「明るいデブ役」として振る舞い、残酷な言葉を笑って受け流す。けれど家に帰れば、剥がれ落ちた自尊心の破片を拾い集めるように一人で泣く。88キロ。一人の女性として敬意を払われず、暴言やセクハラ紛いの扱いを受ける絶望。トレえみさんが変えたかったのは「数字」以上に、他人に価値を決めさせる「惨めな自分」そのものでした。

【写真】惨めな思いをした体型から「別人」へと変貌を遂げた174cmの圧倒的スタイル(全14枚)

 豚足で「共食い」明るいデブ役を演じた結果…

ダイエットを成功して7年体型をキープしているトレえみさん

── 過去には体重が88キロまで増え、今とはまったく違う姿だったそうですね。

トレえみさん:太ってましたね。学生時代はバスケ部で、ハードな練習と比例して食べる量が多く、定食2人前は当たり前でした。社会人になっても、仕事や人間関係のストレスで暴飲暴食に走り、食事量はそのまま。気づけば88キロになっていました。もはや体重計に乗るのが怖くて避けていました。

── 体重が増えていくなかで、心身の状態はいかがでしたか?

トレえみさん:自分に自信がなくて、体型をからかわれても「いじられキャラ」に徹することで居場所を作り、「明るいデブ役」を演じてしまいました。

だから「私なら何を言っても大丈夫」と周囲に思わせていたのかもしれません。居酒屋でサラダを頼めば「ダイエット中?」と笑われ、豚足を食べれば「共食いだね」と言われる。合コンでは初対面の男性から「お腹にスライムがついてる」と許可なく触られたこともあります。

その場ではヘラヘラと笑っていましたが、家に帰って一人になると、あまりの惨めさに落ち込んで。いじられることでしか自分の存在価値を認められないと思い込み、そのストレスをまた過食で埋める。出口のない負のスパイラルでした。

「ほんとに私の後ろ姿?」突きつけた一枚の写真

── そこからなぜダイエットを?

トレえみさん:あるとき、ふと「私は自分で自分を『攻撃してもいい人間です』と差し出しているんじゃないか」と気づいたんです。

決定打は、友達が撮ってくれた後ろ姿の写真でした。隣に写る友達の、2倍くらいの体格の自分がそこにいたんです。当時はリバウンドを繰り返しながらもピーク時から20キロ減らした直後で、自分では「少しは痩せた」と思っていた。でも、客観的な現実は残酷でした。「これは、もうまずい」と。

流行りのダイエットに飛びついてはリバウンドする自分を捨て、正しい知識をつけようと決意しました。本を読み漁り、ダイエットインストラクターほか、体の仕組みから勉強し直したんです。

── 具体的にはどのようなアプローチを?

トレえみさん:「食事の改善」に絞りました。脂肪を1キロ燃やすのに必要なエネルギーは約7200キロカロリー。運動だけで痩せるのは非効率だと考えたんです。高タンパク、低脂質、低糖質、野菜を基本に、外食でも1食あたりタンパク質20グラム以上を死守。一方で、水分や生理周期で変動する「数字」に一喜一憂するのも辞めました。 コツコツと2年半。結果として40キロの減量に成功し、今は健康的な体型を7年キープしています。

「見た目」で態度を変える世界の「現実」

40キロの減量に成功し、現在はSNSでダイエットについて発信している

── スリムな体になり、周囲の反応は変わりましたか?

トレえみさん:一番衝撃を受けたのは、私に対する「世間の接し方」の激変です。太っていたころは、初対面でも失礼な振る舞いをされるのが当たり前だった。けれど痩せた後は、一人の人間として当たり前の敬意を持って接してもらえる。外見ひとつで、こうも世界は変わる。その事実に驚くと同時に、見た目が持つ残酷なまでの影響力を痛感しました。

何より変わったのは内面です。かつては自分を卑下し、笑われることでしか居場所を見出せなかった。でも、自分の体を変えられたことが大きな自信になりました。今は他人の目ではなく、「自分の人生」を生きているという確かな手応えを感じています。

「結局、見た目がすべてなの?」そう絶望したくなるほど、世界は残酷です。でも、あなたが今、周りに合わせて笑ってやり過ごしているその「痛み」は、決して当たり前のことではありません。

誰かに価値を決めさせる毎日は、もう、終わりにしてもいい。そう思えるだけで、守れる自分があるはずです。

取材・文:小山内麗香 写真:トレえみ