「預金668億円」に多数の不動産…解散決定が下された旧統一教会の「巨額資産」はどこへ消えるのか

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韓国へ流出の懸念も

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令が決定してから3週間以上が経過した。教団は特別抗告したが、裁判所が選任した伊藤尚弁護士率いる清算人チームによる全国約450ヵ所の教団関連施設への立ち入り調査など、清算手続きが進んでいる。

教団の象徴的な施設だったのが、渋谷区松濤にある日本本部ビル(2枚目写真)だ。3月下旬、都内有数の高級住宅街に建つ″8億円本部ビル″に足を運ぶと、入り口はシャッターが降ろされていた。〈何人も清算人の許可なく本施設に立ち入ることはできません〉などと書かれた「告示書」が貼られ、建物は不気味なほど静まり返っていた――。

東京高裁決定で示された教団の資産は総額約1040億円。全国に約280ある教会の4割ほどは教団が土地・建物を直接所有すると見られ、清算人はこれら膨大な不動産を順次調査し、被害者への賠償原資の確保を進める。

都心で本部に次ぐ資産価値を持つのが東京同胞家庭教会だ。新宿駅から徒歩10分、’87年に完成した5階建てのビルで延床面積は1300平方メートル以上。その資産価値は5億円を下らない。

「UPF(天宙平和連合)や平和大使協議会など、教団の構想実現に向けて自治体や政治家に働きかけるための重要関連組織が入っており、いわば政治拠点。UPFら別法人格を持つ関連団体には活動停止処分は出ていないため、清算手続きによりビルが売却されるまでは各団体、ここで活動を続けることができます」(教団事情に詳しいジャーナリスト)

ほかにも築30年となる3階建ての建物で資産価値は3億円以上といわれる希苑家庭教会や、東京ディズニーランドと同じ舞浜駅を最寄りとし、儀式などに使う「聖塩」の生成を行っていたともいわれる一心特別教育院など、首都圏には教団名義のビルや建物が多数存在する。

なかでも異彩を放っているのが、東京都多摩市にある約1900坪の土地だ。国士舘大学多摩キャンパスに隣接し、’22年4月の取得時に筆者が現地を取材した際には、「カルト宗教による勧誘に注意」などと書かれた立て看板が散見されたが、予定されていた研修施設建設計画が実現することはなかった。4年ぶりに現地を訪れると広大な更地になっており、草木が生い茂っていた。

不動産資産の調査が進む一方で、懸念されるのは教団資産の6割以上を占める約668億円という膨大な現預金の行方だ。清算手続きによる監視の目が届かぬうちに、国外へ″逃避″させられるのではないかという懸念は消えない。

その最たる流出先が本国・韓国だ。日本から海外へ送金された資金は、’18年度から’22年度までの5年間だけで計650億円超に上り、その9割が韓国だったという。今後もさまざまな名目で本国へ資金を逃がす懸念はある。公式な送金以外にも信者が税関申告の不要な100万円以下の現金を直接韓国へ持ち込む″闇献金″も横行しており、資金流出の食い止めは困難を極める。

「じゃあお断りします」

債務弁済後に残る「残余財産」の行方も懸念材料だ。教団は関連会社の訴訟が相次いだ’09年、残余財産の移転先として北海道帯広市の宗教法人『天地正教』を指定した。

同団体は’87年に設立されたが、数年後には教団教祖の文鮮明氏を弥勒菩薩として信仰するようになり、以来、実質的な傘下組織とされている。全国統一教会被害対策弁護団事務局長の川井康雄弁護士は、教団資産が流出するリスクなどを、こう指摘する。

「清算手続きにおいて悩ましいのが『救済の迅速さ』と『救済範囲の最大化』の兼ね合いです。被害者の高齢化を考えれば一刻も早い弁済が望まれますが、手続きを急いで終わらせてしまえば、まだ声を上げていない潜在的な被害者や現役信者たちの救済が切り捨てられることになりかねません。

そうなると、本来は被害者救済に充てられるべき莫大な余剰資産が天地正教にわたり、(旧統一教会と)同様の被害の温床となる恐れも出てきます。解散命令が出ても関連団体で同様の被害が生み出されるような事態は断じて避けなければなりません」

果たして教団は資金を隠すことなく、誠実に清算手続きに応じるのか――。昨年12月まで5年間にわたり日本本部のトップを務め、教団のことを誰よりもよく知る田中富広元会長を直撃した。

――清算手続きにおける資産隠しへの疑惑が指摘されているが……。

「取材ですか? じゃあお断りします」

――教団の責任についてどう思うか。

「取材は受けないよ」

そう言うと足早に歩き去っていった。

前例なき民事による解散。清算劇の幕引きは、まだまだ不透明だ。

『FRIDAY』2026年4月10日号より

取材・文:甚野 博則