スウェーデンのエース、ズラタン・イブラヒモビッチが、最後までピッチに立っていれば、スペインが2−1で勝利したこの試合の結果は、逆になっていたと僕は見ているが、ともかく、こんな非効率的なサッカーを90分間延々、見続けさせられると、彼らが、頭の悪い集団にさえ見えてくる。

 だが、前回も触れたとおり、これは日本代表が陥りがちな症状とそっくりなのだ。巧い中盤選手が中央に乱立する傾向である。スペインの不甲斐ないサッカーを嘆く権利は、本来、我々にはない。スペインの方が、日本より中盤選手の技術的に高いわけだし、同様にFWの決定力にも決定的な違いがある。スウェーデンのように華はないけれど、カチッとした4−4−2で迫ってこられると、日本はスペイン以上に哀れな姿をさらけ出すに違いない。W杯でベスト16を狙うなら、スウェーデンは勝っておきたいチームになるのだが……。

 もう一つ、僕の贔屓チームだとされているオランダには、スペイン以上の可能性を抱かせる。このチームのマックス値はおそらく大会随一。交代選手を含め、ここまでFW陣に破壊力を備えた選手を揃えたチームも珍しい。オランダとまともに打ち合って勝てるチームは見当たらない。しかしその一方で、オランダに穴がある事もまた確かな事実だ。パンチは強烈だがガードは甘い。

 とても大味なサッカーだが、高級感も兼ね備える。フリット、ファン・バステンを擁した88年のチームと似た特徴がある。今回も当時のように、打ち勝ち続けることができるのか。それともいつものように(?)コケるのか。ただ、オランダ絡みの試合は面白いという定説は、 今回もしっかり受け継がれている。エンターテインメント性はどの試合よりも高い。そういう意味で言えば、僕はオランダのファンだといえる。どこよりも外れの少ない試合をしてくれるチームは、第3者的な立場でこのユーロを観戦している僕には、とてもありがたい存在なのである。


<関連リンク>
[第6回]スペイン代表と日本代表に同じ匂い
[第5回]日本サッカー協会も世界のトレンドを知るべきだ
[第4回]オマーン戦は60点。やっぱり夢は追えない
[第3回]監督の存在感はゼロ。選手が好きにプレーしただけ
[第2回]日本人にC・ロナウドは無理、パク・チソンを見習え!