イギリスの公共放送局であるBBCが、ドキュメンタリー番組に出演する「香港デモに参加する活動者」の身元を隠すために、人工知能(AI)を使って活動者の顔を別の顔と差し替えていることが明らかになっています。

BBC documentary used face-swapping AI to hide protesters' identities | New Scientist

https://www.newscientist.com/article/2348197-bbc-documentary-used-face-swapping-ai-to-hide-protesters-identities/

BBC documentary used face-swapping AI to hide protesters' identities

https://brianlovin.com/hn/33734771

AIを用いて特定の人物の顔を別人の顔と入れ替える技術は「ディープフェイク」とも呼ばれています。ディープフェイクは2017年末頃から話題となり、初めはポルノ関連で多数の事例が登場。その後、ディープフェイクを用いて「著名人にあることないことを話させる」という事例が多くでるようになりました。以下のマーク・ザッカーバーグ氏が「データの支配」について語る動画もディープフェイクで作成されたもの。

ディープフェイクで人造したFacebookのザッカーバーグCEOが「データの支配」について語るムービーが話題に - GIGAZINE



さらに、ディープフェイクを用いて映画の「もしも」を実現してしまった人物も登場。あまりの合成精度の高さから、ディープフェイク映像を作成した人物はルーカスフィルムに就職することに成功しています。

ハリソン・フォードに若ソロ姿で「I know」と言わせるディープフェイク映像が登場 - GIGAZINE



近年はディープフェイクを用いて有名人を宣伝・広告に使用するという事例が相次いで報告されています。

ディープフェイクを用いて有名人を許可なく宣伝・広告映像に用いる事例が続々登場 - GIGAZINE



そして、BBCのドキュメンタリー番組である「Hong Kong’s Fight for Freedom(香港の自由のための戦い)」でも、AIを用いた顔を入れ替える技術が活用されていると報じられています。

ドキュメンタリー番組では、香港で反政府抗議デモに参加した人々にインタビューを行っています。インタビューに応じてくれた活動家の身元を守るため、製作者はAIを用いて活動者の顔を俳優の顔と入れ替えたそうです。製作者は「AIを用いて顔を入れ替えることで、活動者を迫害から守りながら、活動者の癖や表情をリアルに伝えることで、彼らの感情を正確に伝えることができる」と語っています。



なお、「Hong Kong’s Fight for Freedom」はBBCの提供するインターネット経由でテレビ番組を視聴できるサービス「BBC iPlayer」で視聴可能。ただし、BBC iPlayerはイギリスからのみ使用できるサービスとなっているため、日本からの視聴はできません。

BBC iPlayer - Hong Kong’s Fight for Freedom - Series 1: Episode 1

https://www.bbc.co.uk/iplayer/episode/m001f7t5/hong-kongs-fight-for-freedom-series-1-episode-1