RIIZE×米津玄師、TWS×ヨルシカ、IVE×あいみょん……K-POPアーティストによる“J-POPカバー”の魅力
国際的に人気を拡大してきたK-POPシーンでは、近年多くのアーティストがJ-POPカバーを披露し話題となっている。そこで本稿では、今年カバーされた作品を振り返りつつ、K-POPアーティストがJ-POPをカバーすることの魅力を掘り下げていく。
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直近では11月6日、RIIZEのEUNSEOK(ウンソク)による米津玄師「アイネクライネ」のカバー動画がRIIZE公式YouTubeチャンネルで公開された。屋上のような場所で夜景をバックに撮影されたこの映像では、オリジナル音源と比較すると伴奏の音が絞られ、ギターのシンプルな音色がEUNSEOKの歌声を引き立てる。米津の歌声とEUNSEOKの歌声を同時に聴くとわかりやすいのだが、彼らの声は特に中低音域の響きが似ている。そのためEUNSEOKの歌声はこの楽曲と相性が良く、彼の良さが存分に引き出されているのだと思う。そして、まるで日本語話者が歌っているように自然に聴こえる。たくさん聴き込んだことが想像できるだけでなく、もともとの耳の良さを感じずにはいられない、見事な再現度だ。
RIIZEのSOHEE(ソヒ)は、今年8月に優里「ドライフラワー」のカバー動画をアップロード。これほど短く感じる1分40秒があるのかと思うほど聴き入ってしまう歌声は、楽器のような鳴りの良さで音を紡いでいく。彼もまた、オリジナルの音源とよく似た声質――上手いだけではなく、人を惹きつけて離さない歌声を持ち、感情の立体的な乗せ方の上手さを失恋ソングにしっかりと映し出している。画面越しのSOHEEは、片手にマイク、片手にスマホを持って椅子に腰掛け、スマホに目を向けながら歌っているだけなのに、彼がこちらに視線を寄越すことは一度もないのに、なぜこんなにも見入ってしまうのだろう。
TWSのYOUNGJAE(ヨンジェ)がカバーしたヨルシカ「左右盲」でまず驚いたのは、「つ」の発音の正確さだ。通常、韓国語に存在しない「つ」を発音することは非常に難しく、「ちゅ」と発音してしまうことが多い。存在しない発音なのだから、むしろそれが当たり前である。しかし、YOUNGJAEは〈突いている〉〈一つでいい〉〈剣〉〈僕の靴跡を〉と、どのワードにおいても見事に「つ」の音を発音し、ネイティブ同様に日本語の歌詞を歌い上げているのだ。彼は今年1月のデビューショーケースでもすでに新人とは思えない流暢な日本語の挨拶を披露していたのだが(※1)、きっとこの1年間で一層の努力を重ねたのだろう。セットや小道具もこだわり抜かれ、青春の風景を彷彿とさせるストーリー仕立ての映像とともに、YOUNGJAEのやさしく柔らかな歌声で丁寧に紡がれた言葉を聴けば、何も語らなくてもヨルシカへのリスペクトをしっかりと感じられる、そんな作品だ。
IVEのGAEUL(ガウル)は、今年10月にあいみょんの「マリーゴールド」をカバー。この作品では彼女の特徴でもある可憐な歌声を残しつつ、あいみょんのような芯の通ったかっこいい声のエッセンスも含まれ、新たな一面でリスナーを再び虜にした。制服やラフなワンピース姿に身を包んだGAEULが、夏の鎌倉を無邪気に楽しむどこか儚げな映像は、まさに「マリーゴールド」の世界観と重なるものに仕上がっている。GAEULは昨夏、書店で日本語の本を買って勉強しようと意気込んでいる様子をVLOGで表明していた(※2)。その1年後、彼女がこうして努力の結晶である日本語曲を丸々1曲プレゼントしてくれたことは、ファンを大いに感動させただろう。
NewJeansのHANNI(ハニ)は、今年8月19日放送の『CDTV LIVE! LIVE!』(TBS系)で、TUBE「シーズン・イン・ザ・サン」をパフォーマンスした。HANNIといえば、NewJeansのファンミーティング『NewJeans Fan Meeting 'Bunnies Camp 2024 Tokyo Dome'』で松田聖子の「青い珊瑚礁」を披露した動画がネットで大拡散され、X(旧Twitter)でトレンド入りしただけでなく、一時は韓国主要音楽チャート「Melon」の検索ランキング1位を記録するほど、国を跨いで大きな話題を呼んでいた。本映像では、スタンドマイクの前で弾けるようにリズムに乗って、原曲からキーを変えて歌い上げるHANNIの姿が見られるが、TUBEの夏歌の魅力をしっかりと残しつつ、発売から約40年が経ったこの時代にHANNI流に生まれ変わったポップな「シーズン・イン・ザ・サン」を堪能することで、若い世代にも本楽曲が認知されるきっかけとなったのではないかと思う。
こうしたJ-POPカバーは、普段のグループのコンセプトや音楽性から離れてアーティスト本人の嗜好に触れ、J-POPの良さ、アーティスト自身の歌い方や声を新たな角度から堪能できる機会にもなる。なんと言っても、生まれた場所や言語が違うアイドルが日本語の歌詞を歌ってくれることでいつも以上に歌声のあたたかさが沁み渡り、感動を生むのだろう。我々が普段目にする彼らは、豪華な衣装に包まれて美しいヘアメイクを施し、大きなセットで彩られたステージに立って歌い踊っている“スター”だ。しかし、ラフなヘアセットと私服のような装いで登場したり、映像には日本らしさを感じさせるエモーショナルな場面描写を取り入れたりと、“日常感”あふれるクリエイティブと合わせて楽しむことで、いつもとは違った一面を感じつつ、あらためてアーティストの魅力に触れることができるのがカバー動画の見どころではないだろうか。何度も見返して、色々な工夫や魅力を再発見するのもJ-POPカバー動画のひとつの楽しみ方かもしれない。
※1:https://realsound.jp/2024/01/post-1553366.html※2:https://youtu.be/2Zrcj0x7WPk?si=jy42zwx3T_-_tB_f
(文=風間珠妃)
