※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年6月号からの転載です。

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 動物好きで知られる令和ロマン・松井ケムリが、動物たちの生態に自らの生き方を照らし合わせながら人生観を語ったエッセイ集『ナマケモノの朝は、午後からはじまる。』が好評発売中。本書に詰め込んだ思いについて語ってもらった。

――本書の特徴について聞かせてください。

松井ケムリさん(以下、松井ケムリ):動物の生態を紹介するだけなら、専門家の方にはかなわないので、あくまでも自分の目線で“この動物の、こういう部分から、こんなことを感じる”ということを書かせてもらいました。たとえば、動きが極端に遅いことで知られているナマケモノは、天敵から逃げる素早さはないものの、普段からエネルギー消費を極端に抑えているおかげで少食で大丈夫なんですね。ナマケモノ側は狙ってなかったにしても、大事なものを捨ててリスクを取った結果、生存率が上がるってすごいことじゃないですか。いまは“他の人だったら動物の生態を通じて何を感じるのかな”ってことに興味があります。この本をひな型にして誰かが書いた別バージョンを読んでみたいです(笑)。

――どのエッセイからも、ケムリさんの優しさや達観した視点が感じられました。

松井ケムリ:狙ってそういう生き方をしてきたかもしれません(笑)。過酷な競争を勝ち抜いてのし上がる人が多い芸人の世界において、僕はだいぶ異質な存在だと自覚しています。少年時代に聞いた尾崎豊に影響されて、隣人愛や嘘をつかない生き方を意識してきたからかも。同時に僕はだいぶ臆病で、ウケることがわかっているときしか前に出ないタイプです。本の中では、動物の生態を紹介した後に生ヌルいことばかり書いたので、先輩から“ふざけんな”って怒られそうです(笑)。一方で“人生って出された問題をクリアしていくだけじゃダメらしいぞ”と気づいた同世代や後輩世代にとっては、気が楽になる内容が多いかもしれません。

――本書を今後の芸人人生にどう生かしたいと考えていますか。

松井ケムリ:動物番組がやれたらいいですね。普通にアマゾンとかロケに行きたい。それでいて、折にふれて漫才をする人生が理想。まずは5月の単独ライブを頑張ります!

取材・文:澤井 一 写真:川口宗道

まつい・けむり●1993年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学在籍中に相方の高比良くるまとお笑いコンビ「魔人無骨」を結成。コンビではツッコミを担当する。後にコンビで養成所を主席卒業するなど駆け出し時代から注目され、2019年にコンビ名を「令和ロマン」に。23年、24年にM-1グランプリで連覇を果たした。大和証券・副会長の子息であることも有名。



『ナマケモノの朝は、午後からはじまる。』

(松井ケムリ/Gakken) 1760円(税込)

令和ロマン・松井ケムリによる初の単著。子供時代から動物園に通い、動物関連の仕事に就こうと考えたこともある松井が、動物たちの生態から学んできた生き方のヒントや人生観を語り抜く。登場するのはナマケモノ、トラ、リスなどの有名どころから、ベニクラゲ、コンビクトブレニーなどマニアックな動物まで全30種。よこはま動物園ズーラシア園長との対談も必読だ。