少子化や受験生の「女子大離れ」が進み、閉校や共学化が相次いでいる。女子大はもう時代遅れで、不要なものなのか。細川幸一・日本女子大学名誉教授は「女性が自立しタフネスさを身につけるために、“女性のための大学”が果たしてきた役割は依然として大きい。女子大は現在の女子の志向に沿う学科・カリキュラムを提供する努力が欠かせない」という――。
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen

■女子大の閉校・共学化が止まらない

最近、女子大の不人気を伝える報道が相次いでいる。入学定員、収容定員の充足率が悪化あるいは将来の予想から、募集停止や共学化に踏み切る女子大が続出している。

ここ1〜2年でも、2024年度から恵泉女学園大学と神戸海星女子学院大学が募集停止、桜花学園大学が男女共学化に踏み切った。25年度からは、名古屋女子大学、神戸松蔭女子学院大学、清泉女学院大学、園田学園女子大学が共学化、東京家政学院大学が段階的に共学化する予定だ。女子栄養大学は26年度から、鎌倉女子大学は29年度からの共学化の方針を発表した。

学習院女子大学が最短で26年度にも学習院大学と統合、女子大では日本最大の学生数となる武庫川女子大学が27年度に共学化の方針を明らかにし、関係者を驚かせた。

日本は世界的にもまれな「女子大大国」だが、その地位がいま大きく揺らいでいる。

■なぜ日本だけ“女子大大国”になったのか

海外を見渡すと、女子大が一定数存在する国は米国・韓国くらいで、多くの国では女子大という制度自体が存在しない。米国でも最盛期の1960年には約200校あったが、統合や共学化が進んで現在は30校程度にまで縮小している。名門女子大7校は「セブンシスターズ」と呼ばれてきたが、共学化する大学が現れ、5校となった。

韓国ではソウルの梨花女子大が有名で大規模だ。学生数は2万人ほど、工学部や医学部を含む幅広い学問領域をカバーする総合大学で、かつてキャンパスを訪れた筆者はその規模に圧倒された。小規模・少人数教育を特徴とする日本の女子大とは対照的だ。

そもそも、なぜ日本は「女子大大国」になったのか。

日本は戦前まで、女子に対する高等教育は不要とされ、女子の大学入学は許可されてこなかった(例外として東北帝国大学は1913(大正2)年8月、はじめて3人の女性の入学を認めた)。女子教育を担う専門学校や女子高等師範学校が“戦後の大学設置”で一斉に女子大へ転じた。これが、今日の「女子大大国」の原型となった。

1901(明治34)年に創設された日本女子大学(当時は法律上の専門学校扱いで名称は「日本女子大学校」)や、お茶の水女子大学(東京女子高等師範学校)、津田塾大学(津田英学塾)等が戦後に相次いで女子を対象とする大学になったことで、女子大が多数誕生することとなった。

写真提供=日本女子大学
明治38年、日本女子大学校関連施設建設現場で評議員たち。前列右から西園寺公望、大隈重信。後列左から成瀬仁蔵、広岡浅子 - 写真提供=日本女子大学

■女子大は90校→71校へ “女子大大国”の地盤沈下が進む

日本の女子大は、1990年に90校あったが、2024年には71校に減少した。一方、大学総数は500校から800校ほどに増えたため、割合は18%から9%に半減した。

背景には18歳人口の急減等がある。これが大学の経営難を招く大きな要因となっている。もちろん女子大だけの問題ではないが、その影響は女子大により大きくのしかかった。

ではなぜ、女子大の地盤沈下がさけばれているのか。以下、4つの要因から考えてみたい。

?少子化・共学校志向の影響

1990年と比較して2024年の18歳人口はおよそ47%減少した。一方、大学の新設、短期大学の4年制大学化、専門職大学の新設などにより大学数は1.6倍に増え、受験生の奪い合いが激化している。

また、女子高校生の共学校志向の強まりも痛手となっている。かつて「下宿させるなら女子大のほうが安心」という親の価値観も追い風だったが、そうした感覚も薄れ、寮生活を煩わしく思う女子も増えてきている(逆に寮生活にあこがれる学生も一定数いるが)。

