記事のポイント
一部クリエイターが将来収益をトークン化し、新市場「クリエイター・キャピタル・マーケット」を模索している。
暗号資産やミームコインを活用し、ファンの注目を投資対象に変える動きが広がりつつある。
急騰と崩壊の事例も生まれ、投機性と詐欺リスクを抱えた実験段階にとどまっている。


大半のクリエイターは依然として、ブランド案件やプラットフォームからの分配金に依存している。だが少数ながら、将来の収益の一部を売却することで資本調達を試みる人たちが徐々に増えつつある。

この動きはまだ初期段階であり、従来型の金融機関、暗号資産の世界、投資会社などに分散化が進んでいるが、「クリエイター・キャピタル・マーケット(Creator Capital Market、以下CCM)」と呼ばれる市場も生まれている。

これは、クリエイターが暗号資産トークンやミームコインを通じてファンと交流し、マネタイズする手法である。価格はクリエイターが集める注目度に応じて変動する。

ところが、これは単なるミームコインの話ではない。これらのCCMをめぐる話題は、クリエイターエコノミーが複数の新たな収益源を試していることを示している。それらはすべて、新興資本のシェア獲得を目的としている。

CCMとは何か、どこから生まれたのか



Webインフラプラットフォームのパンプ・ファン(Pump.fun)は2025年後半、「プロジェクト・アセンド(Project Ascend)」を立ち上げ、ミームコインを開発・取引する人々により多くのコントロール権とキャッシュバックを提供する際に、「CCM」と呼ばれる用語を生み出した。ただし、実際にはコインや暗号資産だけを指す言葉ではなく、より包括的な概念である。

「それはクリエイターエコノミーの上に構築された資本市場である」と、クリエイターと投資家を結びつける金融プラットフォーム、ギガスター(GigaStar)の最高事業責任者スコット・キトゥン氏は説明する。

「クリエイターが投資や資金調達に使う手段は、この用語においては本質的ではない」。

キトゥン氏にとって、それはクリエイターが自らの事業の株式をベンチャーキャピタルに売却することを意味するかもしれないし、IPカタログの所有権を投資家に売ることや、将来収益の分配権を投資家に提供することかもしれない。

流行の形でいえば、自身の肖像をトークン化する(ミームコインを発行する)ことを意味する場合もある。

また、クリエイターの成功を予測する賭け予測市場「カルシ(Kalshi)」や、クリエイターのマネタイズを強化するインフラへの投資も含まれる可能性がある。

「それらすべてが、私の考えではCCMに該当する」と同氏は語る。

さらに単純化すると、CCMとは、クリエイターが自身のフォロワーや収益源を、構造化され投資可能な形でマネタイズする仕組みである。

YouTubeの再生回数から得られる広告収入や、ブランド案件のTikTok投稿ではない。クリエイターが集める注目度への投資である。

資金調達、ブランドのトークン化(デジタルアートやIPなどのブランド資産をデジタルトークンへ転換すること)、事業の株式売却など多様な収益化の手法が含まれる。

なぜ今、クリエイターに投資したい需要が高まっているのか



「昨今、数十億ドル規模の課題となっているのは、どうすればクリエイターの台頭に対して経済的に参画できるのかである」と、インベンション・ネットワーク(The Invention Network)のCEOアラン・カーティス氏は語る。

「手段は限られている。ミスター・ビースト・インダストリーズ(Mr.Beast Industries)のように直接投資できる例はあるが、それは極めてまれである。持株会社を持つクリエイターはほとんどいない」。

カーティス氏によれば、ミスター・ビースト、ローガン・ポール、カベンネ・ラメに触発され、この道をめざすクリエイターは増えている。ただ、構造的な問題がある。

世界中にいる一般のファンを、どのように投資してもらうのか。「結局、暗号資産に戻ることになる」と同氏は言う。

暗号資産は、分散型金融(DeFi)を提供する。国境を越え、検閲耐性もある。国際的なファンは、暗号資産の選択肢がなければ米国企業に投資できない。

CCMはまだ実験段階にあり、確立された金融エコシステムには至っていない。

クリエイター投資の進化、VCモデルからトークン化まで



クリエイターへの投資自体は新しい概念ではないが、その方法は年々変化してきた。

長年にわたり、ベンチャーキャピタルはクリエイター個人ではなく、クリエイター向けサービスを提供するスタートアップに投資してきた。

たとえば、ビジネス管理ツールのエージェンティオ(Agentio)や、サブスクリプション特化型プラットフォームのサブスタック(Substack)などである。

ビジネス・インサイダー(Business Insider)では、2024年にクリエイターエコノミー系スタートアップへ推定15億ドル(約2250億円)が投資されたと報じている

その後、バイラル性や人気へ賭ける投資が登場した。2021年には暗号資産ベースのソーシャルネットワーク、ビットクラウト(BitClout)が登場し、ユーザーは著名人やインフルエンサーの人気に投資・投機できた。

