「数学の考え方」は、複数の思考法の組み合わせがポイントだった!解法へのアプローチに気づくための方法を教えます

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わからない理由がわからない……近年の数学力の顕著な低下、さらに算数・数学嫌いという人も多くいます。これは、いったいなぜでしょうか。

「やり方」の暗記に偏った教育の影響で、試行錯誤を通じた理解が欠如したり、公式の暗記に頼る傾向が強まった結果、「問題を解決しようとする能力」が低下しているのではないか、そう指摘するのが、45年以上にわたって数学教育に携わってきた数学者の芳沢光雄さんです。

「数学は“13個の考え方”で理解できる!」として、13個の「発見的問題解決法」を、パズル問題・あみだくじ・じゃんけんなどの豊富な実例から、その思考プロセスを解説。さらに、算数から中学・高校・大学への数学へと段階的に発展させていきながら、さまざまな学問分野への応用までを解説した『数学の考え方 発見的問題解決法ーーひらめきを生む思考へ』が注目されています。

「わからない理由がわからない」に答える、この画期的なこの本から、数学の考え方という本質的な問いについて紹介します。

「思考する」数学への発展

拙著『新体系・高校数学の教科書(上下)』あるいは『いかにして解法を思いつくのか「高校数学」(上下)』での章立ては数学としての項目別で、オーソドックスな以下のとおりである。

●数と式 ●方程式・不等式と論理 ●平面図形と関数

●順列・組合せと確率 ●指数・対数と数列

●三角関数と複素数平面 ●ベクトル・行列と図形

●極限と級数 ●微分とその応用

●積分とその応用 ●確率分布と統計

一方、最新刊『数学の考え方 発見的問題解決法―ひらめきを生む思考へ』での章立ては、発見的問題解決法としての項目別で、以下の13通りである。なお、基本的な数学の問題の多くは「定義や基礎に戻る」に含まれる。

★帰納的な発想を用いる

★定義や基礎に戻る

背理法を用いる

★条件を使いこなしているか

図を用いて考える

逆向きに考える

一般化して考える

★特殊化して考える

★類推する ★兆候から見通す

★効果的な記号を使う

★対称性を利用する

★見直しの勧め

本稿では、数学としての項目別と発見的問題解決法としての項目別は根本的に違うことを、上記の拙著を参考にして具体例を交えて述べよう。したがって、数学の問題を考えるとき、発見的問題解決法による視点でもチャレンジすることは、新たな風を吹き込むことになるだろう。

違法金利「トイチ」を「対数」で考えてみると!

例1 90年代後半に、違法な闇金融の「トイチ」がいろいろ話題になったときがある。10日間ごとに1割の利子が複利でかかるもので、たとえば1万円を借りて1円も返さない場合、10日後の元利合計は11000円、20日後は12100円、30日後は13310円となる。

これがとんでもない暴利であることを示すために、次のことを書いた:たった1円をトイチで10年間借りっ放しにすると、10年後の元利合計はなんと1000兆円を超える。それを以下、説明しよう。

なお本稿では、底が10、真数が1.1の対数の表記と近似値は、

log10(1.1)=0.04139 とする(常用対数表参照)。

1年を365日とすると、10年は3650日である。たったの1円をトイチで10年間借りっ放しにすると、10年後の元利合計は、

1×(1.1の365乗)(円)

となる。

log10(1.1の365乗)=365×log10(1.1)=365×0.04139=15.10735

となるので、

1.1の365乗>1000兆

を得る。

さて、上の説明を、数学の「対数の学び」として、また発見的問題解決法の「兆候から見通す」の2通りの意識で読み直してみると、読後感に若干の違いを感じるのではないだろうか。前者では対数公式の復習、後者では変化の大きさに注目するだろう。

空間図形の問題を、空間図形の知識以外で考えてみる

例2 xyz空間上の2つの平面

x−y+z=0  2x−y−z+1=0

が交わってできる直線上のすべての点(x,y,z)が、次の式を満たすようにa、b、cを設定することができるかどうかを考察してみよう。

a(xの2乗)+b(yの2乗)+c(zの2乗)=1 ・・・(*)

普通は次のように考えるだろう。まず、与えられた2つの平面が交わってできる直線の方程式を求める。これは、その直線上にある2つの点

S(s,t,u)、P(p,q,r) (s≠p)、(t≠q)、(u≠r)

