元NHKエース・和久田アナ「news LOG」は難敵「Nキャス」を崩せるのか…日テレ・エース演出家の逆襲
日テレ社長が焦らない理由
NHK出身の和久田麻由子アナウンサー(37)をMCに据えた日本テレビの新報道番組「追跡取材 news LOG」(土曜午後10時)が、放送開始から約1か月となった。個人視聴率は3月に終了した前番組「with MUSIC」より上昇したものの、同時間帯で横並び4位。この数字を深掘りし、番組の裏側に迫る。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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【写真8枚】ヌーディーなドレスを身にまとった和久田アナ。豪華披露宴に出席
「news LOG」の先週までの4週(5月3日〜24日)の平均個人視聴率は2.1%。テレビ界は過去4週の平均個人視聴率を「前4週」と呼び、その番組の体力を測る。2年続いた前番組「with MUSIC」の終了前の前4週は1.8%だった。

前4週が「news LOG」と同じ2.1%なのがフジテレビ「タイムレスマン」(金曜午後9時58分)。2%台前半から、それ以下の番組は民放のプライム帯(午後7時〜同11時)に20番組以上ある。珍しくはない。前4週が2%を割ると、危険水域だ。フジのドラマ「LOVED ONE」(水曜午後10時)の前4週は1.7%である。
日テレの福田博之社長(64)が「news LOG」の個人視聴率を問題視せず、一定の評価までしているのは、まだ深刻な状況とまでは言えないから。「with MUSIC」の数字を上回っているためでもあるだろう。
「現場には焦ることなく一歩ずつ進んでいってほしいという話をしています」(福田社長、25日の定例会見)
なお、本稿の視聴率は個人視聴率で統一させていただく。世帯視聴率がテレビ界で使われなくなってから、もう5年も過ぎたためだ。世帯視聴率は1人暮らし(全体の約35%)世帯も大家族世帯も等しく1世帯でカウントしてしまうため、その番組を観ている人の数すら分からない。
他局制作者によると、「news LOG」のコア(40代以下の個人視聴率)の前4週は1%台前半。もっとも、報道・情報番組のコアはテレビ界の関心事にならない。最初から若者があまり観ないことを誰もが知るからだ。メインターゲットから外れている。
「news LOG」と同時間帯で放送されているTBSの情報番組「情報7daysニュースキャスター」(土曜午後10時)の前4週は5.4%と極めて高いが、コアは2%台前半に過ぎない。テレビ朝日の報道番組「有働Times」(日曜午後8時56分)の24日放送も個人視聴率は5.2%と高かったが、コアは1%台中盤だ。
23日放送で個人視聴率3.2%だった「報道特集」(土曜午後5時30分)のコアは1%以下。硬派路線の同番組のコアが高かったら、そのほうが驚きだ。
コアが低くても各局は動じない。もしも各局がコアの低さを嫌がったら、民放から報道・情報番組は消えてしまう。もっとも、コアなど気にせず、報道・情報番組でCMを流すことを望むスポンサー(タイムCMスポンサー)も多いので、心配は無用なのだ。
報道・情報番組のスポンサーの多くはBtoB(法人間取引)企業や住宅や車など高額商品を知ってほしい企業。あるいは高齢者向け商品を発売している企業である。コアを欲しがらない。
「news LOG」のスポンサーには住宅販売のパナソニックホームが入っている。エレベーターとエスカレーターの製造と販売、保守するフジテックも。BtoBである。
報道・情報番組のスポンサーは似る。「ニュースキャスター」のスポンサーはやはり住宅販売の積水ハウスやSHINRYO(新菱冷熱工業)などである。同社は空調設備事業などを行う。BtoBだ。報道・情報番組に限らず、スポンサーを見ると、どんな層をメインターゲットにして番組がつくられているのかが分かる。
「ニュースキャスター」が強いから、「news LOG」は放送する時間帯を間違えたという指摘がある。無理もない。もっとも、これは民放のセオリーなのである。
「ニュースキャスター」の人気によって、土曜の午後10時台に報道・情報番組を観たい人が多いことはハッキリしている。ちょっとセコイ気もするが、その視聴者を奪い取ってしまうというのが民放の古くからの考え方なのだ。
だから日曜の朝は報道・情報番組が同じ時間帯にズラリと並ぶ。平日の午前と午後の特定の時間帯にワイドショーが集中するのも同じ理由である。
久米宏さんがMCのテレ朝「ニュースステーション」(1985〜2004年)の大成功を見たTBSは87年、森本毅郎氏(86)をMCに据え、同じ時間帯に「JNNニュース22プライムタイム」をぶつけた。視聴者を奪おうとした。結果は大惨敗だった。
古くはTBS「8時だョ!全員集合」(1969〜1985年)があった土曜午後8時台でフジが「オレたちひょうきん族」(81年)を始めた。無謀との声が多かったが、84年には視聴率が上回る。お笑いが観たい視聴者を奪い取ったのである。こちらは大成功だった。