女子大は「親は行かせたいが、本人は行きたくない大学」と揶揄されることもある。

■高校で進む男女共学化の余波

高校の男女共学化も「女子大離れ」を誘う。女子高の生徒が減ることで、女子大の志願者数にも影響が及んでいる。

共学志向はデータでも示されている。マイナビ進学総合研究所が23年9月に実施した「女子大に関する調査」(女子高生会員対象)によると、女子大を志望しない人は70.6%で、その半数以上は「進路調べをする前から、共学しか志望していなかった」と回答。志望しない理由は「学内の女子だけの人間関係(先輩や友人など)に不安を感じた」が最多となった。

Studyplusトレンド研究所のアンケート調査(25年7月実施、対象は全国の女子高校生1046人)では「女子大を志望している」は21.4%で、「志望しない」が47.8%、「どちらでもよい」は30.7%だった。志望しない理由は「恋愛の機会が少なそう」(54.0%)で、「人間関係が複雑そう」(52.4%)、「共学よりも楽しさが少なそう」(37.2%)と続く。イメージで女子大を敬遠している傾向はかなりありそうだ。

■「教養型女子大」と実学志向のミスマッチ

?実学志向の高まり

かつて女子大の多くは「良妻賢母」の思想の影響を受けながら、教養教育や家政・幼児教育など、家庭内の役割に結びついた学部構成・教育内容を特徴としていた。系統としては、文学・教養系の小規模リベラルアーツ大学と、専門学校を母体とした実務系女子大だ。

しかし、戦後、特に1986年の男女雇用機会均等法の施行以降、女性の社会進出が進み、学生は資格取得や専門職に直結する「実学」を求めるようになった。看護・保健・社会福祉、最近ではビジネスに直結する経営学・商学などの社会科学分野の人気が高まり、理系に進む女子(いわゆるリケジョ)も増え、これに対応できていない女子大は志願者を減らしている、との指摘もある。

一方で、こうした志向に対応したカリキュラムへの移行は、共学の大学と教育内容で同質化することを意味し、女子大らしさを失うことにもなりかねない。女子大は差別化か共学校と競合する実学化かという難しい選択を迫られている。

■“小規模大”より“総合大学”が人気

?「総合大学」志向の高まり

女子大の多くは小規模・少人数で、学生と教員との距離が近い点が強みと見なされた。一人ひとりの学生に目が届きやすく、親の安心感も生んできた。

しかし近年は、女子高生の志向が規模の大きい総合大学へとシフトしている。大規模な大学ほど学部が多く、多様な科目や専門性の高いコースが用意されている。図書館や研究体制が充実していることは事実であり、女子大も「女子の総合大学」を目指す必要があるとの認識を持つ関係者も多い。

実際、鎌倉女子大の調査でも、「女子大だから志望した」という学生は、直近4年間の平均で3.8%(2025年公表資料)にとどまっている。私が勤務していた日本女子大学でも、「女子大だから選んだ」というより、学科のカリキュラムが魅力だったという意見が多かった。

?都心の大学志向は強い

女子大に限ったことではないが、せっかく通うなら都心の交通至便である大学がよいという受験生の考えは強い。総合大学・都市部の大学が選ばれやすい構造の中で、多くの郊外にある小規模な女子大が競争上の不利を背負うかたちになっている。

■女子大は“学びたい学生”が集まる場所だ

日本女子大の在学生からは、オープンキャンパスで先輩たちが生き生きしており、親切にしてくれたことが印象に残ったという声がよく聞かれる。学生が主体的に動き、一体感が生まれやすい点は女子大ならではだ。女子大を志望する学生には、学習目的が明確な人が多い印象だ。

写真提供=日本女子大学
日本女子大学成瀬記念講堂2025年入学式 - 写真提供=日本女子大学

創設者・成瀬仁蔵の教育理念を集約した三綱領「信念徹底・自発創生・共同奉仕」が象徴するように、女子大は本来、自ら考え行動する女性を育む場であり、この環境が学生の成長意欲を後押ししてきた。

就職面でも女子大は強みがある。女子大に求人を出す企業は女性採用に積極的で、就活のミスマッチが少ないと言われる。また、日本女子大学では、卒業後の再就職を支援するリカレント教育(再就職コース、働く女性コース、DX人材育成コースなど)を整え、「女性の人生航路の母港」として機能している。26年4月からは、女性が生涯を通して社会で活躍するためのキャリア形成を包括的に教育・支援するための「JWUキャリアライフセンター」を新設するとしている。

一方で「女子だけの人間関係や恋愛機会への不安」という高校生の声もある。しかし、私の経験では、女子大で人間関係に特有の問題が生じるという話はほとんど聞かれない。日本女子大学の場合、近隣5大学による単位互換制度(f-Campus)や、インカレなど外部との接点は多く、学生生活の交友関係は学内だけではない。

