新たな「特定技能」人材の受け入れ、外食産業で停止…苦慮する各社「先々を見越していたのに」
一定の専門性や技能を持つ場合に認められる在留資格「特定技能1号」の外国人材について、政府は外食業での新たな受け入れを4月13日から原則停止した。
5月にも上限の5万人を超える見込みとなったためだ。人手不足が常態化している外食業界では近年、特定技能人材が急増し依存度が高まっていただけに、各社は対応に頭を悩ませている。(橋本龍二)
既存の人材の奪い合いも
「先々の採用を見越して店舗運営の計画を作っているのに、見通しが立たなくなるのは不安だ」。そばチェーン「ゆで太郎」運営会社の担当者は話す。
同社は2026年度、ミャンマーからの留学生20人に特定技能1号を取得してもらうことを前提に奨学金を貸与し、将来的に正社員として登用する計画だった。だが、今回の受け入れ停止で採用の見通しが立たなくなった。今後の留学生の扱いは未定だ。
ゆで太郎は近年、店舗で働く従業員で特定技能人材の採用を増やしていた。担当者は「代わりに日本人を採用できる保証もない」と不安を口にする。
ファミリーレストランの「ガスト」「バーミヤン」などで約270人の特定技能1号人材を雇用するすかいらーくも今年、アルバイトの留学生約30人が将来の正社員登用に向けて1号の資格試験を受ける予定だったが、見送りを余儀なくされた。「接客や調理に興味を持つ外国人材は多く、キャリアを築く道が途絶えたのは残念だ」と嘆く。
特定技能1号は分野ごとに定員が決まっている。外食業は29年3月末までの5年間で5万人だ。飲食料品製造業(13万3500人)や介護(12万6900人)などに比べて少ない。
コロナ禍の収束で訪日客需要が回復するなどし、外食業界では人手不足が深刻になっている。1号人材の受け入れ数は25年12月末で4万3869人と、3年前の8・5倍に急増。26年2月末には4万6000人(速報値)と上限に迫った。
このため、政府は3月に受け入れの原則停止を決めた。外国人雇用に詳しい杉田昌平弁護士は「人事は年単位で計画されることが多く、急な対応は難しい。限られた人員での店舗運営を余儀なくされ、長時間労働や時短営業などサービスレベルの低下につながる可能性がある」と指摘する。
上限引き上げを要請の構え
業界団体も改善を訴える。日本フードサービス協会は「1号人材の受け入れ停止は人手不足を加速させ、出店計画の見直しなどにもつながりかねない。急な内定の取り消しで外国人材からの信頼も失う」として、上限の引き上げを政府に要請する構えだ。
既存の1号人材の奪い合いも起きている。愛知県を中心に豚骨しょうゆラーメン店を展開するディ・エー・アイは4月から、1号人材を対象に一時帰国に充てるための長期休暇制度を拡充した。担当者は「福利厚生の充実で今働いている社員の流出を防ぐとともに、他社の1号人材の獲得につなげたい」と話す。
今後、外国人材の不足を補うため、待遇改善で日本人の採用を強化する動きが広がる可能性もある。
◆特定技能1号=人手不足の分野に熟練した労働者を呼び込もうと、2019年に導入された特定技能制度に基づく資格。在留期間が最長5年の「1号」とは別に、上限なく更新できる「2号」がある。後者はより熟練した技術が求められる。
