ANA・スーパーフライヤーズカード「年間300万」改悪を回避するコスパ最強のラウンジ&クレカ戦略
300万円の壁とマイル難民
ANAは4月、同社の上級会員資格『スーパーフライヤーズカード(SFC)』のルール改定を発表した。
SFCは「1年間、飛行機にひたすら乗って一定の搭乗実績(いわゆる“修行”)を満たした人」が申し込める特別なクレジットカード。最大の魅力は、一度過酷な条件をクリアして入会(カードを発行)すれば、その後の搭乗実績がゼロでも、毎年1万円ほどの年会費を払い続けるだけで、ラウンジ利用や優先搭乗といった「上級会員と同等のサービス」を維持できる点にあった。
毎年の搭乗回数やカード決済額などの“ノルマ”が無いのが魅力だったSFCだが、今回会員に対し《ANAカードまたはANA Payで年間決済額300万円以上》というルールが設けられ、クリアした会員は『PLUS』、未達成に終わった会員は『LITE』と分類されることも発表された。『PLUS』会員はこれまで通りANAラウンジに入室できるが、『LITE』会員はラウンジが利用不可になるなど、明確な格差がつけられたのだ。「永続的に」の文言を使って会員を積極的に勧誘していたこともあって、〈永久資格だと思っていたのに騙された〉と憤るSFC会員の声がネット上にあふれている。
ANAでは近年、「特典航空券」の予約が取りづらい状況が続いている。飛行機の搭乗や日々の買い物などでマイルをこつこつ貯め、特典航空券に交換して実質タダ(無料)で飛行機に乗ることを楽しみにしている人は多いが、特典航空券の予約が取りにくいうえ、マイルには使用期限もある。〈必死に300万円使ってマイルを貯めても、特典航空券が取れない、マイルを消化できないのでは意味がない〉という嘆きも聞こえてくる。
JGCか? ホテル系クレカか?
かつては航空会社のクレジットカードでマイルを貯めるのが、いろいろな意味で「コストパフォーマンスが高い」と考えられてきた。
だが今は『ヒルトン・オナーズ アメリカン・エキスプレス・カード』(年会費1万6500円・税込)や『Marriott Bonvoy アメリカン・エキスプレス・カード』(年会費3万4100円・税込)といったホテルブランドなど、いわゆる「還元率」が高いカードがいくつも存在する。
ラウンジ利用などの特権を維持したいSFC会員で、仕事などでANAをよく利用する人であれば、ANAカードで年間決済額300万円以上を目指し、日々の買い物などを含めて支払いを集中させるのがいいだろう。ただ、定年退職を控えているなどすると「毎年300万円」はやはり重くのしかかる。ホテルカードへの変更も視野に入ってくるだろう。
同じ航空会社のカードでは今回のSFC騒動を受け、JALの『Life Status プログラム』(LSP)が脚光を浴びている。搭乗や買い物などの実績でランクが上がっていくシステムで、ANAのSFCに相当する上級会員向けクレジットカード『JALグローバルクラブ(JGC)』に入会できる仕組みとなっており、毎年の“ノルマ”もない。会社勤め時代にJGCを取得した人が、定年後に引き続きサービスを受けることも可能だ。
ただし、LSPでJGCの入会基準となる「1500ポイント」を獲得するには、国内線に「通算300回」搭乗するか、JALカードで「累計約6000万円」を決済しなければならない。気が遠くなるような時間と資金が必要となるのでこれから新規で目指すのは事実上不可能に近い。
とはいえ、JALカードは保有しているだけでも毎年実績(ポイント)が貯まる仕組みがあるため、かつてJGCを持っていた休眠層や、過去にJAL搭乗実績があり、すでにある程度のポイントを保有している人には、毎年のノルマに追われずに済む有力な乗り換え先となるだろう。
また、これまではSFCとホテル系クレジットカードを“併用”する人が少なからずいた。以前はSFCに“決済ノルマ”がなかったため、航空券の代金は還元率の高いホテル系クレカで決済してホテルの無料宿泊特典などを狙い、空港ではSFCを提示してラウンジを利用するという「両方の特典のオイシイとこ取り」ができていたのだ。
しかし、今回のルール改定で「オイシイとこ取り」はできなくなった。ホテル系カードで決済していた分をSFCに回すかといえばそれも現実的ではない。ホテル系カードにはすでに年間数百万円規模の支払いノルマがあることが多いからだ。
コスパ最強! ラウンジ特化クレカ
先述した通り、SFCの『PLUS』『LITE』という区分の最大の違いが「ラウンジの利用可否」だ。特に海外の空港ほどラウンジは重宝する。ラウンジだけでも利用したければ『プライオリティ・パス』がおすすめだ。世界の空港に1700ヵ所以上あるラウンジで飲食や休憩などに利用でき、シャワーが使えるところもある。
プライオリティ・パスは所有するクレジットカードとは無関係に所持することができる。公式サイトで会員登録すればいいのだが、年10回の利用枠で年会費329ドル(約5万3000円)と高額だ。プライオリティ・パスが特典として無料で付帯されるクレジットカードを所持するほうがお得だろう。
『セゾンプラチナ・アメリカン・エキスプレス・カード』(年会費3万3000円・税込)なら無制限でラウンジが利用できる。『楽天プレミアムカード』(年会費1万1000円・税込)は年間5回まで、ラウンジが無料で利用できる。セゾンプラチナ・アメリカン・エキスプレス・カードは年間決済額での年会費優遇がある。楽天プレミアムカードはいわゆる“楽天経済圏”を利用する人には便利だろう。
ただ、クレカ付帯のプライオリティ・パスもここ数年でルールの「改悪」が続いている。例えば『楽天プレミアムカード』も実は年会費1万1000円でラウンジが無制限に使い放題という破格のコスパを誇っていたが、’25年から「年間5回まで」に制限されているのだ。今後も利用基準の変更などは、こまめにチェックして気を付けたいところだ。
狙い目はスカイチームへの移行!?
