【番長・杉山茂樹の観戦記】監督の存在感はゼロ。選手が好きにプレーしただけ
2008年05月28日10時56分 / 提供:livedoor スポーツ
日本代表 vs パラグアイ代表 (埼玉スタジアム)
日本対パラグアイ戦を一言でいうなら「最悪の試合」となる。この日の観客数は2万7998人。スタンドには半分以上空席が目立ったが、あえて欠席を決め込んだファンの、賢明な判断が光る試合だった。
ひどすぎる。つまらなさすぎる。人からお金を取って鑑賞していただく出し物として、これは大きな問題だ。こんな試合を、もう5試合続けて見せられたら、僕はサッカーファンを辞めている可能性がある。
だが、日本代表はキリンカップに優勝した。試合後、場内アナウンスは日本の優勝を絶叫口調で伝えた。瞬間、拍手は湧いた。しかし、それは盲目的な応援を続けてきたゴール裏に陣取る一部のファンのみで、スタンドには寒々しい空気の方が勝っていた。
試合後の記者会見場で抱いた感想も、これに似ていた。
「W杯3次予選に向け、良い準備ができた」。「選手は良くやった。お疲れサンと声をかけてやりたい」。
岡田サンの口からまず出てきたのは満足げなコメントで、反省は皆無に等しかった。会見が終わると、会見場には拍手が湧いた。しかしその数、5人程度のパラパラッとしたもので、拍手の大きさでは、先に会見を行ったパラグアイの監督への方が、遥かに勝っていた。
絶叫口調で日本の優勝を伝える場内アナウンス。会見場に漂うシラっとした空気を感じ取れない岡田サン。両者には似た症状を感じる。冷え込んでいる世の中とは裏腹に、相変わらずサッカーバブルの真っ直中にいるような気がする。数年前と、相も変わらぬ古い感覚の持ち主であるように見える。
場内アナウンスの場違い感は、一瞬の出来事なので、翌日には忘れ去ることができるが、岡田サンの場合はそうはいかない。時代に逆行した古いサッカーを見せられると、お先真っ暗になる。
採用した布陣は4−2−3−1だった。この4列表記だけを見れば、古い気は起きないが、サッカーの中身に数字の特性が何も反映されていないのが現実だ。気がつけば選手は真ん中へと固まり、ボールをこねくり回していた。ショートパスやバックパスをピッチの中央で繰り返し行った。
「特に前半はスペースがなかった」と岡田サンは述べたが、今どきそんな発言をする監督はいない。スペースは能動的に作り出すものであり、その突破口となるのがサイド攻撃なのだ。スペースは、バックラインの背後にだけ見いだそうとするものではない。逆サイドにもあるはずだ。右から崩そうとすれば瞬間、左は空く。そこでサイドチェンジという武器を用いれば、広大なスペースにたどり着くことができる。
だが、この試合でサイドチェンジはただの1本も決まらなかった。意識のかけらさえ感じられなかった。
布陣を選択する前に監督がしなければならないことは、戦術、戦略を固めることだ。そしてそれ以前に、監督の哲学に基づいた理念を明確にしておく必要がある。理念、戦略、戦術があって初めて採用する布陣の選択に至るのが筋なのだ。4−2−3−1を選択したなら、その背景となる理由が、明確になっている必要がある。「オレ流」というなら、とりわけだ。オシムとの決定的な違いは、説明ができない点にある。口べたならいざしらず、岡田サンはよく喋る。日本語も正確だ。これでは、理論がない。実はサッカーについてあまり詳しくないのではと疑われても仕方がない。
実際、これまで岡田サンが口にしてきたコメントの中には、エッと驚きたくなるものが数多くある。オシムは一切なかった類の違和感が、岡田サンには山ほどある。
言葉だけではない。バーレーンとのアウェー戦では、今どき考えられない3−4−1−2の布陣で臨み、日本サッカー史の汚点になりそうなみっともない敗戦を喫している。直後にこれからはオレ流でと発言したわけだが、バーレーン戦の戦いこそ、オレ流ではなかったのか。岡田サンは、過去に何度もあのような戦いをしたことがある。片や前任者のオシムにはない。一度だけ、ある試合の終盤、選手の判断で3−4−1−2で戦ったことはあるが、オシムのサッカーが、後ろで守るスタイルではないことは一目瞭然。それについての説明も自らの口から、何度も発している。
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