指揮官は「ミニ・カンテ」と期待。STVV藤田譲瑠チマがベルギーで成功するには?「分かりやすいのは遠藤航さんみたいに...」
東京ヴェルディのアカデミー育ちの彼は、2019年にトップ昇格を果たすと、21年に徳島ヴォルティスへ赴き、J2からJ1へ個人昇格。さらに翌22年には横浜F・マリノスへ移籍。J1タイトル獲得に貢献すると同時に、同年7月のE-1選手権で日本代表デビューを飾り、大きな飛躍を遂げた。
「海外移籍に関しては、ヴェルディでプロになった頃から強く意識していました。『25〜26歳で、イングランド・プレミアリーグでプレーする』というのが、僕の前々からの目標で、『自分が追い求めるものは海外にしかない』と言ってもいいくらい、もともと海外志向が強かったんです。
でもヴェルディ時代はチャンスがなく、徳島、マリノスと移籍しましたけど、どんどん時間が過ぎていくに連れて、『早く海外に行かないといけない』という危機感が強まっていました。そんな時にシント=トロイデンから誘ってもらった。ベルギーから欧州5大リーグに移籍する選手も多いし、迷うことなく決断しました」と、藤田は移籍の経緯を明かした。
ご存じの通り、同クラブからは遠藤航(リバプール)、鎌田大地(ラツィオ)、冨安健洋(アーセナル)の3人が大きな飛躍を遂げている。その成功例に続きたいという思いは、今夏加入組の全員が抱いているはずだ。
ただ、藤田は「自分もすんなりルートに乗れる」と楽観視はしていない。新たな環境に適応し、実力を発揮し、チームを勝たせられる存在にならなければ始まらないと分かっているのだ。
「僕が励みにしているのは、マリノスの先輩の岩田智輝選手(セルティック)ですね。岩田君は練習、試合はもちろんのこと、常日頃から練習以外のところでも本当に努力していましたし、地道な努力を積み重ねてJリーグMVPになり、海外まで上り詰めた人だと尊敬しています。僕も天才系ではないので、同じように頑張っていくしかない。そういう覚悟を持ってベルギーに来ました」
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7月末に移籍が正式決定したが、労働ビザ取得に少し時間を要したため、8月に入ってから本格的にチームに合流した藤田。今季の同クラブは3−4−3をベースにしており、彼は伊藤涼太郎や山本理仁もいる中盤の競争に参戦することになった。
「まずスタートが遅れた分、戦術理解でも遅れを取っているので、より個人的な能力を証明しないといけないと考えて臨みました。
ベルギーに来て、まず感じたのは、パスカットが結構できること。読みや動き出しは通用するなと前向きな感触を得ました。
逆に課題なのは、言葉による意思疎通。周りの選手との距離感や立ち位置などを上手く伝えられなかったり、細かい指示ができなかったりする。自分は中盤なので、周りとの関係性を密にしていかないといけない立場にいる。
でも簡単な英語で言っても本当に伝わっているかどうか半信半疑なところもありますし、そのあたりは難しさを感じます」と藤田は神妙な面持ちで言う。
仮に言葉が通じて、コミュニケーションができたとしても、ベルギーでプレーする外国人選手たちはその通りにプレーしなかったり、強引にシュートを選択するケースも少なくない。「自分が結果を出して成り上がる」という考え方をする選手が圧倒的に多いリーグなのだから、やむを得ない部分もあるだろう。
藤田自身もそういう環境だと割り切って、対処法を考えるようになったという。
「日本だったら、みんなチーム第一でプレーしますけど、ベルギーでは必ずしもそうじゃない。ギャップは感じますけど、いちいち気にしていたらキリがない。『みんなエゴを出すのが当たり前なんだ』と思えれば、こっちのほうがシュートの跳ね返りを予測したり、セカンドボールをどう拾うかを考えるようになる。そういう準備や対応は日本にいた頃よりかなり意識するようになりました」と、彼は彼なりの努力をしているようだ。
ここまで8月20日のヘント戦、同27日のサークル・ブルージュ戦(いずれも先発)、9月17日のメヘレン戦、同24日のヘンク戦(いずれも途中出場)の4試合に出ているが、フィンク監督が藤田を必要とするのは、守備的な状況の時が多い。
指揮官は藤田の加入時に「ミニ・カンテ」と評したというが、エンゴロ・カンテ(チェルシー)のように中盤でのボール奪取や、アグレッシブな守備を高く評価しているからこそ、守りの時間帯に重用しているのだろう。
「まだ試合数が少ないので、僕自身、自分の立ち位置がよく分からないんですけど、監督からは『とにかくボールを取ってくれ』とデビュー戦の前に言われましたね。でもまだ個人面談的なことはしていません。
マリノス時代はポジションごとに映像を見て分析する時間がありましたけど、今はそういうのもないので、自分なりに戦術を理解し、何をすべきかを考えていくしかない。9月以降はその作業により注力していきたいなと思っています」と、藤田はやるべきことを明確にしつつあるという。
だからと言って、藤田が攻撃センスに劣る選手ということではない。実際、昨年のE-1選手権の韓国戦では長短の小気味良いパス出しで日本の中盤をコントロールするなど敵を圧倒した。
高度なパスセンスやゲームメイク力で見る者の度肝を抜いている。そういう人材だけに、今後は攻撃の起点としても期待ができそうだ。
「今は攻撃のギアを上げたい状況では、理仁が使われることが多いですが、僕もコンスタントに試合に出るためには、いろんな仕事ができないといけないと感じています。
ボランチの選手がベルギーで成功したいと思うなら、分かりやすいのは、遠藤航さんみたいに明確な数字を出すことかな、と。それがステップアップに一番近いのかなと感じます。そのためにも、もっとたくさんの試合に出ないといけない。
ピッチに立たないと何も始まらないですし、出ないと成長速度も遅くなってしまう。練習からしっかりアピールして、チャンスを掴み取れるようにしたいです」
長年の夢だった海外挑戦の第一歩を踏み出し、着実に前進しつつある藤田。彼の本当の勝負はここからだ。
※第1回終了(全3回)
取材・文●元川悦子(フリーライター)