海外の航空会社や航空連合系のカードに“鞍替え”するのも手である。例えば、デルタ航空の『デルタ スカイマイル アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード』は年会費2万8600円・税込で初年度は無料、その後は毎年「150万円」以上のカード決済で、デルタ航空が加盟する航空連合『スカイチーム』のラウンジやサービスが利用できる上級会員資格『ゴールドメダリオン』が付与される。
スカイチームには日本の航空会社は加盟していないため、どちらかというと国際線が多い人に向いている。デルタ航空のほかに、大韓航空やエールフランスKLM、チャイナエアライン、中国東方航空なども含まれる。韓国、台湾、中国などへ旅行や出張することが多い人にはいい。
大韓航空は今年12月にアシアナ航空を吸収合併して、JALやANAを超えるアジア圏内で最大級、世界有数のフライトネットワークを持つメガキャリアになる予定だ。日本各地の空港から仁川空港経由で欧米やアジアへ出かける人にはメリットのある選択といえる。
スタアラゴールド死守の裏ワザ
SFC会員に付与されていた『スターアライアンス・ゴールド』の資格も今回、改定された。年間決済額300万円未満だと『スターアライアンス・シルバー』に格下げとなる。
ゴールドとシルバーの違いは大きく、シルバーだと「スターアライアンス」に加盟している航空会社のラウンジが利用できなくなるうえ、搭乗手続きや手荷物受取などの優先もほぼなくなる。カウンターで長蛇の列に並ぶ羽目になり、これまでゴールドでの特典を享受してきた人には厳しい現実が待っている。
どうしてもスターアライアンス・ゴールドが欲しいなら、『SFC PLUS』を維持し続けるか、ANA以外のスターアライアンス加盟社のマイレージ会員になり、そちらでゴールドが付与されるまで実績を積むしかない。ANAより到達までの実績が少なくて済む航空会社もあるが、基本的に「毎年更新」のため、出張族でもない限り、毎年飛行機に乗り続ける時間と労力(修行)が必要になる。
それならばいっそ、必要な時だけビジネスクラスを有償で予約することを選択肢に入れてもいい。ステイタスに関係なく『スターアライアンス・ゴールド』と同様の優先サービスが受けられるからだ。
欧米の長距離線は運賃が非常に高いものの、近場のアジアや外資系航空会社だと比較的割安なことも多い。ステイタス維持のために無駄な決済や出費をするくらいなら、ビジネスクラスで格段に良い座席や機内食を満喫するほうが、トータルでの満足度は高く安上がりになる。しかも、マイルもエコノミークラスより多く貯まる。いわば「選択と集中」である。
修行は終焉? あなたに最適な道は…
ANAにおける特典航空券の予約の取りづらさは、特典予約できる座席が少なくなったこと、また“SFC修行”がブームになったことでマイルを大量保有する会員が増えたことが影響しているだろう。上級会員が増えすぎてラウンジの混雑が常態化し、今回のSFCでのルール改正に至ったという見方もある。
ANAの特典航空券はJALのような完全なダイナミックプライシング(変動制)ではないものの、シーズン(ロー・レギュラー・ハイ)によって必要マイル数が変動する。JALは残席状況などに応じて必要マイル数が増減する。マイル会員としては必要マイル数が固定されているのはありがたいが、予約が取りづらければ意味がない。
今回のルール改正でSFCを解約する人は少なからずいるだろう。会員数が減る分、特典航空券が取りやすくなるのであれば今回のルール改正も一定の理解は得られるだろうが、予約状況があまり変わらないとなると〈300万円も利用したのに〉という不満がさらに募るに違いない。
いずれにせよ、飛行機に乗って“修行”し、毎年1万円ちょっとを払って持っているだけで空港の航空会社ラウンジが使い放題という時代は終焉に向かっている。「マイルのために無駄な買い物をする」という本末転倒な修行から抜け出し、現在のライフスタイルに合わせて自分に本当に価値のあるサービスだけを取捨選択する。それこそが、ルール改悪が続くマイレージ業界を生き抜く、新時代の“賢者の乗り換え術”ではないだろうか。
取材・文・写真:シカマアキ
