中堅以下にしか勝てないイングランド代表。日本戦でも“小粒感”は否めず 「チームの限界」「ケインなしでは何もできない」との声も…【現地発】
それでも“小粒感”が否めなかったのはなぜか。おそらくチームとしての機能性が感じられず、最後まで個の力に頼る以外の打開策を見出せなかったからだと思える。対照的だったのが、日本の戦いぶりだ。高い位置からのプレス、ショートカウンター、攻撃陣も自陣まで戻って守備に奔走し、素早い攻守のトランジションを徹底。組織力の差は歴然としていた。
戦術家として知られるトゥヘル監督のチームとは思えないほど、日本にあらゆる局面で後れを取った試合後、指揮官は「言い訳をするつもりはない」と語りつつ、「我々には7〜8人の怪我人がいた」という言葉を繰り返した。
思い返せば2016年のヨーロッパリーグ。ドルトムントを率いてロンドンに乗り込んだトゥヘル監督は、トッテナムを完全に圧倒した。優秀な戦略としての評判どおり、ホームのスパーズを一方的に退け、試合後の記者会見でも自身の用いた用兵術をこと細かく、そして快活に説明する姿を見て、「何とも優れた監督だ」と目を見張ったことが思い出される。それを思い出すと、今回の采配には首をかしげざるを得ない。
「チームの限界」「ケインなしでは何もできない」「優勝候補と言われているが、グループリーグ敗退もあり得る」――。
トゥヘル監督に対しても批判は集中。「サウスゲイトの痛々しい戦術を引き継いだだけ」「横と後ろへのネガティブなパスばかり」「最後はロングボール頼み」などなど。ファイナルホイッスル直後、日本の選手たちが歓喜に沸く一方で、一部のイングランドサポーターがブーイングを送っていた光景が、この試合を象徴していた。
日本は終盤に押し込まれる時間帯でも集中力を切らさず、攻守にハードワークを貫いた。メンタル面の強さも示したと言える。一方のイングランドは、個々の能力は高いが、組織として機能しているとは言い難かった。
昨年3月に行われた就任後最初のアルバニア戦以降、ワールドカップ予選では8戦全勝。その間、スタッツ上は攻守両面で欧州トップクラスの数字が並び、さらにボール支配率、パス精度、パス成功率など、多くの部門で1位となっていた。
そんなトゥヘル体制だが、格下との対戦が続いた“反動”が、3月の国際試合で露呈しただけなのかもしれない。つまり、よりハードな相手との実戦に慣れれば、立て直しは容易に叶う“一過性のミニスランプ”と言えるかもしれない。
ただ、一方で、「ケイン不在では勝てないチーム」というレッテルが貼られる可能性はあったのも確かで、そうであれば、オリー・ワトキンス、ドミニク・キャルバート=ルーウィン、イバン・トニー、ダニー・ウェルベックといった選択肢を、より積極的に試す必要があったのではないか。ワトキンスは今季低調なパフォーマンスが続くが実力・実績は十分。またほかの3人はシーズンを通して好調を維持している。
さて、次の実戦は大会直前の親善試合となる。
今回の2連戦について、「タフな試験になることは分かっていた」とそう前置きした指揮官は、こう続けた。
「シーズン終盤となり、我々の選手たちは欧州カップ戦に出場して、タフなリーグでも連戦が続いている。しかし7〜8人の選手がけがで代表を離れてしまったこともあり、困難な状況に陥った。これは言い訳ではなく、説明をしているだけだ。いつものように完璧でスムーズな、トップレベルのサッカーはできなかったのは確かだ」
「ここから2か月でしっかりと今回の内容を踏まえたうえで、スカッドを選定していき、怪我人が発生せずにベストチームを選べることを願いたい」
トゥヘル監督は、今後短期間でチームを立て直し、1966年以来60年ぶりとなるトロフィーを聖地に持ち帰ることができるのか。イングランドファンが待ち望む「Football is coming home(フットボールが聖地に戻ってくる」は叶うのか。稀代の戦術家が率いる優勝候補を、どんな夏が待ち受けているのだろうか。
取材・文●松澤浩三
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