(※写真はイメージです/PIXTA)

写真拡大

街中を颯爽と走るベンツやレクサスなどの高級車。その車重や馬力から燃費が良くない車種も多く、大きな車格は事故のリスクを高め、保険料や税金など維持費もかかる……いわゆる“贅沢品”です。では、高級車にはそれらを補って有り余るメリットがあるのでしょうか。税理士・公認会計士で税理士法人グランサーズ共同代表の黒瀧泰介氏が、税理士の観点から「高級車を所有する合理的な理由」を解説します。

高級車を買う=高度な財務戦略?

街中でメルセデス・ベンツやレクサスなどの高級車をよく見かけませんか?

こうした新車価格が1,000万円を超えるような高級車に乗っている人を見ると、「儲かっているから贅沢をしている」と思う人もいるでしょう。ですが、実はオーナーたちが買う理由は、それだけではありません。

特に経営者にとって高級車に乗ることは、会社の手元資金を最大化するための“高度な財務戦略”の一環である場合も少なくないのです。

車は「個人で購入」「法人で購入」どちらがいいのか

経営者の場合、車を個人で買うか、法人(会社名義)で買うかによって、キャッシュフローには驚くほどの差が生まれます。

たとえば個人で1,000万円の車を購入しようとする場合、元手となるのは会社から受け取る「役員報酬」であることが一般的です。しかし、この役員報酬からは所得税、住民税、社会保険料などが引かれています。

仮に役員報酬に対する個人の税率・社会保険料負担が50%だった場合、手元に1,000万円を残すためには、会社から2,000万円の報酬を受け取る必要があるというわけです。

一方、経営者が「社用車」として法人で同額の車を購入する場合は、会社の「経費」として直接支払うことになります。これは税金を計算する前の利益から差し引かれるため、会社のキャッシュアウトは額面通りの1,000万円で済みます。

つまり、個人で購入するのと比較して、実質的に「もう1台分買えるほどのお金」を節約できる可能性があるのです。

税務調査で否認されないために

ただし、法人名義であればどんな車でも経費として認められるわけではありません。

税務調査で否認されないためには、「その車が事業のために必要であること」を客観的に説明できる必要があります。

節税に適した高級車と不適切な高級車

実際、2人乗りのスポーツカーを経費にしようとした際、税務署から「この車を取引先の送迎にどう使うのですか?」と指摘されたケースがあります。2人しか乗れない車では、接待や送迎という名目には無理があるからです。

実務上、社用車として安全な選択肢となるのは、4ドアのセダンやアルファードのような車種です。また、事業との関連性を説明しやすくするために、日報などの記録をしっかり残しておくことも重要です。

また税金対策として高級車を買う場合、自社の財務状況に合わせて、最適な保有形態を選ぶことが大切です。

◆急成長企業の場合…中古車

利益の波が大きく、突発的に大きな利益が出るような企業の場合、「中古車」が最適でしょう。

特に「3年10ヵ月落ち」の中古車の場合、税金の計算上耐用年数が最短の「2年」となり、購入額を初年度で全額経費にすることが可能です。その年の税負担を一気に圧縮し、キャッシュを社内に残す効果があります。

◆安定的に収益が出ている企業の場合…新車

これは「新車」が向いています。6年かけて安定的に経費を計上するほうが資金繰りや財務のバランスがよく、また最新モデルに乗ることで企業のブランディングにも寄与するかもしれません。

◆保守的な経営者の場合…カーリース

突発的な出費を避け、管理を楽にしたい安定志向の経営者の場合、「カーリース」が向いているでしょう。車検代や税金が毎月のリース料に含まれるため、キャッシュフローの予測が立てやすくなります。

ただし、トータルの支払額は購入より割高になる傾向があるため注意が必要です。

購入時は「出口戦略」までセットで考える

続いて、車を安く購入することと同じくらい重要なのが「売却時の戦略」です。

車を購入して減価償却するだけでは、実質的には「課税を先送りしている」に過ぎません。しかし、節税のために減価償却を進めた車を売却すると、売却益が発生し、これは法人の利益として課税対象になります。

購入する段階から、この売却益をどのように処理するか、つまり売却益の「出口」を考えておくことが重要です。

節税につながる車の売却方法

よく使われる手法は下記の4つです。

1.本業が赤字になった際に売却し、利益と損失を相殺する

2.システム開発などの大きな「設備投資」を行う時期に合わせて売却する

3.役員退職金の原資にする

4.オペレーティングリースや経営セーフティ共済など、他の簿外資産に転用する

1と2は、車の売却益を損失や費用と相殺させる方法で、比較的イメージしやすいと思います。

3については、退職金は税制上の優遇措置が大きいため、法人として車の売却益を抑えつつ、個人の手元に効率よくお金を残すやり方です。

最後に4は、車を売却するタイミングで簿外資産をつくり、売却益を転用する方法です。ただし、実質的にはさらに課税を繰り延べていることになるため、この方法を選んだ場合はさらなる出口戦略が必要となります。

以上、高級車の購入は、単なる見栄や贅沢ではなく、キャッシュフローを最適化するためにも機能することがおわかりいただけたと思います。

購入時の「減価償却」と、売却時の「出口戦略」をセットで考えたうえで、自社に最適な1台を選んでみてはいかがでしょうか。

黒瀧 泰介

税理士法人グランサーズ共同代表/公認会計士・税理士