をとれば、それは

(x−p)/(s−p)=(y−q)/(t−q)=(z−r)/(u−r)

と表せる。

この段階で、そもそもの疑問は、以下のことではないかと問いかけている読者もいるかも知れない。

2つの条件式

x−y+z=0 2x−y−z+1=0

を満足するどんなx,y,zに対しても、

a(xの2乗)+b(yの2乗)+c(zの2乗)=1 ・・・(*)

が成り立つような定数a、b、cは存在するか。

そのように考え方を少し変えてみると、「どんなx,y,zに対しても」という部分に注目して、「特殊化して考える」は使えないだろうか、という疑問を考えることになるだろう。

2つの条件式に、z=0を代入すると、x=−1、y=−1を得る

また、2つの条件式に、z=1を代入すると、x=1、y=2を得る。

さらに、2つの条件式に、z=2を代入すると、x=3、y=5を得る。

そこで、

(x,y,z)=(−1,−1,0)、(1,2,1)、(3,5,2)

(*)に代入して得られるa、b、cに関する3元連立1次方程式

a+b=1

a+4b+c=1

9a+25b+4c=1

を解いてみると、

a=3、b=−2、c=6

を得る。

最後に、この場合には、2つの条件式

x−y+z=0  2x−y−z+1=0

を満足するどんなx,y,zに対しても、

a(xの2乗)+b(yの2乗)+c(zの2乗)=1

が成り立つことを確かめればよいのである。

例2の疑問については、「特殊化して考える」を意識すれば、空間図形に関する知識は不要なのである。

なぜ図を描くのか?その着想と考え方

例3 xについての不等式

1/x>4−x

を解くことを考えよう。

まず、不等式の問題を解くとき、不等式の両辺に負の数を掛けると、不等号の向きが変わることが注意すべき点である。この問題で分母を払うためにはxを両辺に掛けるので、xが正か負を別々に考えることが必要である。

x>0のとき、与不等式の両辺にxを掛けると、

1>x(4−x)

xの2乗−4x+1 > 0

(x−2+√3)(x−2−√3)>0

x<2−√3 、 x>2+√3

を得る。ここで、x>0の条件があるので、

0<x<2−√3 、 x>2+√3 ・・・(*)

が導かれる。

一方、x<0のときは、与不等式の左辺は負で、右辺は正になるので、与不等式は成り立たない。したがって、本例題の解は(*)である。

さて、上で注意したように不等式の問題が難しくなる要点は、負の数を両辺に掛けるときである。そこで、できれば「図を用いて考える」は使えないだろうか、と考えてみる。次の2つのグラフをxy座標平面上に描いてみよう。

y = 1/x 、 y = 4−x

上図のように、xy座標平面上に2つのグラフを描いてみると、“不等式”の計算でなく“方程式”の計算によって、

a=2−√3 、 b= 2+√3

を得る。

最後に、冒頭の不等式の解は(*)になることを、図を見て確かめながら書けばよいのである。

発見的問題解決法を組み合わせて考えてみよう

例4 

zは、|z|(zの絶対値)=1、zの2乗≠−1

を満たす複素数とするとき、

z/{1+(zの2乗)}

は実数になることを、2つの発見的問題解決法「図を用いて考える」と「逆向きに考える」によって、別々に考えてみる。

複素数平面上に、z(zの2乗)[(zの2乗)+1]が表す3つの点をとると、次図のようになる。

図において、原点O1を表す点[(zの2乗)+1]を表す点(zの2乗)を表す点、それら4つの点で作る図形は、各辺の長さが1のひし形である。そして、(zの2乗)の偏角は、zの偏角の2倍であるから、zを表す点は、O[(zの2乗)+1]を表す点を結ぶ対角線上にあることになる。したがって、結論を得る。

次に、一般に複素数xについて、

xは実数 ⇔ x=[xの共役複素数]

が成り立つ(は同値の意味)。

そして、

が成り立つので、結論は導かれたことになる。

前回と前々回の現代ビジネスの記事も踏まえると、数学ばかりでなく一般に社会問題を含む幅広い問題を考えるときにも、発見的問題解決法による考察は新たな風を吹き込むことになるだろう。

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