち着きは収益性を一気に開花させる転換点ともなり得る。地政学リスクの沈静化がホルムズ海峡再開の恩恵をジワリと浸透させていく中、出遅れてきたこれらの銘柄が改めて光を浴びる展開が期待される。
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