3億円で買った戸建てが「1000万円」でも買い手がつかない…「厄介不動産」に落ちぶれる物件の「傾向と対策」
すでに、日本全国には900万戸を超える空き家が存在する。修繕できないマンションも急増し、暮らしを支えるインフラは崩壊していく――
不動産を「持っているだけで損をする」時代に、家族でしっかり考えよう。
3億の家が1000万円台でも売れない
「団塊の世代は、都心から電車で1時間半ほどのベッドタウンに家を買っていました。その家を相続した子供が今、とても困っています。現在は山手線の内側では不動産価格が高騰していますが、都心を少し離れた郊外や田舎はなかなか売れません。
たとえば、かつて『チバリーヒルズ』と言われた千葉市緑区にある高級住宅街・あすみが丘は、バブルの頃に3億円ほどした戸建てが今、1000万円台でも買い手がつかない。住宅の資産価値が急減しているんです」(住宅ジャーナリストの榊淳司氏)
親の死後、実家をそのまま空き家として放置している人や、自分の不動産を子供に残すかどうか、まだ実感がわかないという人は多いだろう。
しかし、物件は放置すればするほど老朽化し、その価値は下がり、ますます売れなくなる「厄介不動産」と化す。ひと昔前は高額な物件だったとしても、1円でも売れなくなってしまうのだ。
総務省統計局の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、'23年の空き家は約900万戸と、5年前に比べて51万戸増えた。空き家数はここ30年間で約2倍に増加し、総住宅数に占める空き家の割合を示す空き家率は、13・84%と過去最高を記録している。
立地が悪い家は売れない
NPO法人「空家・空地管理センター」代表理事の上田真一氏が語る。
「'23年12月に施行された改正空家特措法により、『管理不全空家等』という新たな区分が新設されました。庭が荒れ放題だったり、窓が割れているなど管理の改善指導に従わないと、自治体から改善を勧告されます。それにも従わない場合、固定資産税が最大6倍も跳ね上がってしまう。年間数万円程度の支払いが数十万円の負担になるわけで、空き家の放置は経済的リスクそのものになったのです」
全国に急増する厄介不動産と、どう付き合うべきか―。まず、本章では売れない家の傾向と対策を考えていこう。
『老いる家 崩れる街』の著者で、明治大学教授の野澤千絵氏が語る。
「戸建てとマンションに共通する『売れない家』の特徴の第一は、立地の悪さです。病院やスーパー、教育環境など『街の機能』が周辺に備わっていないと、売れにくくなります。また、同時期にまとまって建てられた、同じような外観・間取りの古い中古住宅は、特徴に乏しく他との差別化がしにくいために、売れにくい傾向があります」
差別化しにくい中古住宅が並ぶ光景は、ニュータウンにもよく見られる。不動産評論家でオラガ総研代表の牧野知弘氏が実例を明かす。
「ニュータウンは歴史が浅く、そこで育った子供は地域に愛着を感じにくいので、実家に戻らないのが一般的です。たとえば埼玉・鳩山町にある鳩山ニュータウンは、豊かな自然と調和した景観が評判となり、1戸8000万円ほどの値が付きましたが、今は2〜3割程度の価格。横浜市にあるニュータウン富岡にも空き家が増えています」
横浜市や神戸市などでよく見られる、丘陵地で坂が多いエリアに建てられた住宅も不便なために安値となる。また前出の上田氏は、再建築ができない物件も厄介だと話す。
「私が扱った埼玉県にある市の事例では、8000万円程度の価値があるはずの物件が、最終的に200万円台でしか取り引きできませんでした。隣人が所有する80cmほどの細い路地でしか出入りできず、公道に一切接していない囲繞地だったんです。建築基準法では、『幅4m以上の道路に2m以上接する』という接道義務を満たさないと、建て替えができません」
地方に目を向けると、農地や山林付きの住宅は、維持管理が面倒なために売りにくい。山林は境界が明確になっておらず、売りたくても売れないケースも少なくない。
【後編を読む】和歌山でも、鹿児島でもない…「空き家率」が高い都道府県ランキングワースト「意外な県」の名前
「週刊現代」2026年5月25日号より
