『パンチドランク・ウーマン -脱獄まであと××日-』©︎日本テレビ

写真拡大

 ドラマ『パンチドランク・ウーマン -脱獄まであと××日-』(日本テレビ系)の第8話は、“悪女”へと変貌を遂げたこずえ(篠原涼子)が怜治(ジェシー)の脱獄計画を成功させるために、人の心を利用することさえいとわずにあらゆる手段を行使する姿が描かれた。

参考:『パンチドランク・ウーマン』“こずえ”篠原涼子が悪女に 後戻りできない逃避行の引き金

 新たな監視システムを導入する際に、電子ロックがダウンする約10分間。こずえはその瞬間に生まれる空白の時間で、教団幹部の沼田(久保田悠来)と取引した脱出ルートを利用して、怜治を塀の外へと逃がすための策略を考えていた。

 第一に、新たな監視システムの導入には権限が必要になってくる。厄介なのは言うまでもなく小柳(宇梶剛士)の存在だ。法務大臣の小谷(山寺宏一)からの指示で春臣(竹財輝之助)殺害事件の真実を隠蔽している彼は、こずえと怜治の密接な関係にも目を光らせている。

 しかし、こずえの計画はすでに用意周到なまでに進んでいた。小柳の地位を失墜させるために次期所長に立候補したこずえは、彼が介護士の仲間(越村友一)に仕事を渡す代わりにキックバックをもらっていたことを突き止める。さらに、小柳が加世子(中島ひろ子)を介してこずえの動きを監視していたことにも気づき、自ら怜治との密会現場を押さえようとした小柳の行動を逆手に取って、容赦なく袋小路に追い詰めていく。小柳が管区の上層部の圧力をチラつかせることも承知済みだったこずえは、すでに小谷にUSBを渡す代わりの条件として、小柳を氷川拘置所から排除する手助けを要求していた。これまで苦渋を飲まされてきた小柳を完璧な罠に嵌めてなお、冷静な表情で怜治と計画の準備を進める姿には、ルールに縛られた厳格な刑務官の面影は一切ない。

 しかし、その裏でこずえは多くの人に嘘をついていた。「脱獄計画に利用できるものは何でも利用する」という宣言通り、新たな監視システムの導入も、部下たちのいる飲み会への参加も、目的はすべて脱獄を成功させるため。新たに区長となる関川(新納慎也)に脱獄の責任を負わせようとするところや、怜治が仲間に引き入れた渡海(高橋努)と河北(カルマ)を迷うことなく囮に使うところにも、彼女の冷酷さと徹底された行動理念が窺える。

 前回、浴室の鏡を拳で叩き割った瞬間から、こずえの目つきは明らかに変わった。何よりも彼女は、佐伯(藤木直人)といるとき以外でも笑うようになった。ただ、その笑みに柔らかさは感じられず、あるのは紛れもない強かさだ。人を利用することにも、嘘をつくことにも抵抗がなくなった彼女の切実な意志の強さは、すべて怜治を救うためだけに発揮される。

 脱獄計画に関する取引の中で「人を突き動かすのは正義でもなければ愛でもない。欲です」という沼田の発言に対して、こずえは「彼を救いたいだけです」と返した。しかし、終盤、こずえは怜治の手を握り、2人で目を合わせた瞬間に自身が本当に欲していた望みの正体を知る。「彼と一緒に逃げたい」と。

 同時に、怜治のこずえに対する思いにも変化の兆しが見られた。自らの犠牲もいとわずに、怜治の無実を信じて脱獄計画を遂行しようとするこずえに対して、怜治は信頼を超えた感情を抱き始めており、彼女を見つめるジェシーの眼差しには純粋な思いやりが宿る。終始、切実さや憤りが滲んでいた彼の目だが、あの瞬間はたしかに異なる感情に包まれていた。

 一方で、こずえにプロポーズをしてまで好意を伝えた佐伯が不憫でならない。怜治に対する執着や最近の不可解な行動に疑念を感じていた佐伯は、意を決してこずえの家にやってくる。突然の来訪に動揺を隠せないこずえ。そして、脱獄計画がバレないことを最優先に考えた結果、プロポーズを受け入れたこずえは佐伯の好意を利用する道を選ぶ。こずえが突き進もうとしているのは、誰がどこからどう見ても茨の道だ。それでも、怜治と逃げるためなら地獄に堕ちても構わないと覚悟する彼女を、もう誰も止めることなどできないだろう。

(文=ばやし)