「そのうち彼女がたまにひとりで店にご飯を食べにくるようになって。そのときにタイ語の手帳とか持ってるんですね。それでちょこちょこタイ語を教えてもらったり。それが半年1年と積み重なって、なんかこう学生みたいな恋愛に発展していったなと、今振り返ると思います」

 ちなみに、最初の出会いの時点では奥さんはまだ高校生3年生だ。伊藤さんと奥さんは11歳差。知りあってから今年でもう14周年となる。ただ、結婚までもまた時間がかかっている。伊藤さんが結婚したのは2023年のことだ。

「知り合ってから結婚までに干支がほぼ1周してます」

 正確には結婚までに11年を要しているのだが、伊藤さんにつきあいはじめた年月などを聞くとすらすらと出てくる。タイに長く住んでいると、ずっと暑いだけの毎日なので時間の感覚がなくなっていき、去年と5年まえがわからなくなるのが多くの長期滞在者の傾向のはずなのに。

「彼女がつきあったアニバーサリー、入籍したアニバーサリー、田舎のナコンシータマラート県で披露宴をしたアニバーサリー、バンコクで披露宴したアニバーサリーって。とにかく記念日がいっぱいあるんです」

 なにをするのかといえば、「特につきあったアニバーサリーだけは必ず一緒にご飯行くとか」という。互いの誕生日はもちろんのこと、奥さんの両親の誕生日も「ちゃんとハッピーバースデーのメール送ってね」といわれているそうだ。

◆タイ人&日本人国際結婚カップルの生活費

 奥さんが現在会社員で、伊藤さんは飲食店経営なので夜が仕事。すれ違わないのだろうか。

「たしかに一緒にご飯を食べる機会が少ないので、土日に一緒に食事することは欠かさないようにしています」

 物価高のバンコクだ。日本人とタイ人の子どものいない世帯だと生活費はどれくらいかかるものなのだろうか。

「近くの賃貸マンションで1.5万バーツ(約7.5万円)、光熱費はいっても3000バーツ(約1.5万円)。ボクの趣味で使うお金がちょっと多いです」

 前述のとおり、ギターを弾く伊藤さん。ときどき音楽イベントなどに参加して自作曲を歌ったり、店の4階をスタジオにリフォームして、気心知れた仲間と音楽を楽しむ。伊藤さんは趣味人で、ほかにもいろいろ。

「趣味はだいたい2万バーツ(約10万円)くらいには収まっている」と伊藤さんは計算する。ほかに日用品購入も含めて月々の支出は5万バーツ(約25万円)といったところ。円安の中で計算するとかなりかかっているように見えるが、バーツでいえば多くの夫婦世帯の平均値かなという水準だ。

 一時期は自転車にもはまっていた。今はほとんど乗っていない。その理由については「3年くらいまえに網膜剥離になりまして」という。趣味に没頭するタイプで、1日100キロくらいを週に何回も、1か月1000キロは漕ぐということを日常的にやっていたため、タイのガタガタ道の振動や転倒で頭を打ったりしたこともあり、一般の人と比べて網膜が薄く剥がれやすい状態と病院で診断されてしまったそうだ。

「病院に一度行った半年後、右目の半分ぐらい真っ暗になっちゃって、手術して一応それなりに見えるようになったんですけど……」

 それで今は自転車に乗れないものの、運動はしたいということでランニングをしている。また、新しい趣味として今はカメラに夢中になっているようだ。

「カメラはお金かかりますね。ミラーレス一眼カメラで、遊びに行ったときにちょっとこだわった写真を撮って、タイにいるカメラの先生にも習ったり」

 冒頭の話に戻るが、カメラなどはタイでは日本よりも高額になるとはいえ、タイ・バーツで稼いでいれば所帯があってもこれくらいできる。海外で働く魅力でもある。