「日本では人気ゼロ」なのに、中国では「富の象徴」に…Appleも今年参入と噂の「折りたたみスマホ」なぜ人気?
Appleが今年中に「折りたたみiPhone」を投入するとの見方が強まっています。海外では折りたたみスマホのユーザー数は増えており、特に中国ではApple以外の大手メーカーから多数の製品が販売されています。それに対して日本では折りたたみスマホの普及度はまだ低いのが実情です。なぜ日本だけ温度感が違うのか。海外、特に中国の折りたたみスマホ市場の状況と、Apple参入がもたらすインパクトを追いました。
【写真】中国では「富の象徴」に…見た人をギョッとさせる、約42万円の「三つ折りスマホ」を見る

折りたたみスマホ
中国では「当たり前の製品」
つい先日、4月14日にOPPOが折りたたみスマホ「Find N6」の日本での販売開始を発表しました。本体価格は31万8,000円とかなり高価な製品です。日本ではサムスン電子やグーグルが数年前から折りたたみスマホを投入していますが、ほとんどの製品は20万円以上。最近ではnubiaの「nubia Fold」が10万円台後半で販売され、製品種類も増え、買いやすい価格のモデルも出てきました。
ところが、東京の電車の中で人々が使っているスマホを見ると、半分以上がiPhoneの何らかのモデルという光景が日常的です。ましてや折りたたみスマホを使っている人を見かけることは滅多にないでしょう。家電量販店の販売データなどからも、日本での折りたたみスマホの出荷台数は全体の1%にも満たない水準にとどまっているといわれています。
なお折りたたみスマホには、横に開くフォールド(Fold)型と、縦に開くフリップ(Flip)型の2種類があります。今回は主にフォールド型の折りたたみモデルにフォーカスして話を進めていきます。
日本ではマイナーな折りたたみスマホですが、中国に行くとその姿は一変します。たとえば香港に近い深圳市の地下鉄に乗ると、1車両あたり数名が折りたたみスマホを使っていることも珍しくありません。ユーザーも男性だけに留まらず、女性が使っている姿もみかけます。さらに使われている折りたたみスマホの機種やメーカーも様々です。
つまり中国では折りたたみスマホがすでに一般的な製品として広く認知されているのです。しかし折りたたみスマホは、一般的なスマホより高価なプレミアム製品です。平均所得が日本より低いとされる中国で、なぜ折りたたみスマホの普及がここまで進んでいるのでしょうか。
日本と中国、スマホの「買いやすさ」の違い
日本のスマホの販売方法は、実は世界の中でも特殊です。基本料金は毎月の自動引き落としで、通信キャリアがスマホを割引販売します。そのため高校生がiPhoneを持つことも当たり前なのです。最近では2年間で返却するプログラムを使えば、月々わずかなお金で高性能なスマホを使うことも可能です。スマホの販売価格に通信キャリアが大きく関与しているわけです。
これに対して中国では、基本料金は月極のプリペイド方式が主流です。通信キャリアのスマホの割引額もわずかで、学生がiPhoneを買うのは日本ほど容易ではありません。つまり日本よりもスマホは買いにくいように見えます。
そのためスマホメーカーが価格帯を分けたモデルを多数展開して、ユーザーの懐に見合った製品の選択肢を提供しています。1万円台の低価格モデルから、5万円程度の普及機、そして20万円を超える高価なハイエンドモデルまで、1メーカーのスマホの製品数は10種類を常に超えています。iPhoneは1年の間に4機種程度しか登場しませんが、中国では1メーカーが毎月数機種を立て続けに投入しています。
中国で折りたたみスマホは「富の象徴」
つまり中国ではスマホの価格は、その機能や性能に応じて決まります。高性能なモデルが「無料」のようなことは絶対に起きないのです。そして数多い製品ラインナップの中で、折りたたみスマホは各メーカーが最も高価に設定し、「先進性」だけではなく「あこがれ」を持たせる製品になっているのです。
筆者は仕事柄、中国企業のトップに話を聞く機会がよくありますが、その多くが折りたたみスマホを持っています。本体を開けば大画面が使える利便性だけではなく、富の象徴にもなっているわけです。
ちなみに中国でのiPhone最上位モデル「iPhone 17 Pro Max」の価格は約23万3,000円(9,999人民元)。十分高価ですが、周りを見れば多くの人が同じ製品を持っています。つまり希少性はありません。
