激震に見舞われているフジテレビ

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 2011年の東日本大震災の際、民放テレビ各局のCM枠が「ACジャパン」(旧公共広告機構)だらけになったのを記憶している向きも多いだろう。だが今回は、フジテレビ1社のみが「AC」だらけに。社員の間では「4月危機説」もささやかれ始めている。

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 1月17日の港社長の会見を受けてフジのスポンサー離れが加速している。「トヨタ」「日本生命保険」の2社が18日、広告の出稿停止を立て続けに明かすと、間髪を入れず「NTT東日本」「明治安田生命保険」「アフラック生命保険」も同様の措置を講じると表明した。

激震に見舞われているフジテレビ

 広告代理店関係者が言う。

「全国的に知名度のある、いわゆるナショナルクライアントの中でもトヨタや日本生命はその代表格です。ナショナルクライアントは、広告費の規模が大きいだけでなく、他の企業の動向にも影響を与えます。それらがフジテレビから距離を置くことで、連鎖的に他の企業も広告出稿を見直す動きにつながりました」

 21日時点で広告を差し替えた企業は70社を超える。

「過去には『ごきげんよう』を1社提供で支え、フジとは長年にわたって関係が深かった『ライオン』まで20日に入ってCMを取りやめたため、SNSでも驚きの声が広がりました」(同)

「4月クールの広告枠が埋まらなければ……」

 フジテレビ関係者が言う。

「基本的に広告は3月末までのクールについては買い切られており、その分の広告料はすでに支払われています」

 だが、と続けて、

「社長は会見で『第三者の弁護士による調査委員会』を立ち上げると発表したものの、それは日弁連が定めるガイドラインに沿ったものではありません。うちと利害関係を有する顧問弁護士に任せた場合、どうしても甘い調査になるでしょう。これに関しては、批判もすでに起こっています。世論の理解を得られる調査結果を公表できなければ、4月からの新規契約でも企業が戻らない恐れがあります」

 この点、前出の代理店関係者も「4月危機説」について次のように語る。

「テレビ局の放送収入には、企業がCMを番組中に流すタイム収入と、番組を特定せず時間枠を指定して流すスポット収入があります。フジテレビは24年4〜9月期にタイムが約368億円、スポットは約344億円、合計で約712億円の収入でした。4月クールの広告枠が埋まらなければ、損失額は巨額に上るでしょう」

労組の加入者が急増

 中居問題の対処で失敗し、経営危機を招いた経営陣に社員らは不安を募らせている。そのため社内では今、こんな動きも起きている。

「うちは民放各社の中でも労組が弱いことで有名。電通社員の自殺を受けて、18年ごろから一般社員も入るようになったものの、組合員は80人ほどでした。それがここ数日で、加入者が急増。アナウンス室からも男女数人が新規で加入しました。23日時点で500人を超えました」(前出のフジ関係者)

 すっかりパニック状態に陥った社内を鎮めようと、幹部らは社内向け説明会を実施したが、

「社内の混乱には拍車がかかっており、一部の社員からは“倒産するのでは”との悲鳴も上がっています」(同)

「放送事業が吹き飛んでも倒産しない」

 もっとも、公認会計士の川口宏之氏はこう指摘する。

フジテレビを傘下に持つフジ・メディアHDは全体の売上高こそ8割ほどがメディア事業収入ですが、営業利益でいうと半分以上、都市開発事業で賄っています。粗利益で見ても、グループ全体が1590億円なのに対してフジテレビの放送・メディア事業は480億円程度。フジテレビグループはメディアというよりも都市開発で稼いでいる企業なんです。放送事業が丸ごと吹き飛んだとしても倒産することはないでしょう」

 しかし「4月危機説」が現実になれば、倒産は免れても経営陣の退任やリストラが必要となるはずだ。

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「週刊新潮」2025年1月30日号 掲載