チュートリアル徳井「脱税」母が語った「あの子はお金に無頓着で…」 税金を7年も納めなかった男の罪と罰 

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単なる不倫や反社との交遊とはワケが違う。多数のレギュラー番組を抱え、幅広い分野で活躍しながら、密かに巨額の「税逃れ」を行っていたのだから。だが、この事件も序章に過ぎない可能性がある。

母親にかけた電話

「こんなことがあって、私も主人も驚いているんです。昔から(徳井)義実はおカネに関しては無頓着で、ルーズな子なんです。

私が色々と立て替えたおカネをなかなか返してくれなかったこともありました。『返すよ』とは言うんです。私から何回も何回も言って、ようやく返してくれたのを覚えています。

今回のニュースが流れた後、義実と少し電話で話しました。『僕はホンマにアホやった。誰のせいでもなくて、僕が悪かったんや』としきりに言っていました」

京都市左京区にある自宅前で、お笑いコンビ「チュートリアル」の徳井義実(44歳)の母親は本誌記者にそう語った。

「闇営業」問題に続き、またしても吉本興業に大事件が発覚した。東京国税局より、徳井が7年間で計約1億3800万円の申告漏れなどを指摘されたことがバレたのだ。

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徳井は'09年に「チューリップ」という個人事務所を設立。吉本からのテレビやラジオなどの出演料を、チューリップを通して受け取っていた。

'12〜'15年の4年間、徳井の個人的な旅行費用やアクセサリー代、洋服代などを会社の経費として計上していた。この約2000万円が所得隠し(故意に課税額を減らそうとする行為のこと)とされた。

加えて、'16〜'18年の3年間にいたっては、所得を一切申告していなかった。この約1億1800万円については申告漏れだと指摘された。追徴税額は重加算税などを含め、約3700万円にのぼる。

つまり徳井は計7年間にわたって正しく税金を納めていなかったのである。

納得できない言い訳

『国税記者』などの著書がある、ジャーナリストの田中周紀氏が話す。

「今回の徳井氏の件では、世田谷税務署が動いています。話自体は非常にシンプルな節税対策です。吉本から彼個人がギャラを受け取ると、所得税率は最高45%と高くなりますが、会社で受け取れば、法人税率となって最高で23.2%とグッと低くなる。

基本的に国税は3年、5年、7年といった単位で物事を調べたり、考えたりする傾向があります。徳井氏の個人事務所が3年間申告をしていないのを、おかしいと察知したことがキッカケになったのでしょう」

徳井の母親はこう話す。

「会社を設立したのは節税のためやと思いますけど、離れて暮らしているので、最初は会社を作ったのも私たちは知らなかったんです。

信頼できる人に会社の会計を頼んだほうがよかったんでしょうね。以前は娘が東京で働いていたので、娘が義実の会社の会計をしようとしてたこともあったんですが……」

徳井はテレビ各局で10本以上のレギュラー番組を持つ、売れっ子中の売れっ子だ。活躍の幅は広く、11月3日からはNHK大河ドラマ『いだてん』にも、「東洋の魔女」と呼ばれた女子バレーボール日本代表の監督役で出演予定だった。

徳井は会見で、今回の「税逃れ」を、自身の「ルーズさ」「甘さ」「怠慢」によるものだと繰り返した。だが、その言い訳はどれも納得できないものばかりだ。

元東京国税局査察部査察官で税理士の上田二郎氏が語る。

「無申告というのは、税務署はその収入もわからなければ、経費の実態もわからない。一度も申告していなければ、事業者の存在自体を把握することさえ、できない場合もある。

申告納税制度に反する行為であり、税務調査が非常に難しいのです。元査察官の立場から見れば、非常に悪質なケースと言わざるを得ません」

矛盾する発言

徳井は、納税についての意識が甘かったと主張し、あくまで「素人」のミスであることを強調した。しかし、徳井は'14年8月、自身のラジオ番組でいずれは海外への移住を考えていると明かし、こう語っている。

