闇バイトで取引される「口座売買」の驚きの値段…「罪の意識」を持たずに犯罪に加担する若者たち

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特殊詐欺の認知件数・被害額は「過去最高」

昨今、特殊詐欺や闇バイトへの社会的関心が薄れている。既存メディア、ネットメディアの何れも、トクリュウ強盗事件が発生しても、簡単な記事を掲載する程度で、PVも伸びない無関心な現状がある。しかし、巷間では、特殊詐欺の認知件数・被害額共に過去最高を記録しており、令和7年の特殊詐欺と投資・ロマンス詐欺等の合計被害額は3000億円を突破している。

2020年1月、米投資ファンド、ブラックストーン・グループが全国の賃貸マンション220棟を購入した金額が3000億円。当時、国内最大の取引として注目された(日本経済新聞ウエブ版2020年1月28日)。

本稿では、警察庁のデータに基づき、巨額の金銭が詐取されている実態、昨今深刻さを増すマネー・ローンダリング犯罪のリアルを概観し、誰もが被害者・加害者になり得る現実に警鐘をならしたい。

警察庁から、令和7年における 特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)と題する報告書が公開された。

詐欺犯罪にも各種あり、現在の主流は「警察官なりすまし詐欺(ニセ警察詐欺)」である。「SNS型投資詐欺」、「ロマンス詐欺」は、特殊詐欺とは区別して統計がとられている(令和7年における 特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺 の認知・検挙状況等について (暫定値))。

令和7年に認知された詐欺犯罪の特徴

警察庁の報告では、昨今の特殊詐欺犯罪にみられる特徴が指摘されている(図1)。

・年代別では、20代、30代の認知件数は2倍以上増加しており、若い世代に被害が拡大していること。

・主な手口別では、オレオレ詐欺の認知件数が2倍以上増加し、他の主な手口は軒並み減少。この内、ニセ警官詐欺が70%以上を占めている。

・当初接触ツールとしては、電話が約8割と大半を占める。SMS・SNS・メール等が大幅に増加している。

・主な被害金等交付形態別では、振込型が6割と過半数を占める。暗号資産送信型の増加が顕著である。

ニセ警察詐欺を含む特殊詐欺の実態

警察庁によると、令和7年の特殊詐欺の認知件数、被害額は、それぞれ27,758件(+6,715 件、+31.9%)、被害額は、約 1,414.2億円(+695.4 億円、+96.7%)と、前年度を大きく上回っている。

警察では、ニセ警察詐欺とオレオレ詐欺と併せて特殊詐欺にカウントしている。

オレオレ詐欺のうち、ニセ警察詐欺が占める割合が顕著であり、認知件数は 10,696件、被害額は 974.4億円で、認知件数に占める割合は 39.4%。オレオレ詐欺全体の認知件数 14,393件に占める割合は74.3%であった。

ニセ警察詐欺に加えて、「SNS型投資詐欺」、「ロマンス詐欺」の犯罪被害が深刻である。

SNS型投資詐欺とロマンス詐欺はともに前年より大幅に増加している。

投資詐欺の認知件数は約9,500件・被害額約1,275億円で、接触手段は広告やダイレクトメッセージが約8割を占め、特にDMの増加が目立つ。

ロマンス詐欺も認知件数約5,600件・被害額約552億円に増え、暗号資産(コインチエックやビットフライヤーなど)を使った手口が急増し、被害の大きな割合を占める。

犯罪に加担している実感を抱かない闇バイト

特殊詐欺全体の検挙件数は6,590件(+14件、+0.2%)、検挙人員は2,307人(+33人、+1.5%)と増加している。

特殊詐欺の闇バイト実行犯は、実際に身体を動かさないといけない。受け子は被害者宅に赴き、出し子はATMに足を運び、タタキの場合は被害者宅を襲撃する必要がある。だから、「犯罪に加担している」ことを実感しているはずだ。

しかしながら、犯罪に加担している実感を抱かない闇バイトがある。特殊詐欺でいえば、道具屋が募集する闇バイトだ。マネー・ローンダリングというニーズの高まりから、昨今、特殊詐欺以上に検挙者が多い。

