FIRE達成者がお金より「社会とのつながり」を求める理由に、思わず納得してしまう
【FIREの現実】なぜ“億り人”は再び仕事に戻るのか?
ベストセラーとなっている『5年で1億貯める株式投資 給料に手をつけず爆速でお金を増やす4つの投資法』の著者・kenmoさんと、新刊『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略」』の著者・宇根尚秀さんによる特別対談をお送りする。新NISA(少額投資非課税制度)で、大人気の「オルカン(eMAXIS Slim全世界株式<オール・カントリー>)」や「S&P500(米国株式)」に連動する投資信託を始めた多くの個人投資家に、次の一手となる個別株投資を指南。個人投資家とファンドマネージャーによる「ここでしか語れない話」を繰り広げる。
FIRE後の社会とのつながり
kenmo 宇根さんの著書『最後に勝つ投資術』を拝読して、特に最後の章に深く共感しました。それは、FIRE(経済的自立と早期リタイア)を達成した人が、結局は再び仕事の場に戻ってくるという点です。
資産を十分に形成して、あとは遊んで暮らせば良いと考える人もいるかもしれませんが、それでも社会的なつながりや一定の責任を持ち続けたいという価値観は、多くの方に共通するものだと感じ、非常に興味深く読ませていただきました。
宇根尚秀(以下、宇根) おっしゃる通りですね。kenmoさんが個人投資家向けIR(投資家向け広報)などを主宰している「湘南投資勉強会」など、様々なコミュニティを通じた時間の使い方は、本当に素晴らしいと思います。有名なデイトレーダーの方々も、利益を上げるだけならご自身を表に出す必要がないにもかかわらず、積極的に情報を発信されています。そこにはやはり、社会とのつながりを求める、似たような想いが根底にあるのかもしれませんね。
承認欲求の先にあった「社会への貢献」
kenmo ちなみに宇根さんが今回、著書を出版されようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。差し支えなければ、そのあたりの「本音と建て前」のような部分もお伺いしてみたいです。
宇根 多少は承認欲求のようなものもあるのかもしれません(笑)。その根底にあるのは、40歳を過ぎて、今後の人生や時間の使い方を真剣に考えたことです。自分の生活レベルを大きく上げなければ、ある程度安定した生活は送れるようになったとき、「せっかくこの世に生まれてきたのだから、何か人様のお役に立ちたい」と、少し青臭いことを考えたのです。
全く新しいキャリアをゼロから始める選択肢もありましたが、これまで投資の世界で蓄積してきた経験や知識を活かすほうが、より社会に貢献できるのではないかと思いました。もちろん、投資の世界で常にお客様のお役に立てているわけではなく、反省することも多々あります。それでも、自分が知っていることを発信することで、誰かの参考になるのであれば、と。
そんなふうに考えていたタイミングで、ダイヤモンド社の編集者からお声がけいただいたのが直接のきっかけです。これは、建て前というよりは、かなり本音に近い気持ちですね。
kenmo 当初、執筆されることに迷いはありませんでしたか?
宇根 これまで培ってきたノウハウを発信する活動を増やしていきたいという思いはありました。ただ、私は投資会社を経営する立場です。私の個人的な発言が、会社のみんなに迷惑をかけてしまう可能性もゼロではありません。ですから、発信する内容の適切性について、社内でしっかりと検討し、すり合わせを行うことに時間を要しました。
中小型株に光を当てたい
kenmo 私も同じくダイヤモンド社の編集者からお声がけいただいて著書を出版することになったのですが、私の動機は少し偏っていたかもしれません。「湘南投資勉強会」で個人投資家向けのIR説明会を開催していることが大きな背景にあります。
ここ1、2年の株式市場を見ていると、日経平均を構成するような大型株、特に多額のキャッシュ(現金)を溜め込み、自社株買いや増配といった株主還元を強化するだけの企業ばかりが株価を上げ、評価される傾向にありました。
一方で、これから業績を伸ばそうと努力し、積極的にIR活動を行っている中小型株が、マーケットから全く見向きもされない。むしろ、そうした成長途上の企業に投資をすると、かえって損失を被るような状況さえありました。
頑張っている中小型株がたくさんあるのに、キャッシュを放出しているだけの会社が評価され、未来の成長のために投資している会社にお金が回ってこない。この構図は、何か違うのではないかと強く感じていました。そのことを踏まえつつ自著を出すことで「湘南投資勉強会」の認知度を高め、IR説明会などを通じて、もっと中小型株に注目が集まり、そちらに資金が流れることで市場全体が盛り上がってほしい、という強い思いがあったのです。
「頑張る会社が評価される」
健全な市場を目指して
宇根 そのお話、素晴らしいですね。とても共感します。正直なところ、私たちプロの投資家も2024年後半は、その市場の流れにかなり苦戦しました。「株主還元って何だろう」と考えさせられるような、いびつな値動きも多く見られましたから。
もちろん、これまでキャッシュを溜め込み過ぎていた企業がそれを解放するという動きは、ある意味で必要なプロセスだったのかもしれません。しかし、市場の関心がそちらにあまりにも偏り過ぎてしまいました。
本来、企業の価値は事業の成長によって高められるべきで、株主還元はそのキャピタルアロケーション(資本配分)が適正化される中の一環のはずです。それが、持続性のない株主優待なども出てきて、株価対策の還元が増えてしまった。私たちも延べ年間1000回以上、様々な企業と面談しますが、経営者の考え方や哲学の違いで株価の動きが大きく変わってしまうことを何度も見ました。市場環境が大きく変わったので、自分たちの投資戦略を調整する必要にも迫られました。
頑張っている会社、評価されるべき会社が正当に評価される健全な市場を育てるために、kenmoさんのように中小型株に光を当て、経営者の思いを直接投資家に届けるような活動は非常に価値があります。そうしたプレイヤーが増えること自体が、日本市場にとって本当に良いことだと信じています。kenmoさんのような活動をされている方がいらっしゃることを素晴らしく思います。
