【小島啓民の目】早実・清宮の今後の注目ポイントは? 一流打者に見られるタイムを取る勇気
清宮は荒木大輔以来の早実ビッグルーキー
第97回・夏の全国高校野球大会が6日に開幕となり、熱気を放っています。今大会、最も注目されている選手は、1年生ながら早稲田実業(以降早実)の中軸を打つ清宮幸太郎選手でしょうね。
早実としても、荒木大輔(元ヤクルト)以来のビックルーキーではないでしょうか。荒木さんは1年生の甲子園大会で名をはせましたが、今回の清宮選手は、地方大会が始まる前から注目度が圧倒的に高く、当時を知る私からすると現段階で荒木さんを超えています。
早実は甲子園でも人気校で、チーム自体に多くのファンがいますから、更にヒートアップしそうです。早実の和泉監督は、私にとって早稲田大学の2歳年上の先輩で、捕手として活躍されていました。
選手時代から「将来は高校の指導者になる」とお話しをされていましたし、指導者になってからも色々なご苦労をされていました。
斎藤佑樹投手(日本ハム)を擁して日本一を経験された時は、私も自分のことのように嬉しくなったことを思い出します。
甲子園初戦に見る清宮の長所と弱点
明るく、かなりの熱血漢で、粘り強く選手指導を行っていかねばならない高校野球の指導者としては適任の方ではと思っています。
斎藤投手で注目された時期を経験されており、スター選手の扱い方も熟知されているので、清宮選手の育成も上手くやっていかれるでしょうし、清宮選手にとっても良い環境にあるのではないでしょうか。
さて、清宮選手ですが、初戦の今治西戦をテレビで拝見しましたが、まず体格に恵まれて、とても1年生とは思えないですね。スイングの速さも目立ちますが、大きな体格の割りに、バットコントロールが上手いです。特にインコースを打つ際の両手の使い方、特に肘を曲げてボールを捉える技術に特出する部分があります。
やや難を言えば、体格に恵まれているとは言え、まだ1年生ということもあり、下半身のスピードと強さに欠けるぐらいでしょうか。
もちろん、高校生レベルとしては十分ですが、欲を言えばということです。
リラックスした構え方は、大物ぶりを発揮していますし、投手に対する威圧感もあります。早いカウントから打っていく積極性は自信の表れであり、非常に好感が持てます。
少し高めの速い球に弱点ありかなと見受けれられましたので、速い球と低めの変化球、特にチェンジアップのような緩急を使われた時の対応をどうするのかを今後非常に楽しみにしています。
打者の対応が必要なポイント、果たして清宮は…
さて、1回戦が進んでいる甲子園ですが、打者が活躍する上で、対応していかなければならいことがあるなと思いました。甲子園の場合、スピードアップが大きなテーマとなって試合が進んでいきます。打者が打席を外して、タイム一つを取るにしても、球審から「早く打席に入るように」と促され、中々自分のリズムで打席に入ることが難しいです。
地方大会と違い、甲子園では試合進行のスピードが速く、何となく試合が流れていったというような試合後の選手による感想も多く聞きます。
「このリズムに合わせるのか」、逆に「自分の間をはかって打席に立つか」の二択になるのですが、なかなか後者を選択する勇気を出せないのが高校野球でしょう。
打者にとって、リズムは非常に大切な要素です。特にタイミングをはかる場合には、投手の投球モーションに合わせるのですが、投手の間合いにならないことに気をつけることが肝要です。
気持ちの準備が出来ていない時に、投球されると上手くタイミングを合わせることもできません。もちろん、良い結果が生まれる確率は、低くなります。野球の指導者の世界では、「投手より先に仕切れ」などという表現をされますが、要は「さあ、来い」といつでも投手のモーションに合わせる準備ができていることが大切です。イチロー選手の打席でのルーティンも正しく同様の行為です。
清宮選手なら大物ぶりを発揮して、自分の間をはかって打席に臨みそうな予感はしますが。もし、自分の間合いで打席に入れなかったら、スロープレーは駄目ですが、大事な局面では、タイムを取る勇気を持って欲しいですね。
甲子園の雰囲気に呑まれるようなキャラには見えませんが、久々の大型打者の活躍を大いに期待しています。
小島啓民●文 text by Hirotami Kojima
1964年3月3日生まれ。長崎県出身。長崎県立諫早高で三塁手として甲子園に出場。早大に進学し、社会人野球の名門・三菱重工長崎でプレー。1991年、都市対抗野球では4番打者として準優勝に貢献し、久慈賞受賞、社会人野球ベストナインに。1992年バルセロナ五輪に出場し、銅メダルを獲得。1995年〜2000年まで三菱重工長崎で監督。1999年の都市対抗野球では準優勝。日本代表チームのコーチも歴任。2000年から1年間、JOC在外研修員としてサンディエゴパドレス1Aコーチとして、コーチングを学ぶ。2010年広州アジア大会では監督で銅メダル、2013年東アジア大会では金メダル。侍ジャパンの台湾遠征時もバルセロナ五輪でチームメートだった小久保監督をヘッドコーチとして支えた。2014年韓国で開催されたアジア大会でも2大会連続で銅メダル。プロ・アマ混成の第1回21Uワールドカップでも侍ジャパンのヘッドコーチで準優勝。公式ブログ「BASEBALL PLUS(http://baseballplus.blogspot.jp/)」も野球関係者の間では人気となっている。

