「ふざけんな!」浦和の選手たちを激怒させた蔚山指揮官。一方敵地の熱量は意外なほど低く…“日韓対決”逆転劇の舞台裏
87分、ボランチの位置から抜け出したエヴェルトンが狙い澄ました一撃を蔚山現代のゴールネットに突き刺す。
浦和がアウェーの地で、3-0とリードを広げる。2試合トータルスコアは4-2。これでアウェーゴール数でも上回り、蔚山現代は3点が必要に――浦和の勝利が決定的になった。
その瞬間、雨に打たれてずぶ濡れのオールバック、大槻毅監督はゴール裏の一帯を赤く染めた興奮に沸き上がる浦和サポーターに向けて、両拳を高く突き上げて咆哮し、歓喜のガッツポーズを作った。
印象に残る映画のようなワンシーンだった。
試合当日の朝から降り出した台風発生に伴う大雨はまったく雨脚が衰えることなく、試合開始を迎えた。むしろ豪雨の激しさは増すばかり……。あらゆるものを押し流そうとするかのような豪雨。気持ちを昂らせるのも難しい。
2002年の日韓ワールドカップの会場となった4万4000人収容のスタジアムが、韓国7大都市の一つであるこの地区に、そこまで必要とされていないことは足を踏み入れると、すぐ感じられた。上層階の席はすべて蔚山現代のエンブレムなど青いシートで覆われている。しかも、かなり古びている。つまり、この試合のみならず、普段からスタンド上部が閉鎖されていることが分かる。
そういった意味でも、このカードを盛り上げたかったのかもしれない。
しかも蔚山現代は昨年も決勝トーナメント1回戦、全北現代との韓国対決で、第1戦をモノにしながら、第2戦で逆転負けを喫していた(第1戦がホーム、第2戦がアウェーだったが)。
蔚山現代の7番をつけるキム・インソンは試合前日の記者会見で、「僕たちにとって、重要な試合になる。絶対に負けられない」と決意を示していた。
さらに1998年から99年まで神戸でプレーした経験のあるキム・ドフン監督は、強気な姿勢を示した。
リップサービスだったのだろうか。『第1戦、浦和で印象に残った選手は?』という質問に対し、「特に個人で危険だという選手はいないと思っています。第1戦は良い時間も悪い時間もありましたが、そのなかで選手たちも工夫してできていました。特に背番号でお伝えするような選手はいません」と答えた。
この発言が、浦和の選手たちを奮い立たせることになった。