ベンチャーキャピタルから資金を調達し、ジェイク・ポールのようなインフルエンサーも参加したが、倫理性や透明性に関して批判を受けた。

ソーシャルメディア株式のダークでありながら民主化的な魅力は明らかであったが、最近ではより構造化され、規制された形でクリエイターに投資する試みが増えている。

たとえばギガスターは、クリエイターがコミュニティラウンドを通じて資金を調達できるようにし、その後、他のユーザーがクリエイターのチャンネルに投資し、ブロックチェーン上でチャンネル収益トークン (CRT) として表される収益分配ユニットを通じて将来のYouTube AdSense収益を共有できるようになる。

Digidayと共有された同社レポートによると、2023年以降、ギガスターはYouTubeクリエイター向けに約700万ドル(約10億5000万円)を調達し、2万人以上の投資家に対し120万ドル超(約1億8000万円)を還元している。

一方、最新の動きは、再び無規制でミーム的な投資へと議論を引き戻す可能性がある。

「新しいモデルはトークン化であり、独自のクリエイターコインを発行できる」とカーティス氏は説明する。

「サードパーティのシステムも存在するが、課題は、クリエイターがそのサードパーティに関与したくない場合があることだ。誰が背後にいるのかわからず、自分のブランドをそこに結びつけたくない。暗号資産には偏見がある。(中略)多くの批評家は賛同していない」。

なぜ暗号資産プラットフォームがこれほど注目されるのか



ソラナ(Solana)ベースのローンチパッドであるパンプ・ファンは、暗号資産をクリエイター資本市場の中心的存在と位置づけたい意図が明確である。

パンプ・ファンはユーザーがクリエイターをテーマにした暗号資産トークン(ミームコイン)を発行し、ブロックチェーン上で取引する。独自のライブ配信プラットフォームも持ち、体を張ったパフォーマンスを通じてコインを盛り上げることもある。

その一例として、ストリーマーの開発者コンビが2025年9月に暗号資産で4万9000ドル(約735万円)を稼いだ事例がある。

ミームコインは、分散型金融に関心を持ち、自身のコインを持ちたいクリエイターにとって魅力的である。同時に、クリエイターの知名度を利用し、そのIPでコインを発行して利益を得ようとする悪質な暗号資産関係者にも魅力的である。

ザック・ジェームズ氏をめぐる「Yo Mama」コインの暴落



先月31日、YouTubeのアニメシリーズ「Yo Mama」(登録者530万人)のクリエイター、ザック・ジェームズ氏は、すでに「Yo Mama」コインが発行されており、取引の申し出を受けているとXへの長文投稿と動画で明らかにした。

同氏はそのコインに参加することを決め、自身が関与した直後に史上最高値を記録したと記した。その後、「数時間で月収を稼げる可能性」に投資したと投稿したあと、急落した。

ミームコインは、端的にいえばギャンブルである。

「それを行うクリエイターは大きなリスクを負っている」とキトゥン氏は言う。「暗号資産側のパートナーを信頼することになる」。

ジェームズ氏の場合、そのパートナーはパンプ・ファンの開発者であり、すでに同氏のブランドを使ってミームコインを活用していた。

プラットフォームからの自立と収益の多角化



これまでもクリエイターへの投資の試みはあったが、トークン化への新たな関心は、クリエイターが収益源を多角化しようとする動きの高まりと並行している。

絶えず変動するプラットフォームのアルゴリズムや、収益配分率の変化から自由を求めるクリエイターは、資本市場に目を向けている。暗号資産に意識的な層にとっては、巨大銀行に縛られず、地理的制約からも解放された経済的自由を提供し得る。

しかしその自由は、悪質な関係者がラグプル(出口詐欺:新しいコインを宣伝して投資家を誘い込み、すぐに放棄するなどの詐欺行為)を行い、クリエイターやファンの資金、さらにはファンとの信頼関係を損なう「無法地帯」を生み出す可能性もある。

CCMはクリエイターエコノミーの未来になり得るのか?



無規制プラットフォーム上でのミームコイン取引に限れば、おそらくノーだ。

カーティス氏は一部の暗号資産企業が他社のビジネスを台無しにしていることに不満を示し、「彼らは匿名で悪質だ。この機会に挑戦する普通のスタートアップ創業者が参入していないことに腹が立つ」と語った。

キトゥン氏によると、資本形成にはそれぞれトレードオフがあると指摘する。

従来の融資は、担保資産を持たず業績も予測困難なクリエイターには適していない。事業の株式売却も、すでに確立したビジネスを持つクリエイターにしか機能しない。

「一番わかりやすい例えは、公開市場、ヘッジファンド、PE、VC、そしてビットコインのような主流暗号資産が存在するウォール街だ」とキトゥン氏は説明する。

「怪しい取引や、2008年のような不良信用パッケージ、ポンジスキームも存在する。これは何も変わらない。クリエイターは新しい資産クラスであり、従来型の投資や資本化の手段が数多くあるが、詐欺やラグプルは存在する」。

[原文:WTF is a creator capital market?]

Alyssa Mercante(翻訳、編集:藏西隆介)