女子大は“閉ざされた女子だけの世界”ではなく、目的意識の高い学生が集まり、多様なつながりを築ける教育空間として機能し得る場だ。

■「強いられることも許されることもない空間」

ここで改めて考えてみたい。女子大は令和の時代でも必要なのだろうか。日本女子大・篠原聡子学長は次のように語っている。

「女性だからといって強いられることも許されることもない空間で、一定期間学ぶことで身につくタフネスがある」(大学ジャーナル 2025年10月31日 日本女子大学が総合大学としての教育体制を強化 入試改革も実行)

とくに「許されることもない」というくだりこそ、今もなお女子大が必要とされるとする主張に説得性を与えているように思う。「強いられることもない」とは、まさに封建的な男女の役割の思想が支配する戦前において、「学ばないこと」を強制された女性に高等教育の機会を提供してきた伝統ある女子大の創設者たちの思いだ。

戦前の日本では、女子大の創設者たちはその常識を覆し、女性が学ぶ権利を求めて大学(戦前は専門学校扱い)を作った。しかし戦後も「男女の役割分担」という意識は残り、女子大には“良妻賢母教育”のイメージがつきまとってきた。

その伝統的なカリキュラムが今のニーズと合わず、志願者減につながっているという指摘は確かにある。だが重要なことはそれだけではない。

■女子大の価値は“女性の自立を鍛える環境”にある

篠原学長の言う「許されることもない」とは、女性を特別扱いして守るのではなく、性別を問わず競争社会の中でキャリアを築ける力を育てるべきだという考え方に通じる。

女子大という環境には、男性に頼らず、女性自身が責任を持って判断し行動せざるを得ない場面が多い。ここにこそ女子大の教育的価値がある。実際、筆者は共学の大規模な私大法学部でもゼミを長年担当してきたが、ゼミ長には男子が選出されることが圧倒的に多かった。一方で女子大では、すべての役割を女子だけで担うため、学生の主体性や意思決定力が育ちやすいと感じる。

また、共学大学では偏差値を基準に大学、学部・学科を選び、入学後に何を学びたいかが曖昧な学生が少なくない。それは先述の通り、共学の私立大学法学部で勤務した経験からも言える。社会に関心がなく法律を学んでも無味乾燥な暗記に頼るだけだ。

あえて女子大を選ぶ学生は“学びの動機が明確な層”が多く、この環境が女性の自立心と行動力を伸ばす土壌になっている。

■求められる“学び”を提供できるかが鍵

女子大が総合大学化を進める上で、リベラルアーツ系のみよりも家政学部を持っている大学のほうが有利だという指摘がある。

家政学部は設立当初は良妻賢母思想の影響を強く受けていたが、実際には栄養・保育・被服・住居など、生活に直結する実学の集合体であり、キャリア教育にも資する。日本女子大学は28年4月までに、「家政学部」など既存学部の再編を行い、専門性を高めて、全9学部16学科体制に移行するとしている。「魅力ある新たな女子大学の姿をもって、女子高等教育の持続性を示す」と攻めの姿勢だ。

すなわち、家政学は生活科学であり、総合科学だ。より専門性を高め、時代にあったカリキュラムを構築することは不可能ではなく、また持続可能性や専門分野の社会性の追求は生活者目線で物事を捉える学問の視点からむしろ得意であろう。

女子大が今後も社会の要請に応え、自分らしく生きていける女性を育むためには、現在の女子の志向に沿う学科・カリキュラムを提供する必要がある。また、女子大こそが男女共同参画の時代に女性がタフネスさを身につけることができる空間であることを証明し、理解を得ることが重要だ。

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細川 幸一(ほそかわ・こういち)
日本女子大学名誉教授
米国ワイオミング州立大学ロースクール客員研究員等を経て、日本女子大学教授。一橋大学博士(法学)。内閣府消費者委員会委員、埼玉県消費生活審議会会長代行、東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。専門:消費者法・企業の社会的責任(CSR)など。消費者保護の功績により内閣総理大臣表彰(2021年)。2024年3月に日本女子大学を退職。著書に『新版 大学生が知っておきたい生活のなかの法律』『大学生が知っておきたい消費生活と法律【第2版】』(いずれも慶應義塾大学出版会)などがある。歌舞伎を中心に観劇歴40年。自ら長唄三味線、沖縄三線を嗜む。
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(日本女子大学名誉教授 細川 幸一)