「地震対策」で真っ先に防災グッズを用意する人々の誤解…知らないとまずい、生死をわける「順番」
日本は世界有数の地震大国であり、私たちは常に地震という自然の脅威と隣り合わせで生きていかなければならない。私、横山芳春は地盤災害の専門家として全国の地震被害を調査、また地盤リスクを診断してきた立場として、日頃から多くの人々に「真の地震対策とは何か」を問い続けている。
本コラムでは、多くの人が誤解しがちな地震防災の優先順位と、命と生活を守るためのアプローチについて解説したい。
【前編を読む】「耐震性が最高」の家でも一瞬で命を奪われる「過酷な現実」…「能登半島地震」でも起きた「ハザードマップ」では見抜けない「最悪のシナリオ」
「防災グッズ」は優先順位が低い場合も
地震対策と聞くと、世間の多くの人は真っ先に「水や非常食を買う」「防災リュックを用意する」といった行動に走りがちである。しかし、あえて厳しい言い方をしよう。防災グッズを用意するのは、優先順位としては低い場合もある。なぜなら、グッズは「震災から生き延びてからの話」であるからだ。
震災から命を守るためには、理にかなった順番(ステップ)で対策を講じる必要がある。
【STEP 1:立地リスクからの回避】
まず、津波、土砂災害、火災の延焼などで被災し、そもそもその場から避難しなければ命が危ない場所かどうかを把握する。このリスクが高い場合は、必要な際にいかに早く、必要なものを持参して安全な場所へ逃げるかの動線確保と、避難を実行することが最優先となる。
【STEP 2:建物の倒壊を防ぐ】
次に、地震の揺れによって家屋が倒壊する可能性を減らすことだ。新築住宅なら耐震等級を高め、既存住宅なら耐震診断と耐震補強を行う。家が潰れてしまえば、せっかく用意した防災リュックを取り出すことすらできず、そのまま命を落としてしまうことにもなりかねない。
【STEP 3:室内の安全確保】
家が倒壊しなくても、固定していない大型の家具や家電の下敷きになれば命に関わる。あるいは、倒れた家具がドアを塞いで閉じ込められれば、その後の火災や津波から逃げられなくなるおそれもある。普段過ごす場所、寝る場所、避難経路に倒れてこない家具の配置を見直したうえで、確実な固定を行うことが必須だ。
【STEP 4:状況に応じたグッズの備え】
STEP1〜3をクリアして、はじめて防災グッズの出番となる。立地リスクが高く避難所へ行くことになる可能性が高い(上図の赤矢印のルート)ならとくに「持ち出し袋」を手厚くしておきたい。
立地も安全で家も頑丈で自宅に留まれる可能性が高い(上図の青矢印のルート)のであれば「在宅避難用の備蓄(水や食料、簡易トイレなど)」を充実させたい。立地のリスクと建物の強さを知らずして、適切な防災グッズなど選べるはずがないのである。
結論:「安全な場所の強い家」こそが最高の防災グッズである
結論を申し上げよう。地震防災において、「耐震性能の向上」と「立地・地盤のリスク把握」は、決して切り離せない両輪のようなものだ。
耐震性を高めることは、揺れによる直接的な家屋倒壊を防ぎ、我が家に住み続けられる可能性を担保するための基本中の基本だ。しかし、それに加えて立地・地盤のリスクを正しく把握しておかなければ、地盤の液状化や盛土の崩落、津波、延焼火災といった、建物の強度だけでは抗えない脅威によって命と財産を奪われてしまう。
耐震性が低く、家が倒壊してしまえば逃げられない。火災の原因にもなってしまうだろう。さらに道路に倒れれば通行人を巻き添えにしてしまう可能性があるばかりか、道路を塞げば津波や火災からの避難や救助、患者・物資輸送にも影響を及ぼしかねないのだ。
津波や土砂崩れの危険がなく、地盤が安定した「安全な場所(立地)」を選び、そこに大地震の揺れに耐えうる「強い家(耐震性)」を建て、室内の家具固定を徹底する。そうすれば、万が一巨大地震に見舞われたとしても、家は倒壊せず、家族は怪我をせず、過酷な避難所に入ることもなくなるだろう。そのまま自宅が避難所となり、安全に住み続けることができる可能性を高めるのだ。
「安全な場所の強い家は、最高の防災グッズ」
これが、地盤災害の最前線を見続けてきた私の揺るぎない信念である。
これからマイホームを持とうと検討されている方、あるいは現在の住まいの安全性を再確認したい方は、「建物の耐震性」を高めることはもちろん、「立地と地盤の防災」というもう一つの車輪について深く考えていただきたい。それが、我が家でいつまでも幸せで健康に暮らし続けるための、最大の防衛策となるのである。
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