太陽でも起こりうるスーパーフレア。壊滅的影響を及ぼす現象は「いつ」起こるのか

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太陽で発生した非常に強力な太陽フレアが地球に到達。通信は途絶し、電力網も寸断され、文明社会に大混乱がもたらされる……。まるでパニック映画のようですが、これは実際に起こり得るストーリーです。


コロラド大学ボルダー校に所属する野津湧太氏らの研究チームは、これまで若い恒星で発生すると考えられてきた大規模なフレア現象「スーパーフレア」が、年齢を重ねて活動が落ち着いている太陽のような恒星においても起こり得るという研究結果を発表しました。


太陽では、黒点の周辺において太陽フレアという爆発現象が起こることがあります。大規模なフレアは、太陽から大量のプラズマが放出される「コロナ質量放出」という現象をともなうこともあります。フレアは太陽だけではなく、ほかの恒星でも発生している普遍的な現象です。


ところが、NASAの宇宙望遠鏡「ケプラー」のデータから、これまで地球で観測されたフレアの数百倍から数千倍もの強さを持つスーパーフレアの存在が確認されました。今まで観測例がないわけですから、それが太陽でも起こり得るのか、起こるとしたらどれくらいの頻度で発生するのかは、全くの未知数です。


そこで野津氏らの研究チームは、欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「ガイア」やアメリカの「アパッチポイント天文台」による観測データを使い、太陽によく似た43個の恒星で発生したスーパーフレアの情報を統計的に分析。若くて活発な恒星では毎週のように発生しているスーパーフレアが、太陽のような恒星でも数千年に一度というまれな確率ながらも起こり得ることを突き止めました。


太陽フレアやコロナ質量放出は地球におけるオーロラや磁気嵐などの原因となりますが、強力な場合は通信や電力、人工衛星などに影響を及ぼすことがあります。


たとえば1989年3月には、コロナ質量放出によってカナダで大規模な停電が発生しました。1859年9月に発生した太陽フレアは欧米の電信網に大きな影響を与えており、当時黒点を観測していた天文学者にちなんでキャリントン・イベントとも呼ばれています。このときは日本を含む比較的低緯度の地域でもオーロラが観測されています。


情報化が進み、人工衛星も活用する現代社会において、これまで観測された規模の何百倍、何千倍も強力なスーパーフレアがもしも発生したら……。映画のように地球の生命の存続に関わるほどの事態には至らないとしても、人類の文明社会が混乱することは間違いありません。


「スーパーフレアはめずらしい現象であることがわかりましたが、今後100年以内に起こる可能性もあります」とコメントする野津氏。太陽におけるスーパーフレアはまれですが、いつ発生してもおかしくはないのです。発生する仕組みがまだ完全には解明されていないこともあり、太陽フレアについての研究は今後も重要なテーマと言えそうです。


 


Image credit: NASA, ESA and D. Player
https://www.colorado.edu/today/2019/06/05/superflares
文/松村武宏