タフなJ3を勝ち抜くためのポイントは? いわてを率いる松原良香のビジョンは明確。理想と現実をどうすり合わせていくか
しかも、北は八戸から南は沖縄まで幅広いエリアにクラブが点在するため、移動負担は上のカテゴリーとは比べ物にならないほど大きい。こうした環境・地理的条件を制することも、J3というタフなリーグ勝ち抜くための大きなポイントとなってくる。
そのあたりは、いわてグルージャ盛岡の松原良香監督も重視する点だ。
これから夏場になれば、その傾向はより強まるでしょう。食事のタイミングや内容、水分摂取など様々な対策を講じていくことが必要不可欠ですが、それ以上に選手改革が大事。『暑いなかでもタフに走れる』『運動量で敵を凌駕できる』というマインドを持てるように、日々のトレーニングから意識づけをしていくことが重要になってくると思います」と、松原監督は強調する。
選手層が分厚くなれば、過酷な夏場も余裕を持って戦えるようになる。それも指揮官が取り組んでいる部分だ。現時点では20人くらいのメンバーで回している状況だが、若い選手を伸ばし、戦力として計算できるようになれば、もっと余裕が出てくるはずだ。
「4月になって右サイドバックの石田峻真が怪我をしたので、そこで宮市剛を起用したところ、良いハードワークを見せてくれましたが、選手個々にはそれぞれポテンシャルがある。それを引き出しつつ、チームとして常にアグレッシブにインテンシティの高い状態で戦い続けられるようにするのが自分の仕事なんです。
今後、コンディションが整わなかったり、怪我人も出るでしょうけど、それで戦えないというのでは、どうしようもない。みんなにチャンスを与えながら、レベルアップしていければ理想的。それが順位を上げるカギになると思います」
そのうえで、コンスタントに得点を取っていくことが肝要だ。目下、いわての得点源となっているのは、3ゴールの和田昌士と宮市、2得点のクリスチアーノだが、アタッカー陣の決定力はまだまだ物足りないと指揮官は考えている。
「昇格できるクラブには必ずと言っていいほどセンターフォワードの得点源がいる。昨季のいわきにも有田稜がいました。でも今のウチはクリスチアーノがまだ2点ですし、ドウグラス・オリヴェイラは無得点。そこを何としても引き上げていく必要があります。
彼らは試合でも良いポジションが取れるようになってきていますし、鋭いタイミングでゴール前に入っていますが、結果に結びついていない。流れのなかで点を取るパターンをトレーニングしていますが、一つ決めれば形となり自信が持てる。そうなるように全体練習後の自主トレでもこだわって指導しています。
僕もかつてフォワードでしたし、筑波大学大学院でフォワードの論文も書いた。その経験も活かして、点の取れるフォワードを早く作りたいですね」
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そして松原監督がもう1つ、躍進のポイントとして挙げるのは、ボールを保持するか、縦に速く展開するかの使い分けだ。今季のJリーグを見ると、J1の上位争いをしているヴィッセル神戸、名古屋グランパス、J2をけん引しているFC町田ゼルビアを筆頭に、手数をかけず縦に速く攻めていくスタイルのチームが目立つ。
昨季までエース解説者だった松原監督も、その傾向をしっかりと認識したうえで、遅攻も織り交ぜながら、より効果的な攻撃を組み立てていこうと模索を続けている。
「ボールを奪ってから縦に速いサッカーというのが、今のJの主流になっているのはよく分かっています。でも中山(雅史=沼津監督)さんがやろうとしているように、主導権を握るスタイルも必要。その使い分けを選手たちが掴んだら、いわては絶対に優勝できると思います」
走力、選手層、決定力、スタイルの使い分けといったポイントに注力しつつ、貪欲に高みを目ざす松原監督。彼自身のビジョンは明確だ。あとはそれを選手に理解させ、ピッチ上で表現してもらう作業をどう進めていくかだ。
そこは指揮官の経験が少ない分、やはり試行錯誤の連続に違いないが、少しずつ成果が出てきたという実感も持てている様子だ。
「理想と現実をどうすり合わせていくか。それはどの監督も悩むところなんです。その作業を早く進めるためにも、コーチやスタッフと描いている絵を共有し、チーム一丸となり、応援してくれている人々の心に響いているのかが肝心なんです。
監督業というのは本当に1人ではできない。みんなの協力があってこそ成り立つんだと、いわてに来て実感しています。彼らの努力に報いるためにも、勝利という結果を積み上げ、J3優勝という目標を達成するしかない。
責任の重い仕事ですが、何とかやり遂げられるようにベストを尽くしたい。いつか自分が去った時に、このクラブに確固たる土台が残るような仕事をしていきたいと思っています」
松原監督が率いる、いわてがどのような軌跡を辿るのか。彼らは今季J3を席巻できるのか。ここからの戦いから目が離せない。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
