著作権侵害訴訟を受けたXによる「DMCAの乱用」訴訟は「単なる報復行為」だとして音楽権利団体が棄却を要請

Xは2026年1月に大手音楽出版社と全米音楽出版社協会(MPA)に対し、「Xに業界全体のライセンス契約を強制するために『DMCAの武器化』をしている」と非難して独占禁止法違反の訴えを起こしました。音楽会社側はこの訴えを「根拠のない報復行為」だと主張し、連邦地方裁判所に訴訟を却下するよう申し立てを行いました。
Music Publishers Ask Court to Dismiss X's 'Weaponized DMCA' Antitrust Suit * TorrentFreak

MPAは2021年からX(当時Twitter)に対しX上の著作権違反に関する大量のDMCA削除通知を送り続け、2023年には訴訟にも発展しました。
その後、MPAとXは和解交渉を行い、2025年11月25日時点では「和解に向けて大きく前進し、書面による和解合意書の作成に取り組んでいる」として訴訟手続きの停止を求める動きも報道されていましたが、Xは2026年1月9日に「12社以上の音楽出版社とその業界団体であるMPAが、プラットフォームに業界全体のライセンスを購入させることを目的として共謀した」と主張して、MPAを提訴しました。
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Xの主張によると、MPAは2021年に当時のTwitterに対し「これまでのどの取り組みよりも大規模な削除通知を送りつけるプログラムを開始する」と脅迫した上で、実際に毎週数千件ものDMCA削除通知を送信し、合計で20万件以上の「根拠のない」DMCA通知により約5万人のユーザーのアカウントを停止させたそうです。Xはこれを「音楽業界全体のライセンス契約締結を迫るための威圧行為」であると指摘し、「著作権保護ではなく、ライセンス契約を強制するための『DMCAの武器化』」と表現しました。
音楽会社側は2026年4月2日にテキサス州北部地区連邦裁判所に訴訟却下申立書を提出しました。申立書には「2021年にMPAが送ったメール全文」も含まれており、音楽会社側は「Xの訴状はメールの一部を都合よく切り取り、言い換え、誤解しているもので、やり取り全体を見ればより複雑な事情が分かる」と指摘しています。
公開されたメールでは、MPAがDMCA通知の「大規模なプログラム」を準備していると当時のTwitterに警告し、「そのような道に進むのではなく、パートナーシップを築きたい」と付け加えています。そして最後に、「もしそのような話し合いにご興味があれば、お知らせください。そうでない場合でも、今後のプロセスにおいていつでも話し合いを始める用意があることをご理解ください」と記述しています。音楽会社側は、Xがこの部分のみを抜き出して「音楽会社全体としか交渉できない」と誤認したもので、事実に基づいた根拠があるわけではなく、独占禁止法違反の訴えを起こすことはできないと述べています。

またXは、2026年3月にアメリカの最高裁判所が電話通信会社のコックス・コミュニケーションズへの「著作権侵害の疑いのある加入者にサービスを提供し続けたという理由だけで、ISPに著作権侵害の幇助(ほうじょ)責任を負うことはできない」という判決を受けて、「著作権侵害ユーザーを意図的に見て見ぬふりをしていたためXに責任がある」としていた2024年の判決から継続している訴訟の棄却を申請しています。
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音楽会社側は、Xが独占禁止法訴訟を起こしたのはISPへの最高裁判決を受けての棄却申請と同じように、「著作権侵害訴訟における駆け引き」であると指摘しています。申立書には「独占禁止法違反の主張を裏付ける事実に基づく申し立てが乏しいのは、Xが訴訟を起こした動機が違反によるものではなく、音楽会社がXに対して起こした著作権訴訟に対する『報復と交渉力』の強化だったためだ」と記載されています。
総合して、Xは8つの訴因を挙げて音楽会社を訴えていましたが、音楽会社側は8つの訴因すべてが妥当性のない主張として、却下するよう求めています。