Nキャスも警戒
迎え撃つ「ニュースキャスター」は余裕たっぷりかというと、そうでもないようだ。 放送日の土曜午後7時前には番組の大型告知を流し始めた。警戒感が伝わってくる。
日テレ報道の取材力はTBS報道と双璧で民放屈指。そのうえ番組の総監督(総合演出)が侮れる人ではないからだろう。その人とは日テレ元上席執行役員で演出家の五味一男氏(69)である。
五味氏は「マジカル頭脳パワー!!」(1990年)、「投稿!特ホウ王国」(96年)、「エンタの神様」(2003年)など数々の高視聴率番組をつくり、日テレをトップ集団に押し上げた立て役者である。
番組を他局より数分早く始めるフライングスタートを考え出したのもこの人。92年、マンネリで低迷していた「24時間テレビ」にマラソンを採り入れ、視聴率をV字回復させたのも五味氏だ。
福田博之社長にとっては強い日テレを共につくり上げた盟友。既に退社していた五味氏に「news LOG」を託したのは福田氏の意向でもある。最初から長期戦を想定し、勝つまでやることを念頭に置いているという。やはり「ニュースキャスター」は嫌だろう。
無敵状態の「ニュースキャスター」にも不安要素はある。日テレ出身の福留功男(84)がMCだった前身の情報番組「ブロードキャスター」(1991〜2008年)の時代から、中身が大筋で変わっていないのだ。視聴者が「古い」と感じ始めたら、ひとたまりもない。
番組の柱はずっと週間ニュースランキングである。これ自体にも危うさがある。TBSは週末、4つの報道・情報番組が1週間のニュースの振り返りを柱にしている。報道番組「サンデーモーニング」(日曜午前8時)と情報番組「サンデージャポン」(同9時54分)、さらに4月から始まった同「上田晋也のサンデーQ」(同11時35分)である。さすがに多い。食傷する視聴者もいるのではないか。
「ニュースキャスター」は1週間の振り返りが柱である分、独自ニュースが少ない。ここが「news LOG」の付け入る隙である。視聴者が飛びつく骨太の独自ニュースをぶつければいい。
そんなことはプロである「「news LOG」のスタッフだって百も承知だから、芸能やグルメは一切やらず、ニュース1本で勝負している。9日放送では福島県で起きた高校の部活動のバス事故、16日放送では栃木県で発生した高校生たちによる強盗殺人事件、23日放送ではナフサ・ショックの裏側を取り上げた。
だが、まだ弱い。物足りない。日テレ報道は長らく庶民派だった。事件に強く、オウム事件摘発時(1995年)には全マスコミをリードしたくらい。各新聞は日テレのニュースの引用だらけになった。
忘れられつつあるが、坂本堤弁護士一家の3人が惨殺される結果になってしまったTBS情報局によるオウムビデオ問題(1989年発生、95年発覚)をスクープしたのも日テレ報道である。テレビ史上、最大で最悪の不祥事だった。
消えてしまった坂本さん一家を年老いた両親や友人たちが不眠不休で探していたにもかかわらず、TBSのスタッフはオウム真理教幹部に坂本さんのインタビュービデオを見せたことを伏せていた。
日テレ、TBSの確執
このとき、TBSと日テレに確執が生まれた。日テレのスクープ時点でTBSは東京地検にビデオを任意提出していたが、「ビデオを見せた」という日テレの報道は全面否定。抗議表明まで行い、日テレの誤報だと訴えた。しかし日テレは一歩も引かず、繰り返しTBSの不実を報じた。
結局はTBSの調査不足だった。 日テレの報道が正しく、TBSの社長やオウムにビデオを見せたスタッフたちが会社を去る。当時、現場で警察や検察を取材していた両局の記者たちは幹部になっている。TBS情報と日テレ報道のわだかまりはまだはある。
「news LOG」が伸び悩んでいる理由の1つは準備期間の不足に違いない。和久田アナのNHK退職が3月末で、放送開始は4月25日だったことから、パイロット版の制作を繰り返すというセオリーが踏めなかったのだろう。だからコメンテーターが出演したり、しなかったり。番組冒頭部分もまだ固まっていない。
和久田アナとパートナーの森圭介アナ(47)の距離を縮めることも課題だ。報道・情報番組のコンビは番組の合間で軽口を叩き合ったり、アイコンタクトで意思の疎通を図ったりするものだが、2人はよそよそしい。これも準備期間が足りなかったからだろうが、早く同志の関係にならなくてはならない。
ちなみに2018年3月末でNHKを辞めた有働由美子アナ(57)の場合、民放での本格的な仕事は日テレ「news zero」のMC。就任は同年10月。半年、間が空いた。
総監督の五味氏が担当してきたバラエティは放送開始後、回を重ねながら修正する。どの局もバラエティはそう。走りながら考えるというスタイルである。この番組でもそれを踏襲するつもりだろう。
高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。
デイリー新潮編集部
