ヤ軍が見誤った山本由伸の価値 衝撃連投に“495億円の出し惜しみ”を米記者が悔恨「ヤマモトはヤンキースが好きだった」

写真拡大 (全2枚)

試合終了直後に目を潤ませた山本。そのやり切った表情が彼の充実ぶりを物語った(C)Getty Images

崖っぷちの状況から救った130球

 歴史に残る大一番の反響は球界全体に広まった。現地時間11月1日に敵地で行われたワールドシリーズ第7戦でドジャースは5−4で勝利。見事に球団史上初となる2年連続での世界一となった。

【動画】最後は併殺斬り!山本由伸が2年連続世界一を決めたシーンを見る

 9回一死という崖っぷちの状況から試合をひっくり返したドジャースの劇的な戴冠劇にあって、とりわけ異彩を放ったのは、胴上げ投手となった山本由伸だった。

 前日の第6戦に先発し、6回(96球)を投げていた山本。8回からブルペンで控えていたものの、「今日投げるとは思っていなかった」という27歳に出番が巡ってきたのは、9回一死一、二塁の局面であった。

 一打出れば、サヨナラ負けの可能性もあるスリリングな状況。そんなシチュエーションで中0日の異例抜擢を受けた山本は粘った。先頭のアレハンドロ・カークに死球を与えて一死満塁としたものの、立て続けに飛び出した味方の好守もあって無失点で切り抜けた右腕は、続投を命じられた延長10回を三者凡退でしのぐ。

 身体は決して万全ではない。それでも日本人右腕はタフに投げ抜いた。11回には、その苦労を知る女房役ウィル・スミスのソロホームランでドジャースが勝ち越しに成功。これで山本はより引き締まった。その裏に一死一、三塁と、ふたたびサヨナラ負けのピンチを招いたが、カークを危なげなく併殺打に打ち取ってシャットアウト。クレバーな投球でチームに歴史的な勝利をもたらした。

 この日に投じたのは34球だったが、2日間での合計数は130球にも上った。怪我に繋がる選手のダメージを重んじる近年のメジャーリーグでは“超”異例、こと先発投手に至ってはタブー視すらされる連投をやり切った。

 チームメイトたちからも「野球の神だ」と絶賛され、大谷翔平からも「世界一の投手。そのことに異論はない」と褒めちぎられた山本は、ワールドシリーズという大舞台で、2年前に12年総額3億2500万ドル(約495億円=当時のレート)のメガディールの価値を証明したとも言えよう。

 実際、一部では山本の恩恵を受けるドジャースを羨む声が上がった。

ヤンキースオーナーが「確信した」山本の価値

 米メディア『The Athletic』のヤンキース番を務めるクリス・キャッシュナー記者は自身のXで「ヤマモトがやったことは信じられない」と発信。23年12月に球界を賑わせた山本争奪戦に参戦していたヤンキースのオーナーであるハル・スタインブレナー氏が契約破談の際に示していた見解を伝えた。

「我々は3億ドルという金額が、正しいか間違っているかは別として、入札が継続する中で非常に良いオファーだと確信した。3億2500万ドルが高すぎるか? 3億ドルという提示が非常に、非常に良い条件だと感じていた」

 スタインブレナーオーナーの意見も一理はある。当時の山本はNPBでの投球経験しかなく、メジャーでの成功も確実なものではなかった。加えて、自分たちが2019年にゲリット・コール獲得の際に交わした投手史上最高額(9年総額3億2400万ドル=約352億3300万円)を超える契約をルーキーに払うことへの躊躇もあったのかもしれない。

 しかし、今回の偉才ぶりを目の当たりにし、出し惜しみによって逃した魚の大きさをキャッシュナー記者は痛感させられている。フォロワーから「仮にヤンキースが3億2500万ドルのオファーを提示していたら、彼をニューヨークに連れて来れたと思う?」と問われ、こう指摘している。

「それはわからない。ただ、彼(山本)はヤンキースが好きだった。彼らの交渉は順調に進んでいたんだ。私の意見を言わせてもらえば、2500万ドルの差しかないなら、それに見合う条件を提示すべきだ」

 山本が入団してからドジャースは連覇をやってのけた。その光景をヤンキースをはじめとする争奪戦に乗り出していた球団の幹部たちはいかなる思いで見つめているのだろうか。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]