【南場智子】「平成時代の経営者としての反省がある。リアルとITで世界へ」
「これまでのITは、いわばネットに閉じた社会でした。でも、この先のITの勝負はスポーツをはじめ、物理的なものが関係してきます。社会インフラも、そのひとつでしょう。モノが関係したITなら、日本にもそれなりに競争力はあります。そこに勝機を見て、大きな成功を日本市場で得られれば、次はアジアです。リアルな世界は勝ちを積み重ねることができる領域であり、チャンスなんです。インターネットとAI、ソフトウェアがインフラの世界に組み込まれます。製造業でいうコネクテッドインダストリーも同じです。すべてがインターネットとは無縁でなくなってきました」
「『コミュニティボールパーク』を街レベルに展開する構想を掲げています。観戦型スポーツに加え、ランニングやウォーキングなど市民参加型スポーツ振興と、それによる新たな人の流れの創出。市民の健康に関する活動やイベント、子どもたちの体力向上に向けた取り組みなどに市と共同で取り組みます。私たちに可能な役割があれば、積極的に担っていくことで自治体と信頼関係を強固にします」
「横浜市だけでなく、ベイスターズの2軍は横須賀だし、プロバスケットボールクラブの『ブレイブサンダース』の本拠地は川崎で、神奈川県と縁が深いんです。われわれのヘルスケアのサービスは県から補助を頂きました。タクシー配車のアプリでは、最初に神奈川県タクシー協会と先行してやらせてもらって実績を積みました。実証の場であり、最初に新しい価値を届けられる場所でもあるわけです。そうしたホームグラウンドが持てたことは、企業として、とても重要です」
“喜び”がある社会資産を
DeNAの創業者で会長の南場智子氏は、社会インフラなどのリアルな世界とITとの融合に勝機があると説く。勝つためには利益が出ないといけない。その具体的な方策は、野球以外の公共的な事業でも参考になるのではないか。
ーインフラについてお聞きします。DeNAは横浜スタジアムを子会社化し、大幅に拡張する計画を進めていますね。
「球場運営権の取得は悲願でした。ただ公共施設なので、自分たちから『売って下さい』とは、なかなか言えない。非常に良いタイミングで、地元財界の方が声をかけてくれました」
ー悲願だったのはなぜでしょう。
「プロ野球の球団運営は三位一体で成り立ちます。チームと、それを運営する企業。そして試合という場を盛り立て、ファンを喜ばせるための施設です。その施設を違う組織が運営していました。もちろん、チームに対しては十分な協力を頂いていました。でも盛り上げるための施設の使い方、施設での広告の出し方など、状況に応じて臨機応変に対応するには、部隊が分かれていたら難しい面があります。一体的な経営が必要でした」
「横浜の場合、球場は市の所有だけれど施設としての運営は横浜スタジアムという企業です。球場運営会社は黒字で、球団は赤字でした。合算してようやく黒字になります。野球ビジネス全体では利益は出ているのですが、その分配を会社同士で話し合わなければならなかった。そこに時間を使うよりも、もっとお客さんに向き合いたいと思いました。その点は旧横浜スタジアム幹部の皆さんも同じ思いでした」
ー球場のような公共インフラを企業が所有して、うまくいくのでしょうか。赤字運営の施設を税金で維持している例が少なくないと思います。
「そこはやりようです。インフラとしてスポーツ施設を運営する人に伝えたいのは、しっかりやれば利益が出るということです。中身、つまりコンテンツによって入場や広告の収入も増やせます。公共施設だから利益が出ないということはないはずです」
