高市政権支える自民グループ「一軍」争い、「麻生派ばかりがいい思いをするのはおかしい」対抗心

写真拡大

[政治の現場]高市政権半年<5>

 今月23日、自民党本部近くのビルの一室に党所属議員が次々と入っていった。

 党内で唯一残る派閥「志公会(麻生派)」が毎週木曜日昼に開いている定例会合だ。手狭になった部屋にぎゅうぎゅう詰めで座る50人ほどを前に、会長で自民副総裁の麻生太郎(85)は「志公会は高市政権において極めて重要な役割を果たしている」とあいさつした。

 先の衆院選後、同派は新人らの入会が相次ぎ、解散時の43人から60人に膨れ上がった。派閥の拡大を見越したように、麻生は衆院選翌日の2月9日、党本部で首相の高市早苗(65)に「新人議員が一気に増える。党内をまとめなきゃなりません。政権を支える固まりが必要です」と告げていた。

 同派は副総裁に加え、幹事長、総務会長などの枢要ポストを押さえている。同派幹部は「麻生派が高市自民をトップ集団として支える『一軍』だ」と自負する。

 独り勝ちとも言える麻生派に負けじと、党内では旧派閥の枠組みをいかしたグループ化の動きが広がる。いち早く仕掛けたのが、先の衆院選で返り咲いた元総務相の武田良太(58)だ。

 3月5日夜、東京・銀座の日本料理店。引退した元幹事長の二階俊博(87)を囲むため、武田ら旧二階派議員が集った。二階側近だった元議員から継承を促された武田は「二階イズムを忘れず、仲間を大切にやっていこう」と気勢を上げた。翌月、武田が発足させた新グループ「総合安全保障研究会」には20人超が名を連ねた。

 武田は同じ福岡県を地盤とする麻生と折り合いが悪いことで知られる。武田と行動を共にする閣僚経験者は「麻生派ばかりがいい思いをするのはおかしい」と対抗心を隠さない。

 旧岸田派や旧茂木派、旧安倍派の有志もつながりを保つ。木曜日の昼に食事を共にし、情報交換する派閥の慣習に倣うグループも目立つ。参院幹事長の石井準一(68)も40人超で「自民党参院クラブ」を新設した。

 もっとも、グループの志向はかつての派閥とは異なる。トップを首相に押し上げるために結集した派閥に対し、現状のグループは高市への接近を競い合うかのような、「一軍」争いの様相を呈している。武田は「一致結束して首相を支える」と明言し、石井は「政権を支えると約束する」と強調している。

 来年9月には高市は党総裁の任期満了を迎える。総裁選への出馬を視野に入れる議員らは、一定の固まりを維持しておくことが必要になる。

 昨年10月の総裁選で高市と争った集団は結びつきが緩まないよう腐心している。旧二階派に所属した政調会長の小林鷹之(51)は武田の会への参加を断り、陣営メンバー「チームコバタカ」で会合を開き、意見交換を続けている。

 旧岸田派は、総裁選で総務相の林芳正(65)を推したベテラン中心の集団と、防衛相の小泉進次郎(45)を支持した中堅・若手らにわかれ、結束を誇示し合う。林は4月13日、旧岸田派の議員らと東京・六本木のイタリア料理店で会食した。出席者が「いつかは首相に」と声を上げると、「『次は』だ」と合いの手が入った。

 一方、高市は特定集団に依拠した足場固めに進んで動く兆しはない。

 総裁選で高市陣営の中枢を担った参院議員の山田宏(68)らが「高市グループ」の構想を練っているが、発足はずれ込んでいる。「『高市派』のようなものを作れば分断を生む」(高市周辺)との慎重論があるためだ。敵、味方の選別は対抗勢力を生むきっかけにもなりかねない。

 12日の党大会で高市は「未来をひらけるのは強い自民党だ。一緒にどこまでも強くしましょう」と呼びかけた。高市が各グループとどのような関係を築いていくのか。その行方は政権の安定を占う指標となる。(敬称略)

(この連載は、太田晶久、岡田遼介、上村健太、三沢大樹、谷口京子が担当しました)