「好調だからこそ不安」な貴方への処方箋 森保ジャパンを「信じてもいい3つの根拠」を教えます

南野や久保といった主力を欠くなかでもイングランドに勝利。総合力は間違いなく上がっている(C)Getty Images
まさか、イングランドにも勝ってしまうなんて! カタールW杯でドイツ、スペインを倒し、翌2023年はドイツに2度目の勝利を飾り、昨年はブラジルに勝利。そして今回……サッカーの母国で、母国を。
その株は上がるばかりの日本代表だが、一方で、不安を拭い去れない人も少なくなさそうだ。
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W杯直前にこれだけ好調だと落とし穴があるのでは……。
自信を持ちすぎて本番で油断してしまうのでは……。
良好な結果が修正点や課題感を薄めてしまうのでは……。
いよいよ対策される側になってしまうのでは……。
サッカーファン歴がそれなりに長い人ほど、心配の種は尽きない。2006年、2014年の経験がトラウマなのだろう。国中から期待された日本代表がお祭り騒ぎの中、W杯へ挑み、良いところ無く惨敗した記憶が拘泥し、不安の沼へ引きずり込まれる。わからなくはない。
だが、敢えて言おう。無問題であると。たった2回の出来事など統計サンプルとして弱すぎる上に、今回は前提から違う。
まず、「W杯直前にこれだけ好調」はダウト。第二次森保ジャパンは「ずっと好調」だから。
カタールW杯後の戦績を振り返ると、ドイツに2度目の勝利を収めた2023年は、8勝1分け1敗だった。偽サイドバックのようなものをやり始めたコロンビア戦のみ、1敗を喫した。
2024年はアジアの戦いのみで、13勝1分け2敗。アジアカップのイラク戦とイラン戦のみ、敗れた。
2025年は8勝3分け2敗。消化試合のオーストラリア戦と、遠征したアメリカ戦のみ敗れた。3分けは消化試合のサウジアラビア戦と、メキシコ戦、パラグアイ戦だ。
過去のいずれの日本代表よりも圧倒的に成績が良く、安定もしている。その要因は失点が少ないことだ。3失点した試合は一つもなく、2失点さえ39試合中6試合のみ(その6試合は3勝1分け2敗)。2006年や2014年の日本代表は、3点以上の大量失点が割合に多く、元より浮き沈みが激しいチームだった。その点で言うと、現チームの守備が保証する安定感は大きい。もっと信じていい。守備力を。

伊藤(左)と中村(右)は左サイドで連動し、強固な守備網を作り上げたC)Getty Images
次に「自信を持ちすぎて本番で油断してしまうのでは……」「良好な結果が修正点や課題感を薄めてしまうのでは……」についてだが、今回のイングランド戦で確信した。それは全く心配する必要がない。
今回、トゥヘル監督が指揮するイングランドは、ペナルティーエリア両端のポケットと呼ばれるスペースをねらい、左右CBの伊藤洋輝と渡辺剛をあの手この手で引っ張り出そうと試みてきた。フォーデンが中盤へ下りたり、左右サイドハーフのゴードンとロジャーズが中へ入ったり、あるいは彼らが大外に開いて、縦ズレしてプレスに行く中村敬斗や堂安律の背後に立って伊藤や渡辺を外へ誘ったり。
昨年のブラジル戦とパラグアイ戦では、左CB鈴木淳之介と左ウイングハーフの中村が前方に釣り出されて背後のスペースを空けがちで、カバーも利かず、実際に失点の要因になっていた。トゥヘルは少なくともメキシコ戦、パラグアイ戦、ブラジル戦を分析したそうなので、日本の隙を突こうとしたのではないか。
ところが、これはほとんど成功しなかった。なぜか? 日本の守備が修正されていたからだ。
鈴木淳に代わって出場した伊藤は、フラフラと動くロジャーズを見張りながらも、不用意に釣り出されることがなかった。前半28分にはロジャーズが大外へ開いて誘い、連動してアンダーソンが後方からポケットへ飛び出してきたが、動きを察知した伊藤はすぐに中へ絞り直す。ロジャーズの誘いに全く乗らず、ポケットねらいのアンダーソンをお出迎えした。伊藤は終始、危険なスペースに蓋をしていた。平然と、淡々と。
また、中村の守備も出色だった。スルーパスの遮断、中へ絞るカバーリングなど、守備のパフォーマンスが非常に良かった。先制点のアシストなど攻撃で良いプレーをするのは期待通りだったが、守備でこれだけのプレーを見せたのは驚きだ。「中村の守備が出色」なんて、初めて書いたような気がする。
これらの結果、日本がペナルティーエリアの幅で背後を取られたシーンはほぼなく、イングランドのチャンスになったのは、遠めからのミドルシュートと、最後の空中戦くらいだった。
日本の守備はきっちり修正されていた。しかも昨秋、ブラジルに3−2で劇的な逆転を果たし、「歴史的勝利だ!」と世間が沸き立つ中で、勝ちゲームから出た課題の修正を粛々と進めたわけだ。つまり、「自信を持ちすぎて油断」とか「課題や修正点を薄める」とか、全く当てはまらない。このチームは誰よりも自分たちに厳しい。心配は要らない。

三笘ら個人能力の高い選手は中盤だけでなく、後ろにも揃ってきた(C)Getty Images
一方、「いよいよ対策される側になってしまうのでは……」
これは少し気になるところではあるが、今にして持ち上がった課題ではない。前回大会ではコスタリカに対策を打たれて敗れたし、アジアカップでもイラクやイランに対策されて敗れた。今更ではなく、とうの昔に、日本はその位置にいる。
イングランド戦を見たW杯の対戦相手は、どんな対策を立てるだろうか。日本は今回、自陣攻守で大きな成果を得た。強豪に押し込まれた中でも、守備が破綻せず、ビルドアップで危険なミスを犯さず、ロングカウンターで仕留める。これができるメンバーは攻守で限られるとはいえ、自陣攻守の目処が立ったのは大きい。
ならばと対戦相手はあえて日本のハイプレスを引き込み、ロングボールからひっくり返したり、のらりくらりとプレス回避して疲弊させたり、守備は自陣に引いて日本にボールを持たせるなど、(日本から見れば)敵陣攻守の展開を目論むかもしれない。というか、3年半前のコスタリカがそのやり方だった。
あるいは昨年対戦したパラグアイは前線4枚によるカウンターで日本の3バックを配置的に困らせてきたし、イラクやイランのように空中戦を多用するチームもあり得る。日本はこの3年半、様々な相手と対戦してきた。その経験を生かし、対応したいところだ。
ポジティブな空気で挑むW杯。2006年、2014年、そして2026年。三度目の正直だ。
[文:清水英斗]
