「年を取ると基礎代謝が落ちるから太る」は誤解?実は「ある年齢」までは大差なしという研究結果も…東北大学教授が解説する<ダイエットの落とし穴>
「今度こそダイエットを成功させたい!」と色々な方法を試してみたものの、なかなかうまくいかない…と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。「ダイエットがうまくいかないのは、数々の<誤解>のせいです」と断言するのは、代謝の専門家である東北大学・山田陽介教授です。そこで今回は、そんな山田教授の著書『肥満脳のトリセツ 代謝の専門家が教える科学的ダイエット』より一部引用・再編集してお届けします。
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誤解 年を取ると基礎代謝が落ちるから太る→実は60歳までは大差なし
基礎代謝という言葉は、多くの人が耳にしたことはあると思います。身体維持のために必要なエネルギー消費のことで、25.6度でできるだけ動かない状態で測定しますが、体重や臓器のサイズ、筋肉量によって変わってきます。同じ体重でも、体脂肪率や筋肉量の違いによって一日で200〜300kcalの差がでます。
基礎代謝が高いと、何もしなくても消費するエネルギーが多いので、痩せやすいのは確かです。運動すれば基礎代謝も上がるので、エネルギー効率がいい、つまり効率的にエネルギーを産出(消費)できる状態で生活できる体になっているということです。そして、それが長生きできるかにもかかわっていることがわかってきました。
年齢による変化では、60歳くらいまでは、基礎代謝はあまり変わりません。つまり40代の人が、10代、20代より代謝が落ちたから太りやすくなった、というのは誤解なのです。
もっとも基礎代謝が高ければいいのか、といえばそうとばかりもいえません。精神的なストレスやウイルスが体に入るなどのストレスに対抗するため、心拍数を上げることで基礎代謝が慢性的に高くなってしまうこともあり、そうなると逆に長生きしにくい、という研究結果も出ています。そういう「悪い代謝」が上がるのは問題です。

<『肥満脳のトリセツ 代謝の専門家が教える科学的ダイエット』より>
筋肉をつけて代謝を増やすのは一苦労
また、ジムに通って筋肉がついたから代謝が高い、という女性もいます。確かに、筋肉1kgあたりで1日約30kcal代謝(エネルギー消費)が増えます。でも1kgの筋肉をつけるのは大変なトレーニングが必要です。
その上で、おにぎり一個分のカロリーを1日で消費しようとすると5kgくらいの筋肉が余計に必要です。そこまで筋肉を増やして痩せる、というのは一般の人にとっては現実的ではありません。

『肥満脳のトリセツ 代謝の専門家が教える科学的ダイエット』(著:山田陽介/講談社)
中年になり、44歳くらいからは細胞の数が減り始め、60歳では細胞の大きさも小さくなってきます。筋肉が一番はっきりと小さくなりますが、脳も萎縮していきます。
体重における除脂肪量(脂肪以外の骨や筋肉、脳など)が、がくんと低下するのが60歳前後と言われています。そうなると基礎代謝は減っていきます。体重が変わらなくても、除脂肪量が減って、その分脂肪が増えるという体組成になっている場合も多くみられます。
節約モードではダイエットも成功しない
理論上では、体重が減っても筋肉量が変わらなければ基礎代謝は変わらないはずですが、実際に急激に体重が減少すると、セットポイントが変わり、「節約モード」に入って、基礎代謝が下がってしまいます。同じ体重で体組成が同じでも基礎代謝が低い、ということになります。
私の実験では、ボクシングの選手が10kgの減量をしたときは、1日当たりの基礎代謝が1週間で150kcalくらい下がります。運動選手なので筋肉量は減らないようにしていたとしても、身体は節約モードになります。
その場合、身体のどこの部分の消費が減る、というよりは全体的に減ります。脳も肝臓も消費が減りますし、体温も下がります。食事の量が減ることで食事誘発性熱産生(DIT=食事・消化によって消費するエネルギー)が減るので、それも減少の大きな要素です。いわば飢餓状態になって、寝ているときの基礎代謝でさえ下がってしまうのです。
2kg程度の減量なら脳の感受性もそこまでストレスを受けることはありませんが、5kgだと身体は避難的行動をすることになってしまいます。人類は食物が十分でなかった時代が長く、体重が減るということは本能的に危険な信号なので脳に大変なストレスを与えるのです。
一度ダイエットに成功しても
夏までの3ヵ月で5kg痩せようというダイエット計画ですが、それだけ短期間だと代謝は下がります。ただし、下がった代謝は減った体重を6ヵ月以上維持すれば戻ってくる、という研究があります。
皆さんも実感しているかもしれませんが、一度痩せることに成功したときに、その体重をいかにコントロールできるか、維持できるかというのが大事になってきます。
一度ダイエットに成功しても、6ヵ月たたないうちに体重が増えれば、代謝は下がったままなので、食事量が変わらなくても、太りやすいということになります。それを2回、3回と繰り返すとますます痩せにくく、太りやすくなってしまうのです。
痩せた後の維持のためのコントロールを食事だけでするのは大変難しい。いわば腹六分目程度をつづけなければならないような状態です。
※本稿は、『肥満脳のトリセツ 代謝の専門家が教える科学的ダイエット』(講談社)の一部を再編集したものです。
