iPhone 11にも搭載されたWi-Fi 6が「繋がらない無線LAN」を変える! 5G時代に必須となる最新の通信を分かりやすく解説
無線LAN規格の標準化団体「Wi-Fiアライアンス」は9月19日、都内にて記者発表会を開催し、新たな無線LAN規格「IEEE 802.11ax」について「Wi-Fi 6」(ワイファイ・シックス)としての認証プログラム「Wi-Fi CERTIFIED 6」を開始したことを発表しました。
みなさんはWi-Fiを使っているでしょうか。
自宅にWi-Fiルーターなどを設置して利用している人も多いかと思います。
また、スマートフォンをNTTドコモなどの移動体通信事業者(MNO)で購入すると、MNOが提供するWi-Fiスポットが利用できるので使っている人もいるでしょう。
しかし、MNOが提供するWi-Fiスポットは、混雑したり安定しなかったりと、接続されているのにスムーズに通信ができないこともあり、利用を止めたという声も多く聞かれます。
Wi-Fi 6は、そんな「繋がらないWi-Fi」のイメージを大きく変える可能性があります。

登壇するWi-Fiアライアンス テクノロジー兼エンジニアリング担当 バイスプレジデント マーク・ハング氏
●Wi-Fi 6ってなんだ?
そもそも、Wi-Fi 6やWi-Fi CERTIFIED 6とは一体何でしょうか?
Wi-Fi 6とは、
無線LANの通信規格である「IEEE 802.11ax」に対し、標準化団体であるWi-Fiアライアンスが命名している商標です。
Wi-Fi CERTIFIED 6とは、
Wi-Fi 6製品同士の互換性やセキュリティについて、最高水準を満たす製品に付けられる認証プログラムのことです。
つまり、「Wi-Fi CERTIFIED 6」のマークがある製品は安心して使用できます、という「お墨付き」なのです。

Wi-Fi CERTIFIED 6では、最新のセキュリティ技術であるWPA3への対応も必須となる
2019年9月現在、Wi-Fi 6に対応した製品は、
・Galaxy Note10(サムスン電子)
・Galaxy S10(サムスン電子)
・iPhone 11(アップル)
・iPhone 11 Pro(アップル)
・iPhone 11 Pro Max(アップル)
これらのスマートフォンと、数種類のAPルーター(Wi-Fiルーター)のみとなっています。
元となる規格であるIEEE 802.11ax自体がまだ標準化前のドラフト規格であるため、その普及は2020年以降を待つ必要があります。

9月に行われたアップルの発表会では登壇者による詳しい解説もなかった
●革新のカギを握る技術「OFDMA」
では、Wi-Fi 6は今までのWi-Fi規格と何が異なるのでしょうか。
大きく8つの特徴が挙げられます。
・MU-MIMO(マルチユーザーMIMO)
・BSSカラーリング
・8空間ストリーム
・OFDMA(直交周波数分割多元接続)
・ビームフォーミング
・1024-QAM
・160MHzチャンネル
・TWT(ターゲット・ウェイクタイム)
これらのうち、MU-MIMOや8空間ストリーミング、160MHzチャンネル、そして1024-QAMといった技術は、主に通信の高速化や通信効率の向上に大きく貢献するものです。
また、ビームフォーミングは通信の安定性や通信距離(≒通信速度の低下を抑制)に、TWTは省電力化技術として採用されています。
これらの技術の中でも、今回最も注目すべき技術が「OFDMA」です。
これまでのWi-Fi規格では、OFDM(直交周波数分割多重)方式が採用されてきました。
この2つは名称からも分かるように、非常によく似た技術です。
OFDMは、
処理が軽く、端末性能が低かった時代に多く採用されてきた方式です。
一方で、電波の利用効率があまり良くないという欠点もありました。
OFDMAは、その逆で、
電波効率が良い(≒同時に多数の通信が可能)代わりに処理が若干重く、端末性能が低いと消費電力を多く必要としていました。
しかし、時代とともに機器の性能は向上したことで状況が変わりました。
高性能なスマートフォンの普及により、
・OFDMA方式でも消費電力的に問題がなくなった
・他接続性や同時通信の必要性が高まった
これらのことが、OFDMA方式のWi-Fi 6への採用に繋がりました。

さまざまなメリットを持つOFDMA方式
OFDMAを採用している最も身近な通信技術がLTE(4G)です。
スマートフォンやフィーチャーフォンで私たちが当たり前のように使っているセルラー通信にOFDMAは採用されており、多数のユーザーが同時に基地局にアクセスしても混雑しにくい環境を構築しています。
一方、これまでのWi-Fiでは、
前述のように「表示では繋がっているのに通信できない」という状況が多く見られました。
中には「Wi-Fiは邪魔だから使わないようにOFFにしている」という人もいるほどです。
しかしWi-Fi 6はOFDMAの採用によって、不特定多数が接続する環境でも安定して接続し、LTE通信のように利用できるようになります。

駅のホットスポットなどにこそ、OFDMAは必須の技術となる
●5Gのデメリットを補完するWi-Fi 6
またWi-Fi 6は、来たる第5世代通信技術「5G」の補完技術としても大いに力を発揮すると考えられています。5Gは、高速大容量や・低遅延・多接続といった特徴を持ち、次世代のセルラー技術として大いに期待されています。
Wi-Fi 6は、その5G網のラストワンマイルの技術として非常に有望なのです。
例えばビジネスソリューションを考えた場合、
工場や作業現場に配置したすべての無線機器やIoT機器を5Gのみで構築することは現実的ではありません。
5G網は機器ごとの通信契約を必須とするため、ランニングコストが膨大に膨れ上がってしまうからです。
しかしWi-Fi 6であればランニングコストを気にすることなく任意に導入可能です。
・受信時最大約9.6Gbpsという高速通信性
・OFDMAによる多接続性とネットワークスライシングへの親和性
・TWTによる省電力性
これらの特性は、すべてが5G環境とも非常によくマッチします。
また5Gでは28GHzといった高周波数帯を主に用いるため、
・屋内浸透性が悪い(電波が届きにくい)
・電波が壁などを回り込みにくい(回折性の低さ)
・電波の直進性が高い(電波が広がりにくい)
・距離による減衰が大きい
こういったデメリットがわかっています。
Wi-Fi 6は、従来のWi-Fi 4(IEEE 802.11n)などでも利用される2.4GHz帯や5GHz帯を使用するため、上記のようなデメリットはあまりありません。
つまり、
・工場や店舗の屋外は、5G網でカバーする
・工場や店舗の屋内は、Wi-Fi 6でエリア構築する
このように5GとWi-Fi 6を組み合わせることで、両者の弱点を補完し、大きなメリットに変えることができるのです。

コンシューマからビジネスまで、Wi-Fi 6は幅広く対応できるだろう
●Wi-Fi 6対応機器、2020年末までに約16億台に
日本では2020年から5G通信の正式サービスがMNO各社より開始される予定です。
IEEE 802.11axの標準化とともに、Wi-Fi 6対応製品(Wi-Fi CERTIFIED 6製品)もまた多数発売されることになります。
新しい時代の無線規格が同じタイミングで登場することは、偶然ではありません。
Wi-Fiアライアンスでは、その認証機器台数は2020年末までに世界で約16億台になるとの予測も立てており、Wi-Fi 6が急速に普及していくことを強調していました。
現在はまだ対応端末や対応機器も少なく、利便性をすぐに感じられる状況ではありませんが、数年後には駅のホットスポットや観光施設などで、Wi-Fi 6を便利に利用できる環境が整備されていることでしょう。
執筆 秋吉 健
