※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年5月号からの転載です。

Ⓒ「惡の華」製作委員会 2026 ©押見修造/講談社



 ドラマ『惡の華』で、鈴木福さんと共にダブル主演を務めるあのさん。「まさか人生でこんなことが起こるとは。とても嬉しく、光栄です」と、仲村佐和役を演じることに大きな喜びを感じている。あのさんは、以前から原作マンガの大ファンだった。

「当時の僕を知っている身近な⼈たちから強くお薦めされて。読んだときには、『出会ってしまった……』と衝撃を受けました。他人事とは思えないというか。周りから異常に見られていても、それは悪いことじゃないんだと、自分を肯定してもらった気持ちになって」

 あのさんが中でも共感したのは、やはり仲村だった。鈴木さん演じる春日高男に変態的な要求をエスカレートさせる仲村は、一見“狂気”の塊のようだ。

「ぼくは、彼女をそういうキャラクターとはまったく思いませんでした。むしろすごく真っ当。学校や町、社会に強制される“普通”にあらがって、自分自身の思いを大切に、正直に生きているだけなんです。今、仲村を演じながら、彼女の持つ優しさや温もりを、一層強く感じています」

 今回のドラマは非常に原作に忠実で、細部まで丁寧に表現させれている。仲村といえば、コミックス1巻のカバー絵にも描かれている「クソムシが」が印象的だが……。

「実際にあのセリフを口にしたときには、なんだかスカッとしました。仲村の心の中では、たくさんのものが、形も判然とせず渦巻いている。それを全部ひっくるめて、“クソムシ”という言葉で吐き出しているのかなと」

 鈴木さんとの演技は、互いのパワーのぶつかり合いだ。

「仲村にとって春日は、戦友に近い存在なんじゃないでしょうか。“クソムシ”しかいない世界にとらわれ、そこから逃げられない、早く逃げたい。そんなときに春日と出会って、二人は強い気持ちで結ばれていったのだろうと思います」

 春日は、仲村によって、まとっていた“普通”を徐々に剥がされていく。

「その姿は、グロテスクだけど美しい。春日と仲村の葛藤は、誰の心の中にもあるもの。それに気づかせてくれるストーリーです。原作とのリンクを楽しみながら、新しい『惡の華』としてドラマをご覧いただければと思います」

取材・文:松井美緒 写真:TOWA

あの●2020年9月よりano名義でのソロ音楽活動を開始し、22年メジャーデビュー。タレント、女優、モデルなどとしても幅広く活動。主な出演作に、映画『鯨の骨』『赤羽骨子のボディガード』『【推しの子】-The Final Act-』、劇場版アニメ『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』など。

Ⓒ「惡の華」製作委員会 2026 ©押見修造/講談社


ドラマ『惡の華』

原作:押見修造『惡の華』(講談社少年マガジンKC) 

監督:ヤングポール、井口 昇 脚本:目黒啓太、たかせしゅうほう 

出演:鈴木 福、あのほか

テレビ東京系:4月9日スタート、毎週木曜深夜24時〜24時30分 BSテレ東:4月15日スタート、毎週水曜深夜24時〜24時30分

電子コミックを含め全世界累計325万部を突破する、押見修造の代表作がドラマ化。群馬県ひかり市の山々に囲まれた町に住む、中学2年生の春日高男。閉塞感を感じながら生きる彼の救いは、ボードレールの詩集『惡の華』だった。ある夕方、忘れ物を取りに教室に戻ると、憧れのクラスメート・佐伯奈々子の体操着が落ちていた。春日は、体操着を衝動的に盗んでしまう。しかしその一部始終を、クラスの問題児・仲村佐和に見られていた。翌日、秘密にする代わりに仲村から“契約”を持ちかけられる。彼女に支配され、変態的な要求に翻弄されるうちに、春日は自らのアイデンティティーを崩壊させていく。さらに、意外なきっかけから佐伯と付き合うことになり、春日の心は恋心と背徳、仲村と佐伯の間で揺れ動く。