トヨタの高級ミニバン「アルファード」なぜ人気? 売れすぎ高級ミニバンに弱点はある?

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どんなシーンでも似合う高級感がポイント!

 現在、ミニバンのなかでも絶大な支持を得ているのがトヨタの高級ミニバン「アルファード」です。

 3代目となる現行型は2015年に登場。2017年のマイナーチェンジでより迫力のフロントグリルへとデザイン変更してさらに人気を高め、基本設計は7年前の設計であっても、現在も新車全体の登録車ランキングは8位(2022年4月から9月)にランクイン。

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 ほかのミニバンがモデルチェンジで新しくなるなか、すでに7年経過したモデルでありながら、しかも359万7000円から775万2000円(消費税込)という高額なミニバンがこれだけ売れている理由は何でしょうか。

高級ミニバンの王者的存在となったトヨタ「アルファード

 そんなアルファードを選ぶ理由や、乗ってみたからこそ分かるメリットやデメリットなどを実際のオーナーに聞いてみました。

 生花業を営むSさん(愛知県・40代)は、プライベートだけでなく仕事でも使うことを想定してアルファードの3.5リッターモデルを購入しました。

「あまり輸入車に手を出しにくい土地柄や職業柄もあって国産車しか乗ってこなかったのですが、経営者とはいっても営業も兼ねているので、荷物や取引先のお客様を乗せることもあります。

 そんなとき、後席が広くて快適であることや、荷物を積んでも長距離移動が楽なパワーが十分にあること、生花の生産現場からシティホテルの車寄せまでさまざまなシーンでも使用することを考慮してアルファードを選びました」

 また、趣味の道具(サーフィンのロングボード)を積める広さも欲しかったそうで、その結果、アルファードに落ち着いたのだとか。

 Sさんいわく、アルファードは、その存在感や高級感でどんなシーンでも経営者として恥ずかしくないステータスを感じることができるといいます。

 3.5リッターモデルを選んだのも、全長4950mm×全幅1850mm×全高1935mmで約2tもの大柄なボディに適応できるパワーが必要だったとのこと。301馬力/361Nmというハイパワーなアルファードは高速巡航もしやすいそうです。

 その反面、この大きなボディはデメリットにもなっているのだとか。

「やはり細かい取り回しには苦労します。また3.5リッターエンジンはハイオク仕様なうえに燃費もあまり良いとはいえないので(カタログ数値9.9km/L・WLTCモード)、円安で原油高の現在は、やはりコストがかかります。

 ただ、お客さまをもてなすという意味では非常に良い選択肢だと思っています」(アルファードオーナー Sさん)

 また、レザーシートを選んだお陰で車内はラグジュアリーな雰囲気たっぷり。ただラグジュアリー過ぎて趣味であるサーフボードを積むのに躊躇してしまい、別のクルマでサーフィンに出かけるようになってしまっているのだそうです。

 ほかに特徴としては、高いポジションからの視界で周囲を見渡しやすい代わりに後方の視界はあまり良くないことが挙げられます(そのためにバックカメラを装着)。

 前述のように高速巡航も楽で得意ですが、重い車重のためブレーキの効きが甘く感じる(制動距離が長い)ことなど、メリットとデメリットがセットになっているようです。

 それでも3列目シートまでしっかり座れることや、多人数乗車でも十分なラゲッジスペースを確保していたり、衝突被害軽減ブレーキやレーダークルーズコントロールなど運転支援システムや安全装備なども充実しているところが気に入っているといいます。

「これ1台で様々なシーンに対応できるというのは大きな魅力だと思います。

 売れ過ぎて街でも同じクルマをたくさん見かけるので個性的とはいえませんが、逆に完成度が高いからこそ人気車種になっているのでしょう。

 しばらく乗り換える必要はないと思っています」(アルファードオーナー Sさん)

エルグランドに対抗すべく、トヨタがアルファードを投入

 アルファードとはどのようなミニバンなのでしょうか。

 同車の誕生以前、トヨタは欧州向け「ハイエース」ベースの大型ミニバンとして1995年に「グランビア」を発売した後、5ナンバーモデルとなる「ハイエースレジアス」をラインナップしていました。

 装備も豪華なミニバンでしたが、見た目が落ち着いたデザインだったためか、それほど大ヒットとはなりませんでした。

トヨタ「アルファード

 そんなミニバン界に革命を起こしたのが、1997年に登場した日産「エルグランド」です。商用車っぽさを感じさせたそれまでのミニバンとは異なり、押し出しの強いフロントマスクと豪華で快適なインテリアの組み合わせで、「高級ミニバン」という新たなジャンルを切り開き、大ヒットモデルとなりました。

 そこでトヨタは、FRのエルグランドに対抗すべく、「エスティマ」をベースにスペース効率に優れるFFの高級ミニバンとしてアルファードを開発。2002年の2代目エルグランド登場に合わせて、初代アルファードが投入されました。

 エルグランドが3.5リッターV型6気筒エンジンを搭載するのに対し(のちに2.5リッター V型6気筒エンジン追加)、アルファードは2.4リッター直列4気筒、3リッターV型6気筒という2種類を搭載。税金や維持費が安価で済むグレードも最初からラインナップしたのです。

 FFと箱型のデザインでスペース効率に優れ、さらに1900mmを超える全高によって室内空間の広さが特徴となったアルファードは一躍人気モデルとなりました。

 2008年にはプラットフォームを一新し2代目へとモデルチェンジ。全高は45mm下がりましたが、それでも1900mm超の全高や高い位置から周囲を見下ろす独特のシートポジションは継続しています。

 そして2015年に現行型となる3代目へ進化。コンセプトは「大空間高級サルーン」とし、リアサスペンションも従来のトーションビームからダブルウィッシュボーンとなって乗り心地も大幅に改善されました。

 またパワートレインは、維持費に優れる2.5リッター直列4気筒と同ハイブリッド、ハイパワーな3.5リッターV型6気筒をラインナップ。ハイブリッドには後輪がモーター駆動となる「E-Four」など4WDも用意されています。

 「クラウン」など高級サルーンでラグジュアリーなインテリアと乗り心地を知り尽くしたトヨタが、ハイエースなどで培ったミニバン技術と組み合わせたのですから、この高級ミニバン路線のヒットは当然の結果だったのかもしれません。

 今までのミニバン同様に多人数乗車もできるけれど、あえて贅沢な内装とキャプテンシートのスペースなどを広く確保し快適性を大幅に向上させた贅沢仕様にしたことで、「ミニバンの形をした高級サルーン」という戦略が市場のニーズとうまく噛み合ったということでしょう。

 また、それまで大企業の社用車需要で人気のあったクラウンからアルファードに乗り換えるケースが多いのもその証拠です。

 腰をかがめて乗り込むセダンと比べ、走る応接室のような豪華なインテリアのアルファードは、「いつかはクラウン」といわれた憧れの存在に近く、今なら「いつかはアルファード」と思っている人も多いのではないでしょうか。

※ ※ ※

 アルファードの魅力は、迫力あるボディやデザインに圧倒的な存在感といったところにあるといえそうです。

 セダンやスポーツカーのような俊敏な走行性能よりも、快適性や高級感を優先する人には良い選択肢でしょうし、国産のミニバンとしての最高峰という部分も所有欲を十分に満たしてくれるはず。

 贅沢な移動空間として価値は非常に高いと評価できそうです。