中国が台湾東方の海域で、公船の巡視活動を活発化させている。

 日本など関係国や地域の権益が複雑に絡み合う海域だ。一方的に緊張を高める動きは見過ごせない。

 日本とフィリピンは5月の首脳会談で、両国間の排他的経済水域(EEZ)や大陸棚の画定に向けた交渉に入ると合意した。

 これに対し、中国は、日比交渉の対象海域である台湾東方には中国のEEZも含まれるとして、「領有権と海洋権益が著しく侵害された」と反発を強めた。

 この海域では6月に入り、海上警備を行う海警局の公船が「法執行パトロール」を実施したほか、交通運輸省の巡視船や測量船などが「取り締まり」や国旗掲揚式を行った。中国公船が軍事演習以外で活動するのは異例という。

 だが、3か国以上が絡む海域の画定では、まず2国間で交渉を先行させる例は多い。日比の交渉に国際法上、何ら問題はない。

 日比両国には、中国が東・南シナ海で一方的な権利の主張や力による現状変更をやめないことに対抗し、法の支配の原則に基づいて問題を解決する姿勢を示す狙いがあったのだろう。

 それを中国が口実とし、新たな海域での権益拡大につなげようとしているのは明らかだ。

 中国の習近平政権は、台湾を武力で統一する可能性を排除していない。台湾東部から上陸作戦を行う可能性も指摘されており、今回派遣された公船は海底の測量や調査を行ったとの見方もある。

 中国は2012年に日本が沖縄県の尖閣諸島を国有化した後、海警局の公船などによる領海侵入を繰り返し、領有権の主張を強めた。南シナ海ではほぼ全域に中国の権利が及ぶと主張し、フィリピンなどへの威圧を強めている。

 今回の台湾東方海域への公船の展開も、同様の思惑があると指摘せざるを得ない。

 海域は沖縄県の与那国島にも近く、日本にとって重要な海上輸送路にある。中国が国際法上の根拠が不明確な取り締まりなどの行動を常態化させれば、日本はじめ周辺国への脅威となる。

 中国は、不測の衝突につながりかねない危険な海洋活動を厳に慎まなければならない。

 日比交渉について、中国が国連海洋法条約の原則に違反すると主張したことにはあきれる。この条約に基づく仲裁裁判所が16年に南シナ海の主権を巡る中国の主張を否定した際、判決を「紙くず」と切り捨てたのは中国自身だ。