判定に不満顔の阪神・森下翔太外野手

写真拡大

 交流戦で白熱した試合が繰り広げられている中、審判に対する風当たりが強くなっている。球審のストライク、ボール判定に不満を示す選手の姿が連日見られ、阪神の森下翔太は今月6日の楽天戦(甲子園)で、主審のストライク判定を巡り暴言を吐いたとして退場処分を言い渡された。現場の選手、首脳陣からメジャーに追随する形で自動ボール・ストライク(ABS)チャレンジ制度の導入を望む声が高まっている。

***

【写真を見る】審判と激しく揉めた監督の“目を疑う抗議シーン” 現役選手で審判から最も気に入られているのは

一球でも流れは変わる

 森下が退場処分を受けたのは5回の打席だった。左腕・早川隆久との対戦で初球の内角を突いたカットボール、3球目の外角低めのストレートがストライクと判定されると、苛立ちを隠せない。4球目のフォークで空振り三振に倒れた後、真鍋勝已球審に厳しい口調で言葉を掛けると、退場を宣告された。

判定に不満顔の阪神・森下翔太外野手

「1球目、3球目の球は共にストライクと判定されても不思議ではない。ただ、森下は以前からボールと判断した球をストライクと判定され、審判に不満な態度を見せることが少なくなかった。実際に明らかなボール球をストライクと判定されて選手が不満な表情を浮かべる光景が近年は目立つように感じます。1球の判定で試合の流れは大きく変わりますし、選手の野球人生にも影響を及ぼす。ABSチャレンジの導入を検討するべきかもしれません」(スポーツ紙デスク)

ファンからも好評

 ハイテク機器でストライク・ボールを判定するABSチャレンジは、今年からメジャーで正式に導入されている。ストライク、ボールの判定に異議があった場合は投手、捕手、打者がチャレンジを要求できる。高性能カメラで各投球の位置を打者のストライクゾーンに対して正確に追跡し、チャレンジが行われると場内ビジョン、テレビ放送ですぐに結果が表示される。各チームは1試合につき2回のチャレンジ権を持ち、成功すれば回数が減らない。

「ABSの導入以前は、『審判の威厳を傷つける』、『機械で判定されたら味気ない』など野球ファンから否定的な見方がありましたが、実際に導入されるとファンだけでなく、選手、首脳陣に好評です。正確な判定で試合が進行するので、選手たちにストレスが掛からないし、審判も映像を見て自分の判定とストライクゾーンの誤差を確認できる。誤審をした審判に批判の矛先が向けられることが懸念されましたが、SNS上で誹謗中傷が書き込まれるケースは皆無に近いです」(メジャーを取材するスポーツ紙記者)

恩恵を受けた山本由伸

 ABSチャレンジの導入で、恩恵を受けるのは制球力の良い投手だ。多彩な変化球を高度な制度で操るドジャースのエース・山本由伸はまさに代表格と言える。先発登板した5月31日のフィリーズ戦では、4回までにABSチャレンジが両軍合わせて6回連続で成功したが、この判定が試合の流れを大きく左右した。山本は初回に先頭打者のカイル・シュワーバーにカウント2―2から内角低めに投げ込むと、主審はボールと判定したが、ABSチャレンジでストライクに覆り三振に。3番のブライス・ハーパーとの対戦でも、フルカウントから外角低めのカットボールがボール判定から再びストライクに覆って三振となった。

「山本はフィリーズ戦で6回途中10奪三振無失点の快投で5勝目を挙げましたが、立ち上がりの失点が多いのが課題でした。初回のあの2球がボール判定のままで四球により走者をためていたら試合展開がガラッと変わっていたかもしれない。選手のパフォーマンスが正当に評価される観点からすると、心強いシステムと言えます」(メジャーを取材するスポーツ紙記者)

審判の技術も高まる

 実際に日本球界でプレーする選手はABSチャレンジ制度について、どう感じているだろうか。セリーグ球団でプレーする投手は、

「1日も早く導入して欲しいですね。ストライクゾーンに決まったと思った球をボールと判定されると、気持ちの切り替えが難しいしその後の投球に影響する」

 と訴える。パリーグ球団の打撃コーチも言う。

「ボールと判定されていたコースの球が、その後の試合展開でストライクとコールされるなど、球審のストライクゾーンが一定でないと感じる時が珍しくありません。審判の技術を高める意味でもABSの導入に賛成です」

審判の負荷も減らす

 審判の負荷を減らすという意味でも、大きな手助けになる。かつて審判員をしていたプロ野球OBは指摘する。

「球速が150キロを超えると瞬時にストライク、ボールを判定する難易度が一気に上がります。科学的トレーニングの発達で投手の球速、変化球のキレが急速に進化している。カットボール、ツーシームなど手元で曲がる高速の変化球について、人間の目だけでストライク、ボールの判断をするのはもう限界を迎えているように感じます。SNS上で『球審の判定が試合を台無しにした』、『誤審が多すぎるので辞めてほしい』などの書き込みを見ると胸が痛みますし、ABSの導入に反対する審判は少ないんじゃないですかね」

 NPBではピッチコム(サイン伝達の電子機器)が来季から導入される方針で、投球間に時間制限が設けられる「ピッチクロック」の導入も検討されている。ABSチャレンジ制度の導入についても、今後に機運が高まる可能性が十分にある。

 関連記事【「誤審で一睡もできず」「ネットに“仰木監督を殺した”と書かれ…」 現役プロ野球審判らが語る舞台裏、現役選手で気に入られているのは?】では、プロ野球審判員のOBが判定を巡る「秘話」を語っている。

デイリー新潮編集部