ミュンヘン五輪100m平泳ぎ金メダリストの田口信教氏(時事通信フォト)

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 東京五輪をめぐっては世論も「予定通り来夏開催」と「中止」で割れている。日本にとって最良の決断とは何なのか。ミュンヘン五輪100m平泳ぎ金メダリストの田口信教氏(69)は次のように考える。

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 来年7月に開催すべきだと思います。私はメキシコ(1968年)、ミュンヘン(1972年)、モントリオール(1976年)と3度五輪に出場し、ミュンヘンでは平泳ぎ100mで金、200mで銅を獲得しました。体で敵わない外国人選手に対抗するためペース配分やキックなどを研究した結果です。選手にとって五輪はレベルアップのチャンス。開催して貴重な経験にしてほしい。

 最近は“コロナ警察”と呼ばれる方も多く、開催すれば一部からの批判は避けられないでしょう。ただし、大きなスポーツ大会には批判がつきものです。

 かつて水泳の日本選手権はプールを4日間貸切にしていたので「プールを独占するな」と抗議する団体もありました。マラソン大会で道路を封鎖するとクレームが来ます。

 批判や責任問題を怖がって中止にすれば経済被害を拡大させるだけです。入場制限や予防設備などの手段を可能な限り講じて開催の道を模索すべきです。

 ただし、再延期や中止になればピークを過ぎてしまう、引退に追い込まれるなど選手側の事情で開催すべきだと言うつもりはない。競泳の瀬戸大也選手が「延期で練習に身が入らない」と話していましたが、それは甘えでしかありません。

 そもそもアスリート人生というのは「運」に大きく左右される。私もモントリオール五輪予選で日本記録を塗り替えながら、準決勝でフライングに動揺して決勝に進めない不運があった。

 現役選手には、置かれた状況の中でベストを尽くしてほしい。

【PROFILE】たぐち・のぶたか/元競泳選手。1972年ミュンヘン五輪100m平泳ぎの金メダルリスト、同大会200m平泳ぎの銅メダリスト。

※週刊ポスト2020年8月28日号