具体的には、「在宅副業」や「収納代行業サポート」などという名目で募集されている犯罪支援型闇バイトである。

犯罪支援型闇バイトで顕著なものが「口座のまた貸し」や「通帳の売り渡し」である(図2)。これらは犯罪収益移転防止法違反であり、明確な犯罪である。彼らは被害者の顔を見たり、声を聴くわけではないので心理的ハードルが低い。

令和7年中に、預貯金口座や携帯電話の不正な売買等の特殊詐欺を助長する犯罪では、3,579人(+56人、+1.6%)が検挙されている。これは、同年の特殊詐欺の検挙人員2,307人を大きく上回っている。

この点につき専門家も警鐘を鳴らす。

「詐欺など資金の獲得を狙う犯罪では、2025年は1万2178人が摘発され、2024年から約2千人増えました。また、2025年に摘発が最も多かった容疑は犯罪収益移転防止法違反で、全体の4分の1を占めています。口座の売買などをする違法行為で、犯罪で奪った金を口座から口座へ移し、出どころをわかりづらくするマネー・ローンダリングが目的とみられます」(SPN JOURNAL 2026年3月10日)

銀行口座プラス仮想通貨口座がセットの理由

実際に、テレグラムのグループでは、銀行の預貯金口座とセットでコインチエック(CC)やOKJ(旧オーケーコインジャパン)などの仮想通貨口座とみられるものの売買が活発だ(図3)。高額買取りをほのめかす投稿もあり、若者はいい小遣い稼ぎになると考えてしまう可能性がある。

昨今、銀行口座と仮想通貨口座がセットになるのはマネー・ローンダリングが目的。詐取したお金は、詐欺被害者に銀行入金させる。入金があった段階で即座に仮想通貨口座に移すという手法が広まっている。銀行口座は事件性があれば凍結できるが、仮想通貨口座は凍結できないからである。

もう一点、仮想通貨口座に即座に被害金を送金するのは、令和7年4月22日の犯罪対策閣僚会議で検討されている「架空名義口座捜査」を念頭に置いた対策と考えられる。この捜査を実効的に行うには、銀行口座と暗号資産口座をセットにする等の工夫が求められる。

「凍結口座名義人リスト」に掲載されたら未来はない

犯罪支援役の闇バイトに従事したら、間違いなく逮捕・起訴される。そして、当該闇バイト実行犯の口座は凍結され、今後、預貯金口座が開設できなくなる。

なぜなら、警察庁が金融機関に提供する「凍結口座名義人リスト」に掲載されると、金融機関の口座開設を謝絶されるからだ。そうすると、社会的信用を失い、口座引き落としが不可欠な契約や就職などにも多大な支障を来すことから、未来は一気に暗転する。

口座売買や名義貸しは、自宅に居ながら簡単に出来る犯罪であり、ハードルが低く、犯罪に加担しているという感覚がない分、闇バイトの受け出し実行犯よりも巻き込まれる危険性が高い。自宅に居ながら金が手に入る。簡単でタイパ・コスパは良いが、人生が暗転する引き合わない取引だ。

道具屋の相場によって報酬は様々だが、昨今では口座買取り金額が上昇傾向にある。闇バイトに詳しい情報通に確認したところ、銀行口座は15万円ほど。コインチエックなどの暗号資産口座は20万円ほどで売買されている。法人名義の口座であれば金額は更に高い。青少年や金銭的に困った人たちが、犯罪に誘引される可能性が高まっている。

『日本が世界中から狙われている』実態を直視すべき

犯罪被害額も過去最高を更新し続けている。冒頭で紹介した米投資ファンドによる国内過去最大とされた不動産取引の金額が3000億円。昨年1年間で、この金額以上が詐取されている。もはや旧態依然とした行政目線対策ではトクリュウ犯罪を防ぐことは難しい。

「トクリュウ犯罪に対峙するには、「日本がこれまで踏み込んでこなかった新たな捜査手法を大胆に導入(仮装身分捜査や架空名義口座、司法取引や通信傍受、犯罪者側の端末に警察がウイルスを送り込んで情報を盗み出す『ポリスウエア』など)しつつ、『日本が世界中から狙われている』実態を直視し、市民や企業、国との間で『強い危機感』を持つべき状況にあるとの共通認識を持つ必要が」あることは言を俟たない(SPN JOURNAL 2026年3月10日

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