「シンガポールは近代都市やから、法人税がすごい安い」

「ドバイは税金というものが一切ない。所得税、法人税、消費税、なにもいらんのよ」

どうだろうか。これらの発言からは税制についての知識と強い関心が窺えないだろうか。3年間も所得を申告し忘れる人間と、同一人物とは思えないのだ。

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さらに、徳井は会見で'18年末に国税から3年間の無申告などを指摘され、初めて事の重大性に気づいたと述べた。だが、会見の翌日の10月24日、フジテレビはこう報じている。

「'18年の数年前にも'15年までの所得について無申告を指摘され、納税していたことが新たにわかった。東京国税局からの指摘を受けるまで無申告を繰り返していたとみられる」

会見翌日に、早くも発言と違う内容が流れたのだ。

この報道が事実であれば、徳井がきちんと税金を支払っていなかった期間は7年では済まない可能性もある。上田氏が語る。

「税法の隙をつく『単純な無申告』を装った悪質な税逃れが横行していて、国税は各税務署に無申告解明の専門調査官を設置して、対応しています。しかし、職員不足で十分に機能しているとは言えない状態なのです。

今回の徳井氏の税逃れは、そんな国税の実情を知る者が仕組んだスキームである可能性もあります。単にルーズだったという徳井氏の主張を鵜呑みにすることはできません」

「芸人にはこだわらなくてもいい」

10月23日の会見で、徳井は自身の進退について問われると、しおらしくこう語った。

「お客さんが『徳井が出ると気分が悪い』『お前はもう仕事をしなくていい』と判断をされたら、仕事ができなくても仕方ないと思っています」

徳井の母親も同様の意見だという。

「私はなにも芸人という仕事にこだわらなくてもいいと思ってるんです。だから、会見の後、メールで本人に『健康やったら、なにがあっても働けるから』と伝えました。義実からは『僕もそう思っている』とだけ返事がきました」

しかし事態は、単に徳井自身が芸人を辞めれば済むという甘いものではない。元国税調査官で税理士の武田秀和氏が語る。

「今後、仮にどこかに所得隠しや無申告のおカネを『溜まり』として隠していることが判明すれば、税務調査ではなく、国税局の査察部が動くことになってもおかしくありません。

今回の徳井氏の件については、引き続き国税の調査の動向を注視する必要があると思います」

国税局査察部とは、通称「マルサ」のこと。マルサが動き、悪質性があったと判断されれば、検察に告発され、逮捕・起訴される可能性も十分にある。

国への反逆行為

言うまでもなく、納税は国民の義務であり、国の根幹である。国民が税金を納めるからこそ、国は存続できる。「だらしなく」税金を納め忘れたなどという理屈を許したら、国が潰れるのだ。重加算税を払えば済むという話ではない。

まして、意図的に納税していなければ、国や国民に対する反逆行為である。単なるスキャンダルや不祥事とは同列に語れない大問題なのだ。

実際、徳井は、国税によって3年間にわたって泳がされていた可能性もある。国税が本気である以上、さらに別の芸人などへと、波及していくこともあり得る。吉本興業社員が話す。

「会社の上層部が懸念しているのは、果たして事が徳井だけで収まるかという点です。徳井は'06年のM−1グランプリで優勝した後、上京し、その後に他の芸人から税理士を紹介されたと言っている。

ということは、ウチの他の芸人も、同じ税理士の世話になっている可能性はある。その税理士が単にいい加減なのか、それとも確信犯なのかは定かではないが、いずれにせよ徳井だけで済まない恐れは十分にある」

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税務署であれ、麻取であれ、著名人のクビをあげることは、自分たちの存在意義を示す絶好の機会と考えている。

今回の徳井の事件で、個人の会社でギャラを受け取っている芸人にはいくらでも隙があることもわかった。吉本芸人たちは格好の獲物なのである。

「今年6月に吉本の闇営業問題が明るみに出て、芸人との契約の杜撰さが問題になりました。国税がこういった社会的に注目を浴びた企業をチェックするケースは多いのです。

そうすると、今後、吉本興業の他の芸人で、徳井氏と同じようなケースが出てきても不思議ではありません」(武田氏)

第二、第三の徳井が出てくる可能性は、十分にある。

「週刊現代」2019年11月2日・9日合併号より