それに対して折りたたみスマホは、HUAWEI(ファーウェイ)の「Mate X7」が約30万3,000円(12,999人民元)、同社の三つ折り型となる「Mate XTs Ultimate Design」は約42万円(17,999人民元)と、iPhone以上の価格です。特に三つ折り型のスマホは、実際に広げて使っているところを見せるだけで周囲の視線を集めてしまうほど、圧倒的な存在感を放つ製品です。
普通のスマホと変わらないサイズに進化
折りたたみスマホのことをなんとなく知っている人もいるでしょう。とはいえ購入しようと思わない理由は、価格が高いこと、さらに本体サイズが一般的なスマホより厚く、重量も重くて使いにくいと感じている点があると思います。
ところが2026年5月時点で、市場に出回っている中国メーカーの折りたたみスマホは、ほぼすべてが薄く軽量です。折りたたみスマホと言われなければ、普通のスマホと勘違いしてしまうくらいのサイズ感なのです。
前述したOPPOの「Find N6」は、本体を閉じたときの厚みが8.9mm、重量は225gです。Appleの「iPhone 17 Pro Max」はそれぞれ8.75mm、233g。厚みはほとんど変わらず、重量は逆に折りたたみスマホのほうが軽くなっています。
この薄型・軽量化の進化は、中国メーカー同士の製品開発競争が急激に進んだ結果です。2025年以降に登場したHUAWEI、OPPO、HONOR(オナー)、vivo(ヴィヴォ)、各社の折りたたみスマホのサイズ感は普通のスマホと変わりません。特にHONORが2026年3月に発表した「Magic V6」は、閉じたときの厚みが8.75mmと世界最薄クラスで、もはや「分厚い折りたたみ」というイメージとはかけ離れたサイズ感になっています。
このように薄型軽量化が進んだ結果、一般的なスマホから折りたたみスマホへの乗り換えを阻害する要因は、価格以外には無くなりました。しかも折りたたみスマホは本体を開けば8インチサイズのほぼ正方形の画面が使えます。2つのアプリを同時に使ったり、動画をより広い画面で見るなど、普通のスマホではできないこともできる便利な存在なのです。
日本でも「折りたたみ時代」が来る
筆者は折りたたみスマホを、初代モデルが登場した頃から継続的に使ってきました。その中で特に、ここ数年の進化、とりわけサイズや厚みの改善には目を見張るものがあります。かつては「スマホ好き」「ガジェット好き」といったニッチな層にしか勧めにくい製品でしたが、現在市場に出ているモデルであれば、一般のユーザーにも安心して「折りたたみはいいですよ」と勧められるレベルに達したと感じています。
今の折りたたみスマホは、折りたたんだ状態のサイズ感は一般的なスマホとほとんど変わらない一方で、広げればタブレットに近い大画面として使えるというメリットがあります。それでも、「そこまでして大画面はいらない」「壊れやすそう」といった理由から、不要と考える人が多いのも事実でしょう。とはいえ、今年の後半には、そうした考えを改める人が一気に増える可能性があります。
そのきっかけになるとみられているのが、Appleから登場すると噂されている折りたたみiPhoneです。日本で圧倒的なシェアを持つメーカーから折りたたみモデルが出てくれば、「一部の好きな人のもの」というイメージから、「自分ごととして検討してみてもいいかもしれない」という存在へと、認識が変わる人は少なくないはずです。
Apple参入をきっかけに動き出す「折りたたみスマホ」
折りたたみスマホは、大画面を活かして複数のアプリを同時に表示するなど、ユーザーインターフェース面でも工夫が重ねられてきました。もしAppleが折りたたみiPhoneを本当に投入するなら、既存のiPhoneやタブレットのiPad、さらには他社の折りたたみスマホをも上回る、使いやすさと完成度を備えた体験を提案してくることが期待されます。
海外の調査会社のレポートの中には折りたたみiPhoneの登場によって、世界の折りたたみスマホ出荷数が3割程度増えるという、かなり強気の予測も見られます。日本でも「とりあえずiPhoneの折りたたみを触ってみたい」という層が動き出せば、これまでニッチだった折りたたみスマホが一気に当たり前の選択肢へ近づく可能性は十分にあります。
日本ではまだ少数派の折りたたみスマホも、Apple参入をきっかけに大きく動き出すはずです。単なる物好きのガジェットから「次の買い替え候補」の一つへとポジションを変え、中国市場のように誰もが存在を知る時代が近づいているのかもしれません。
(山根 康宏)
