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 移動に欠かせない交通手段のひとつである電車。しかし、通勤や通学の時間帯は混雑するため、殺伐とした雰囲気がある。車内では譲り合いの精神を持って、お互い気持ちよく過ごしたいものだ。
 今回は、電車内で不快な状況に巻き込まれたという2人のエピソードを紹介する。

◆「どかしてください」が言えず…

 鈴木健太さん(仮名・30代)は、都心へ向かう通勤電車での出来事を、今も忘れられないという。

 車内は身動きが取りづらいほど混雑していた。鈴木さんの目の前には、大きなバックパックを背負った男性が立っていたそうだ。

「大きくて、中身も詰まっているようでした。本来なら前に抱えるべきサイズだと思います」

 電車が揺れるたびに、“その荷物”が鈴木さんの腰に当たった。「仕方がない」と思っていたが、徐々に痛みへと変わっていった。

「我慢できずに、『……痛い』と聞こえるかどうかくらいの声で言いました」

 しかし、男性は反応しなかったようだ。

「気づいていないとは思えませんでした。それでも、その場から動こうとしなかったんです」

◆押し返すような圧力を感じた

 本来であれば注意すべき場面だったが、言葉が出なかったという。

「私が踏ん張ると、さらに体重をかけてくるような感覚がありました。体格差もあったので、怖さを感じましたね。勇気を出して『どかしてください!』と言えばよかったと思ったのですが……。相手が感情的になったらと思うと、声が出ませんでした」

 結局、鈴木さんは終点まで“その状態”に耐え続けた。

「電車を降りた瞬間、冷や汗が出てきて腰の違和感もありました」

 翌日、腰の痛みが引かずに病院を受診。診断は「腰椎捻挫」だったそうだ。

「まさか、ただ立っていただけでケガをするとは思いませんでした」

◆突然始まった“採点”に戸惑い

 田中彩花さん(仮名・30代)は、平日の夕方、接骨院の帰りに乗った電車で思いがけない出来事に遭遇した。

「座席が埋まっていたので、ドア付近に立っていました」

 発車して間もなく、近くから大きな声が聞こえたという。

「いきなり『10点かな!』と聞こえて、思わず顔を上げました」

 向かい側にいた男性が、じっと田中さんを見ていたのだ。「様子がおかしい」と思って視線を外したのだが、男性の声は続いていた。隣にいる女性に話しかけるような口調だったが、その内容は田中さんの服装についてだった。

「その組み合わせは微妙」「自分ならそれは着ない」といったことを、ずっと言っていたそうだ。

 初めは状況を理解できなかった田中さんだったが、徐々に自分が話題にされていると気づいたという。

◆車内で続いた“他人のファッションチェック”

「完全に見られているという感覚でしたし、評価されているとわかって不快になりました」

 男性は、さらに細かく言及していった。

「レースのデザインが古い」
「スカートはもっと短いほうがいい」

 まるで“ファッションチェック”をするように解説していたのだとか。男性の隣にいた女性は、明らかに困惑した様子だった。

「女性はずっと敬語で相づちを打っていましたが、興味があるようには見えませんでした」

 田中さんは、男性の様子を冷静に観察。派手な柄のシャツにサングラスをかけていて、「正直、言われる筋合いはない」と思ったという。腹が立った田中さんは、あえて無言で男性を見続けた。

 すると、男性の様子に変化が現れたのだ。

「落ち着きがなくなって、貧乏ゆすりのような動きをしていました」

 しばらくして、小さな声が聞こえたそうだ。

「なんで、降りないんだよ……」

 男性は話すのをやめ、数駅後に電車を降りた。

「ただ電車に乗っていただけなのに、“ファッションチェック”に巻き込まれるとは思ってもいませんでした」

 電車では個人のマナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。