今季初出場でいきなり完封!パリ五輪世代の 柏GK佐々木雅士が“偉大な先輩”キム・スンギュから得た学び「差を埋めていく必要がある」
突然巡ってきた出場機会にも動じない。開始早々に試合の流れを引き寄せるビックセーブを見せられたのは、日々の積み重ねがあったからだろう。
5月21日に行なわれたJ1リーグ第14節のFC東京戦。柏レイソルのスターティングメンバーに守護神キム・スンギュの名は記されていなかった。
「キム・スンギュはゲームに向けて準備をしていたが、コンディション不良で今回のゲームには帯同していない」(ネルシーニョ監督)
今季、ルヴァンカップでは出場機会を得ていたが、リーグ戦では初出場。試合勘も含めて準備が難しいなかで迎えた一戦で、開始2分にいきなり見せ場が訪れた。
自陣でボールを失いカウンターを浴びると、至近距離でFC東京のMF安部柊斗にシュートを放たれる。決して簡単に処理できるようなシュートではなかったが、最後までボールから目を切らずに左足一本でピンチを阻止した。
試合が始まって120秒足らず。早い段階で失点をすれば、試合運びが難しくなり、選手たちのメンタルにも影響を及ぼす。だが、逆に防げれば、相手に精神的なダメージを与えられる。
「キックオフの直後に決定的なチャンスがあった。あれを決めていれば、また別の試合展開になっていたと思う」とはFC東京アルベル監督の言葉。敵将が悔やんだ通り、佐々木のプレーが勝負の行方を左右したと言えるだろう。
最初のプレーで自身も流れを掴んだ佐々木は、その後も安定したパフォーマンスで最終ラインを支えていく。とりわけ素晴らしかったのが、DFの背後にできたスペースのケアだ。
3バックの立ち位置に合わせてポジショニングを変え、DFの裏に蹴られたボールは状況に応じて自ら処理。印象的だったのが、54分のプレーだ。FC東京のDF森重真人が前線へロングフィードを蹴り込むと、MF松木玖生が反応。最終ラインの背後に猛然とスプリントしてきた。しかし、佐々木は迷わずペナルティエリア外に飛び出し、ヘディングでボールを外にクリアする。一歩間違えば失点になる場面でも勇敢に飛び出し、ピンチの芽を未然に刈り取った。
今季初のリーグ戦出場となったゲームを無失点で終えた佐々木。プロ2年目の今シーズンも昨季に続いてセカンドGKとして準備をしつつ、ルヴァン杯などで経験を積み重ねている。
試合経験を継続的には積めていないが、ベンチに座っていても学ぶことは多い。とくに韓国代表として国際Aマッチに50試合に出場しているキム・スンギュが側にいるのは大きな意味がある。
3月下旬に行なわれたU−21日本代表のドバイカップで、佐々木はキム・スンギュからの学びについてこう話していた。
「スンギュさんから感じるのは、プレースピードの速さ、ポジション移動のスピード、一個一個のプレーに対しての質の高さ。去年から自分自身も(学んで)すごく変わっている部分だけど、試合に出られていないのはそこに差があるから。スンギュさんとの差を埋めていく必要があるし、自分にしか出せないものをもっと出して監督にアピールしていかないといけない」
目の前にいるお手本とすべき存在。今はまだ越えられていない壁だが、キム・スンギュからの学びがFC東京戦の好プレーに繋がった。
クラブでの取り組みはパリ五輪を目指すU−21日本代表でのパフォーマンスにも結びついている。先発出場を果たしたドバイカップ決勝のU−23サウジアラビア戦(〇1−0)で無失点に抑えて優勝に貢献できたのも、日々の積み重ねがあったからこそだ。
「クラブで試合に出られないのは、シンプルに自分に実力がないだけ」と謙虚に話す成長株は、現状に満足していない。さらなる成長を目指して偉大な先輩の背中を追い掛ける。
取材・文●松尾祐希(フリーライター)
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