【南場智子】「平成時代の経営者としての反省がある。リアルとITで世界へ」
ー具体的に何をすべきなのでしょうか?
「どれだけファンに向けてサービスを充実できるかです。お客さんは、どんなシーン、目的で来るのか。デートなのか仕事終わりの息抜きなのか。それぞれに合わせた施策で、たとえホームチームが負けてもリピートしたくなるようにする。普通のマーケティングと全く一緒です。公共事業だからと言い訳せず、スポーツと利益を切り離して考えないこと。ファンに向き合い、マーケティング用語でいうペルソナ(典型的なユーザー像)を見極めて備えます。事業として利益が出ればチームの補強にもつながります」
ー横浜のような大都市、あるいは野球のようなメジャースポーツ以外でも可能ですか。
「新潟や広島など他の都市でも成功例はあるように思います。スポーツはすべて感動があります。野球だけでなく、サッカーやバスケットボールも国民的人気があります。DeNAが川崎でバスケットボールに挑戦するのも、そのためです。野球だけではありません」
「スポーツの領域には、まだやれてないことがたくさんあります。私たちも2割程度しかできていません。例えば横浜スタジアムの客席を拡張するのは、満席でチケットが取れないからだけではないんです。ヘビーユーザー以外にすそ野を拡大するには、キャパシティーに余裕があり、ふらっと来て入れるようにした方がいい。そういう狙いです」
ー全国には遊休施設となっている公共インフラや、ダムやトンネルなど観客のいない施設もあります。維持・運営に助言できることはありますか。
「勉強不足で発言できる立場ではないですが、あくまでコンテンツから出発するのが正しい発想だと思います。顧客志向が最優先です。『AKB48』は、東京・秋葉原に余った施設があるから生まれたわけではないでしょう」
ーDeNAは今年、創業20周年だそうですが、今後、南場さんが公共インフラやリアルの世界で興味があることがあれば、お聞かせ下さい。
「時代の変化の要になる部分は、やってみたい。例えば電力が再生可能エネルギーにシフトしていき、需給によって価格がダイナミックに変動する時代が来るでしょう。横浜スタジアムでもダイナミックプライシングを導入していますが、電力もそうなるし、鉄道も利用時間によって運賃が変わったり、道路の利用方法も変わるでしょう。そういう利用者データの活用の仕方もいろいろあるのかなと思います」
「人の移動もそうです。狭い日本の道路で法律そのままに自動運転を導入するのは困難です。私は素人で全くの夢物語ですが、空があいているから使えないかなと。そうやってレイヤー(階層)を増やしてみるのが面白そう。そう思って空を見ていると、カラスが飛んでいる。あいつら何の役にも立たっていないけど、何か使えないかな。そんなことを(米ペイバルやスペースXの創業者である)イーロン・マスクが言えば、みんなが興味を持つ。でも日本のベンチャー創業者ではイマイチですね。それでも、虎視眈々と狙っています(笑)」
<プロフィール>
なんば・ともこ 1962年新潟県生まれ。1986年、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。1990年、ハーバード・ビジネス・スクールにてMBAを取得し、1996年マッキンゼーでパートナー(役員)に就任。1999年に同社を退社して株式会社ディー・エヌ・エーを設立、代表取締役社長に就任。2011年に病気療養中の夫の看病に専念するため代表取締役社長を退任。その後取締役を経て2015年横浜DeNAベイスターズオーナーに就任し、プロ野球初の女性オーナーとなった。同年に取締役会長、2017年代表取締役会長に就任(現任)。主な著書に『不格好経営』(日本経済新聞出版社)などがある。
