192センチのマテタが前線でボールを収め、そこから攻撃的MFのイスマイラ・サールがスペースに飛び出したり、エゼが個人技で突破したりすることで、攻撃の形を作っている。しかしフィジカル重視のクリスタル・パレスのプレースタイルと鎌田のそれが、今のところまったく合っていないのだ。

 フィジカルプレー重視のクリスタル・パレスを「剛」と表現するなら、鎌田のそれは「柔」である。普段のプレミアリーグでは、日本代表はひたすら守備に走り回ったり、良いエリアでボールを受けられなかったりと、苦戦を強いられている。

【画像】華やかに可憐にピッチで輝く!世界の“美女フットボーラー”を一挙紹介!
 しかしストックポート戦では、チームがボールをキープし続けた。鎌田は優れたサッカーIQを活かし、ワンタッチで攻撃のスピードを上げたり、視野の広さを活かしてスルーパスやフリーランを繰り出したりと、随所に持ち味を発揮できた。28歳のMFは説明を続ける。

「基本的に、自分のプレースタイルとして、ボールを保持してプレーしたいと思ってる。自分がここに来る前、昨シーズンのクリスタル・パレスの試合を10試合以上見ましたけど、今季よりもボールポゼッションが明らかにできていて、得点もたくさん奪っていた。オリバー・グラスナー監督からも『こういうサッカーがしたい』と説明を受けていた。

 でも、開幕当初に勝点を重ねられなかったので、今はチームとして『守備重視で基本的にロングボールを使って』という形でやっている。『あまりショートパスを使うな、ロングボールで』という感じで、チームとしてやっています。今日のように、ある程度自分たちがボール保持できれば、自分も今までやってきたような感じでできると思います」

 その一方で鎌田は、現在の戦い方や監督の方針変更にも理解を示す。チームは秋頃まで降格圏に沈んでいたが、グラスナー監督が就任する前にクリスタル・パレスが貫いてきた「堅守速攻」に立ち返ると、成績は向上。今では降格圏まで5ポイント差の15位まで順位を上げた。鎌田は言う。

「監督のやりたいサッカーはボール保持の攻撃サッカーだと思うんですけど、現実的に今かなり厳しいので、ロングボールをよく使うサッカーになっている。ただ、それも仕方がないと思う。最初、勝点があまり取れなかったので、プランも変えていかないとダメだろうし。そうした状況も理解できる。今は勝点も重ねられているので、仕方がないことだと思っています」
 
 鎌田は現状を理解しつつ、守備重視のフィジカルサッカーでも成長できるポイントはあると力を込める。

「自分がやりたいサッカーは、このチームではなかなかできないと思う。ただ、それ以外の部分で成長できるところはたくさんある。選手としては良い機会なんじゃないかなっていう風に思います」

 ストックポート戦で、日本代表MFは上質のパフォーマンスを披露した。しかし来季降格の危険があるクリスタル・パレスは、戦いの場をプレミアリーグに移すと「堅守速攻」に戦術を戻すだろう。

 鎌田としては、我慢の時間がもうしばらく続きそうだ。

取材・文●田嶋コウスケ