『月夜行路』作間龍斗演じる“カズト探し”が本格的に開始 久本雅美が放つ強烈な存在感も
日本テレビ水曜ドラマ『月夜行路 -答えは名作の中に-』第2話では、ついに涼子(麻生久美子)の学生時代の恋人・カズト(作間龍斗)探しが本格的に動き出した。とはいえ、手掛かりは「大阪在住」「親の事業を継承」「名字は佐藤」という、あまりにも心もとないものばかり。人口800万人を超える街で、そんな相手をどうやって探すのか。
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途方に暮れる涼子に対し、ルナ(波瑠)が示した切り札は、図書館に残る古い電話帳だった。今ならまずSNSで探しそうなものだが、紙の記録をたどっていくところにこのドラマらしさがある。手掛かりをもとに2人が向かったのは、谷崎潤一郎『春琴抄』の舞台として知られる道修町。薬の街として知られるこの土地で、カズトの痕跡を探しながら、ルナはいつものように文学の聖地巡礼も楽しんでいく。高級なタンブラーを買って店に入り、その流れで聞き込みをするルナのやり方はかなり強引だが、不思議とこのドラマの空気にはよく合う。半ば勢い任せにも見える行動が、結果的に涼子の背中を押しているのも印象的だった。
だが、白杖を手にした店主・頼子(久本雅美)がいる呉服店「佐藤商会」に入ったあたりから、空気は少しずつ変わり始める。「一見さんはお断り」と言い放つ頼子の態度には、ただ気難しいだけでは片づけられないものがあった。さらに、骨董品店では空き巣被害の話を聞かされる。しかも盗まれたのは金品ではなく、なぜか盾。うどん屋で偶然出会った田村(胗俊太郎)と小湊(渋川清彦)が強盗殺人事件を追っていることもわかり、カズト探しの最中に、別の不穏な事件の気配が入り込んでくる。
今回も印象的だったのは、ルナが目の前の違和感を文学作品と結びつけて真相に近づいていくところだ。「白杖を持つ店主」「盗まれた盾」「いい香りのする呉服屋」「佐助の気持ち」――一見つながりのない要素が、『春琴抄』を手がかりにひとつの線になっていく流れは鮮やかだった。盲目の春琴と、彼女に尽くす佐助を描いた『春琴抄』のモチーフが、第2話では事件を解くヒントとして生きていたのである。名作文学がただ並べられているのではなく、人物の感情や謎解きそのものに結びついているところに、このドラマの面白さがある。
■強盗に“気づいていないふり”をしていた頼子(久本雅美) 頼子は店に入ってきた相手が孫ではなく強盗だと気づいていたが、自分が目の見えない人間だと思わせたまま、その場をやり過ごそうとしていた。相手に気づかれれば危険だとわかっていたからだ。一方の強盗も、頼子の孫になりすまして店に居座っていた。つまりあの店では、頼子は“気づいていないふり”をし、強盗は“孫のふり”をしていたのである。「一見さんはお断り」という頼子の言葉は涼子とルナを危険にさらさないための警告でもあったのだ。そんな緊迫した状況の中で、言葉遣いや、消火器を振り回す場面ひとつを取っても、久本雅美の迫力は圧倒的だった。
ルナが頼子に向けてキャスリン・ストケットの名を出していたのも面白い。代表作『ヘルプ 心がつなぐストーリー』を踏まえれば、それはそのままSOSのサインだったとも読める。本作は毎回、文学作品をただ引用するのではなく、その場の感情や状況に合わせて意味を滑り込ませてくる。そうした細かな仕掛けも本作の魅力だ。
同時に、事件や捜査だけでなく、ルナと涼子の過去にも踏み込んだ。ルナがトランスジェンダーとして生きるに至った経緯が明かされ、涼子とカズトの別れにも、火事という大きな出来事があったことが見えてくる。涼子のアパートの火事でカズトが怪我を負い、大学院の入試を受けられなくなったこと。その痛みが、いまなお彼女の中に残り続けていること。カズトから語られる「愛することは命懸け」という言葉は、『春琴抄』の世界だけでなく、涼子とカズトの過去にも重なっていた。
そしてラストでは、涼子が家族に伝えていた「祖母がぎっくり腰になった」という言い訳が嘘だとバレてしまう。大阪での時間は、もはや気まぐれな逃避では済まなくなってきた。カズトを探す旅は、過去の恋をなぞるためのものではなく、涼子自身が置き去りにしてきた人生を取り戻すためのものなのかもしれない。(文=川崎龍也)
