報道のあり方が問われている

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 京都府・南丹市で発生した児童遺棄事件。4月16日、死体遺棄容疑で義父が逮捕され、逮捕前には殺害をほのめかす供述もしていたという。大変痛ましい事件だが、これについて、TVのワイドショーによる報道が過剰ではないか、との声が上がっている。

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 そうした声はネットだけではなく、当の番組出演者からも指摘される事態にまで発展している。義父逮捕翌日の4月17日「大下容子ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)では、中野信子氏が「やじ馬根性を満足させるためだけのニュースだったらどうかと思う」と苦言を呈した。

 私も、そうした批判に同意する一人である。もちろん、「子供が行方不明になりました。情報提供をお願いします」という報道は当然必要だろう。だが、メディアは事件発生当初から特定の人物を怪しいと匂わせながら報道し続けたのだ。【中川淳一郎・ネットニュース編集者】

取材班を派遣しているから

 幼い子供の尊い命が奪われた重大な事件であることに異論はない。とはいえ、ニュースは他にも日々たくさん生まれている。最近はイランとアメリカの戦争を含め、国際ニュースも増大している。しかも、それらは決して対岸の火事ではなく、原油価格も含めて日本への影響も大きく、その趨勢が気がかりで仕方ない人は決して少なくないはずだ。にもかかわらず、テレビは京都の事件に時間を割き過ぎた感がある。

報道のあり方が問われている

 なぜここまで過剰な報道になってしまったのか。メディア側の事情を察すれば、「取材班を派遣しているから」、つまり経費をかけていることに加え「これまで散々報道していたから続報を伝えたい」という心情が働いているのでは、というところだろうか。

 何よりもちろん、「視聴率が取れる」もあるだろう。2019年に起きた「山梨県道志村キャンプ場女児失踪事件」も同様の状況になった。とにかくテレビがこの件を報道し過ぎたのである。この時は「子ども」「失踪」「最悪の事態も」に加え、実際は全く的外れだったわけだが、「親が関与したのでは?」との指摘もあった。

 とにかく、子どもが行方不明になった場合、同じような憶測をネット民はしたくなる。2007年に発生した「坂出3人殺害事件」でも同じことが起きた。2人の幼児たちとその祖母が亡くなったのだが、子どもたちの父親を怪しむ声は絶えなかった。だが、実際は女児の祖母の義弟にあたる人物が犯人だった。

 テレビでも、この事件に関する報道が、のちに問題化。ネットでも父親に対し謝罪する書き込みが多数寄せられた。

コメンテーターは必要なのか

 私自身現在コメンテーターの仕事をしているが、この仕事は本当に恐ろしいと感じる。なにせ、番組で憶測や感想を述べると、それが大勢の人に伝わり、世論に少なからず影響を及ぼしてしまうからだ。

 コメンテーターは出演中、「番組全体の空気を読む必要がある」「ゲストの専門家を立てなくてはいけない」「その後ネットで叩かれたらよくない」という意識が働き、とにかく無難なことを言う傾向になる。さらには、視聴者が納得しそうなことを言わなくてはいけないというプレッシャーもかかる。そうした、何重にもバイアスがかかった上で発せられるコメントが、あにはからんや、世論を作ってしまうのだ。そう考えると、冷静に以下のような疑問を呈したくなる。

 ――コメンテーターって必要ですか? メディアは淡々と事実を伝えればいいだけでは……と。

「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)では、コメンテーターの玉川徹氏が、過去には安倍晋三元首相の国葬について誤解を与える発言をし、最近でもイスラエルについて、イスラエル大使館から苦言を呈されるような事態になっている。

 コメンテーターは、専門分野とまったく関係のないことに対してもコメントをすることが求められることがある。その際、適切なコメントができるかといえば、答えはノーだ。私自身もそれはできない。

 私はネットニュース編集者として、ネットの書き込みや論調については意見ができるが、正直、イラン戦争に対しての知識はない。だが、コメンテーターは「その場にいる何らかの専門家」として、専門家風の意見をすることを求められる。これが実に危うい。京都の件についても、イランの件についても、コメンテーターは本来意見を挟むことを躊躇すべきである。もっと言うと、テレビ局は、プロ中のプロだけを出すべきだ。

「庶民感覚が必要だ!」という意見もあるかもしれない。だが、コメンテーターになるような人物はそもそも、庶民ではない。かなり成功した富裕層であり、インテリばかりだ。そうした人々がより有名になり、小銭を稼ぐためにコメンテーターの仕事をしている。その当事者である私ですら、「コメンテーターなんていらない」と思っている。

ネットニュース編集者・中川淳一郎

デイリー新潮編集部